「夜職の女性だから自分でもいけるかもしれない」新宿タワマン刺殺事件はなぜ起こったのか… 50代男性が20代女性と“結婚できる”と考える理由
集英社オンライン / 2024年5月16日 11時0分
東京・新宿区の自宅タワーマンションで25歳の元ガールズバー経営者のA子さんが、51歳の男性・和久井学容疑者に待ち伏せされ、殺害された事件。この件をめぐって、ネット上ではさまざまな議論が巻き起こっている。
「おじさんにとっては“おかしい”から、いいんです」
今回の事件では和久井容疑者は大切な車やバイクを売り払い、湯島のキャバクラを経営していたA子さんに1000万円以上を貢いだことを主張している。和久井容疑者の父親は「A子さんから結婚をほのめかされていた」と取材でこたえており、和久井容疑者は「お金を取り返すために自宅に行った」「声をかけたら逃げたので追いかけて襲った」と供述している。
ただ、警察は和久井容疑者とA子さんが交際していた形跡はないと判断しており、和久井容疑者の一方的な好意だった可能性が高い。
そんな中、ネット上では、そもそも、50代の和久井容疑者が20代のA子さんと本気で結婚できると思っていたことがおかしい、といった指摘が目立つ。特に資産家であるなど特殊なステータスにあるわけでもないのに、高級クラブの若い人気キャストと結婚できると思っているなど、勘違いがすぎるのではないかというのだ。
しかし、東京・吉原の高級ソープランドで働くたちばなさん(@banabanasan)は、この一見すると不釣り合いに見える関係こそが、カン違いを原因だとも指摘する。
「今回の事件を受けて、不釣り合いを指摘する声もあれば、『クラブで働くような女には50代のジジイくらいがお似合いだよ』という意見もあります。それはオジサンたち側もそう思っていて、普通なら結婚相手に夜職女なんてありえないけれども、そのマイナス要素があるからこそ、若い女性であっても“自分でも手が届く存在”だと思ってしまう。このようにマイナス要素を自分へのプラス要素に変換してしまうため、オジサンは夜職女を好きになりやすいのです。
また、よくキャバ嬢や港区女子のようなガリガリで美的感覚がおかしい整形女のどこがいいんだという意見がありますが、オジサンにとっては“おかしい”からいいんです。イッちゃってる女だからこそ、オジサンたちに『僕でもイケるかもしれない』と思われることによって、彼女たちはモテています」(たちばなさん)
さらに、今回の事件を「普通の感覚なら~」「恥ずかしいカン違い」などと簡単に切り捨てるべきではないと指摘するのは、弱者男性に関する調査・研究、情報発信などをしているすももさん(@sumomodane)だ。
「頂き女子の事件と同じ社会的背景で、男性が女性にお金を搾取され、そのことが軽視されたとみています」と分析し、和久井容疑者の事情を軽視する意見が出る背景には5つの問題点があるとみている。
和久井容疑者の事情が軽視される5つの背景
「1つ目は、中年男性に対する差別感情。中年男性は、気持ち悪いから被害者として同情できない、といった偏見のようなものがあるから、悪質ホスト問題と同じように救済すべき問題として取り扱われにくい。オジサンが若い女性と関わることは加害的だとみなされ、大金を取られても仕方ないとみなされやすいのです。
2つ目は、弱者男性に対する理解の不足。配偶者と離別しており、中年で非正規雇用であった和久井容疑者は弱者性の高い男性だといえます。そういった男性の孤独感や恋愛市場におけるつながりにくさが理解されていません。このような人が趣味も財産も失い、女性側からの対価がないどころか、ストーカー扱いされることの重大さへの理解がないのです」(すももさん)
3つ目は「年の差恋愛に対する嫌悪感」、4つ目は「男性が女性に金銭を支払うのが当たり前の文化」だという。中年男性が若い女性を恋愛対象にすることに対して嫌悪感がある人が多いこと、女性が男性のお金を搾取することがあってもその加害性の認識が薄いことなども、今回の事件で容疑者が軽んじられる理由だという。
「5つ目は、恋愛市場での女性の強者性からの価値の低い男性への軽侮、です。恋愛市場での女性の強者性が高まったことにより、若い女性は男性に対する不誠実な行動を増加させています。具体的には、男性を人間として見ずにコスパで見る、メリットを提供してくれないとわかると切る、男性が面倒なことを言いだしたら切る、など、薄情な関わり方をするようになることです。
新宿タワマン刺殺事件でも、男性が女性に大金を渡したすぐ後に『冷たくなった』『別れ話になった』とされている。事件に対する意見でも価値の低い中年男性が価値の高い若い女性に関われるのは、お金があるから(大金の贈与は相応の対価)だとして、この手の事件の搾取性を軽視するものが散見されています」(すももさん)
恋愛市場における男女間の不公平さ
今回の事件報道は、恋愛市場における男女間の不公平さと、男性の弱者性を象徴していると、一部の男性たちの共感も集めている。
「世間の反応では、若い女性に好意を寄せる中年男性を蔑視し、年の差恋愛に対する嫌悪感を表明するだけの意見が多く、独り身の中年男性の孤独感や弱者性を理解しようとする意見は少ないです。日本では男性が女性に金銭を支払うのが当然だとされる文化がまだまだあることも背景にあるのかもしれません。
こうした差別的な見方をなくすことや恋愛における男女平等を意識することで、悪質ホスト問題のような“恋愛感情を利用した金銭搾取”の問題の改善や、男女関係の健全化につながると私は考えています」(すももさん)
取材・文/集英社オンライン編集部
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