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ヒトの「不死」細胞はすでに存在している驚愕事実 ただし、皆が思い描く不老不死の実現は難しい

東洋経済オンライン / 2024年1月21日 15時0分

そもそも、なぜ老化と死があるのでしょうか。その大きな理由の一つは老化と死があることが生物種としての利点となることです。ここで「始原生殖細胞」という特別な細胞を意識することが重要になります。

始原生殖細胞とは、精子や卵になるために特別枠のような形で体の中にキープされる細胞のことです。精子と卵が受精してできた受精卵が何度かの分裂を繰り返した発生のごく初期の時点で始原生殖細胞はつくられます。

その後の体は「始原生殖細胞」と「始原生殖細胞以外の領域」に識別されると言えるでしょう。
私たちが、若さを保ちたい、死にたくない、と考えている精神世界は、物理的には「始原生殖細胞以外の領域」にあたります。

特定の生物種が存続していくためには、始原生殖細胞を介した次世代への遺伝子の受け渡しが必要であり、受け渡しを完了した「始原生殖細胞以外の領域」は、始原生殖細胞の観点からはいつしか邪魔な存在になります。

進化の歴史の中では、特定の生物種において、寿命が延びる傾向のある変異が生じたこともきっとあることでしょう。

しかし、始原生殖細胞にとって利点のない「始原生殖細胞以外の領域」の寿命延長は、その生物種の生存競争においてマイナスに働き、絶滅につながってきたと思われます。

今のそれぞれの生物種の持つ平均的な寿命は、そうした進化の歴史の中で最もバランスのよい形として実現されてきたものと言えるでしょう。生物である限り、やはり死は受け入れるしかないものだと思います。

「食事」「睡眠」「ストレス」の管理が重要

近年、レスベラトロール、コエンザイムQ10、オメガ3脂肪酸、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)、さらにアストラガルス(オウギ)という植物に含まれる成分などに、老化を遅らせ、健康寿命を延ばす効果があるとして、サプリメントという形で売り出されています。

確かに、それらはこれまでに実験的に報告された寿命などに関わる分子機構に影響を与える要素はあると思います。

ただし、先に述べましたように、老化は様々な要素が複合的に作用しながら進むものです。

特定の分子レベルのシナリオを強制的に変更したからといって、生物個体全体の老化をストップ/スローダウンさせることまでが実現するとは思えません。

また、特定の化学物質を過剰に摂取した場合の安全性についても、不安視される要素はあります。

やはり、適度なカロリー量の栄養バランスのとれた食事、良質かつ十分な睡眠、そしてストレスを少なくすることなどが、普段の生活の中で、生物個体の本体のメンテナンスのために最も重視すべき選択肢ではないでしょうか。

黒田 裕樹:慶應義塾大学 環境情報学部 教授

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