女性用マッサージ店セラピスト“悪質ホスト化”の被害者が急増「500万円以上騙し取られました…」施術テクと話術で骨抜きにされ…
集英社オンライン / 2024年4月27日 18時0分
近年、女性客に対して性的なサービスを行なう女性用マッサージ店、通称“女風”(じょふう)。が人気を集めている。4月17日から放送開始された女性用マッサージ店セラピストと女性利用客の心模様を描いたドラマ『買われた男』(BSテレ東ほか)も話題になるなか、ここにきてある問題が生じ始めているという。それが男性セラピストの“ホスト化”に伴う、女性客の度を超えた“推し活”だ。
「絶対に後悔させる事はない」「これからも楽しい思い出いっぱい作ろうね」女性客にお金を無心するセラピストのLINE
セラピストの人気を競う売上ランキングバトルも
日本で最初に女性用マッサージ店が誕生したのは1990年といわれる。その後、インターネットの普及に伴い掲示板などで情報交換がされたり、人気作家の石田衣良による会員制ボーイズクラブを舞台にした小説『娼年』が話題を集めたりするなかで、2000年代から徐々に一般層にも知られるようになっていき、近年、その勢いは増すばかりだという。
女性用マッサージ店情報サイト「Kaikan」の管理人は言う。
「2018年に『娼年』が松坂桃李主演で映画化されて一般女性から注目度が高まり、2022年末には、某人気女性芸能人と思われるLINEのメッセージ画像が流出。そこで女性用マッサージ店を利用しているようなやりとりがあったのも業界には追い風になりました。
現在、女性用マッサージ店は全国で300店舗以上存在し、関東だけでなく近畿地方でも盛んです。最近は女性用マッサージ店の系列店としてバーを営業するセラピストもおり、そこで仲よくなって女性用マッサージ店へとつなげるケースもあります」
利用者が急増している女性用マッサージ店だが、なかには性的サービスを受けることよりも、セラピストを応援することが目的となっている女性客が増えているという。いわゆる“セラピストのホスト化”だ。
セラピストに“ガチ恋”した女性客は、推しを店舗内で行なわれる売上ランキングの上位へ押し上げるために予約を埋めたり、24時間や2泊3日コースなど「貸切」して多額の料金を支払ったりすることもあるそうだ。だが、そうしたなかで、セラピストと利用客の間でトラブルも起こっている。
一般企業で働きながら当初は月3回ほど女性用マッサージ店を利用していたアツコさん(仮名・31)は言う。
「自身がランキングバトルの上位に食い込むため、セラピストが女性客に予約をねだる行為が横行しています。私もセラピストのAにねだられ、彼を応援したい気持ちもあって予約金を前もって入金してしまったのですが…」
セラピストを信用して追加で入金
2023年初頭からこのセラピストAのリピーターになっていたアツコさんは、彼を“応援したい気持ち”から同年5月に3万9000円と96万1000円を2回に分けて、合計100万円手渡しで入金。
さっそく6月に、前入金分で15時から翌12時までの21時間のサービスを受けるものの、Aが酔いつぶれたため深夜1時に解散。11万円分(120分2万2000円×10時間分)を前金から消費したのみで、その後、前入金した分のサービスは受け入れてもらえなくなった。
「それなのにAは『ランキングを上げるためにもっと事前に入金してほしい』と言うのです。私は『12月までに必ず前金分のサービスを提供する』というAの言葉を信じて、10月に追加で35万円を手渡しました」
この時点で未消費の前金は120万円以上にも膨らんだが、前入金分のサービスが提供されないという状況は一向に変わらない。そもそも最初の1、2回以外、居酒屋やカラオケデートばかりで性的サービスをしてくれることもなかった。
そんな扱いに業を煮やしたアツコさんは、Aの所属する店舗の店長にクレームをつけたのだが……。
「店長は『仲直りしてね』と、まともに取り合ってくれず、私からクレームがきたことを知ったAは『もう俺たちは会わないほうがいいと思う』とまで言ってきたんです」
ここでようやく目が覚めたアツコさんは返金を求めるもAからは「お店とやりとりして」と言われ、店長からは「応じられない」と一蹴された。都内の警察署に駆け込むも、「刑事事件としては扱いづらい」ということで、現在弁護士に相談中だが進展はないという。
「必ず時間をつくると約束してくれたから、信頼関係のもと入金したのに、これじゃ債務不履行ですよね……。最初からサービスが受けられないとわかっていたら、私だって入金しなかったかもしれないのに」(アツコさん)
巧みな話術と施術で500万円相当を貢がせ
神奈川県在住のOL・ユキさん(39)は「同い年のセラピストBに洗脳されて、1年間で500万円ほど注ぎ込んでしまいました」と言う。
「Bは緊縛を取り入れた催眠と言葉責めを売りにしていました。私もBの施術にすっかりハマり、月1回のペースで予約を入れていました。しかし、しばらくすると『俺と会わないと感度が悪くなる』とか『老化が進む』などと脅されて、言われるがまま予約するペースを週1回に増やしました」
その後もBの要求はどんどんとエスカレート。3時間3万円という基本料金に加え、「絶頂した罰として+1万円」「首絞めプレイで失神した罰として+1万円」という謎オプションがつきはじめ、ときには夜中突然電話をかけてきて「1時間の通話代として5万円」などと言われることもあった。
母親の急死もあり精神的に不安定になっていたユキさんは、Bを心のより所にしていたこともあり、これらの料金をすべて支払ってしまった上に「YouTubeチャンネルをつくりたいからパソコンを買ってほしい」と頼まれれば、70万円相当のフルオプションのMacBook Proを買い与えることさえあったという。
「今思い返せば、なぜ払ってしまったんだと思いますが、当時はときに優しい言葉をかけてくるBの巧みな話術にすっかり騙されていたんです」(ユキさん)
ユキさんはOLの収入以外に、不動産収入として毎月60万円ほど副収入があった。このことをBに話してしまったためにターゲットにされたようだ。
その後、ユキさんが実家の都合で遠方へ引っ越すことを告げると、金ヅルを失うことを恐れたのか、Bは「お前の生年月日で占った。そこへ引っ越すと俺たちの関係はダメになる」と言いだす始末で、引っ越しを許さない。だが、そもそもBに教えていた生年月日はデタラメなものだった。
「それですっかり冷めました。一方的に関係を切ったら仕返しが怖いので、手切れ金として10万円をBの口座に振り込み、その後は、LINEもSNSもすべてブロック。着拒もして連絡は一切取っていません」(ユキさん)
本番行為を許して身も心もセラピストの思うがまま…
介護士のミナミさん(29)は、その男性経験の少なさをセラピストCに利用されてしまった。
「Cは同い年でした。2、3回目の施術の際に『挿れていい?』と聞かれて、つい応じてしまったんです」
もちろん、女性用マッサージ店での本番行為は法律的にアウトだが、体を許したことで完全にセラピストに心を奪われてしまった。
「それから『ずっと一緒にいたい』『一生離さない』『俺がセラピストを卒業したら結婚しよう』などと言われ、男性から優しくされたことがほとんどなかった私は舞い上がってしまって。『ゼクシィ』の付録についていた婚姻届にふたりで署名をしたりもしました。
私はすっかり結婚できる気だったので、Cから『車検でお金がかかる』『ドアが壊れたから鍵代がほしい』など何かと理由をつけてせがまれれば、疑いなくお金を渡していました。出会って1年で130万円以上はCに使っていたと思います」
お店を介さず直接お金を渡すことを「裏引き」といい、このように結婚をほのめかす営業は「ゼク営(ゼクシィ営業)」と呼ばれる。いずれもホスト界でも横行しているものだ。
その後、ミナミさんも搾取されていることに気づき、「縁切り神社」として知られる京都の安井金比羅宮へ行き、Cとの関係を断ちきれるように祈願した。
このような悪質セラピストが行なう営業について、男女関係や婚外恋愛などを中心に取材するライターの亀山早苗氏は言う。
「男性優位で、女性がそれに我慢して従い大金を貢ぐ図式はホストと基本的に変わらないと思います。もちろん、女性のために一生懸命サービスするセラピストはいるでしょうし、本来は女性を癒してくれるのが女性用マッサージ店ですが、狂信的にハマると取り返しのつかないことになりかねないでしょう」
ホストよりもさらに直接的に性に関わるサービスだけに、それを武器にお金を搾り取る悪質セラピストもまた今後、大きな社会問題に発展する可能性もありそうだ。
※「集英社オンライン」では、女性用マッサージ店のトラブルについて、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。
メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com
X(Twitter)
@shuon_news
取材・文/河合桃子
集英社オンライン編集部ニュース班
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