「給料よし、残業なし」の会社を社員が辞めるワケ 心理的安全性よりも重要な「キャリアの安全性」
東洋経済オンライン / 2024年2月29日 6時55分
ギャップがある若手社員とキャリアについての面談を行う場合、ポイントは「上司のナラティブを一方的に押し付けない」ことと、「部下のナラティブを立体的に把握する」ことです。
ナラティブとは、元々は、文芸理論で用いられる専門用語で、語り手の視点で自由に紡がれる物語を指します。つまり、部下が描く「人生のありたい姿」「仕事における自己認識」「会社生活の紆余曲折」「理想的なキャリアストーリー」などのことです。
上司としては、部下に対して良かれと思って「今の仕事で成果を出す方法」「管理職へのキャリアパス」「高く評価されて昇給昇格する働き方」「当社で働くメリット」などを熱心に伝えたくなります。
どれも上司からすれば部下に必要な情報ですが、部下からすれば「自分が必要としているタイミングと内容」に限り必要な情報です。「馬を水辺に連れていくことはできても、水を飲ませることはできない」という諺がありますが、喉が渇いていない相手に水を大量に持参しても価値がありません。
最初に必要なことは、若手社員のナラティブを過去・現在・未来で立体的に把握することです。
過去とは「なぜ、この会社を選んだのか」「就職活動では、何を大事にしてきたのか」という入社動機や価値観です。
話を聞く際のポイントは、「ポジティブではないことも話しやすい雰囲気づくり」です。仕事や職場の人間関係への不満は、上司にとっては自分がダメ出しされているような気持ちになるので「そんなことはないよ」「実はこういう良い点があるよ」と部下の発言を否定したくなりますが、そうすると部下は本音のナラティブは封印してしまいます。
まずは、「この若手社員は、こういう視点で仕事を捉えているのか」「上司からは気づかなかったが、職場にこういう不満があるのか」「会議ではわからなかったが、あの分野に興味があるのか」など、素直な気持ちで傾聴しましょう。
そのうえで未来の展望を確認します。「将来、どういう状態になれるとうれしいのか」「想定しているキャリアプラン」「社内外で、目指したいロールモデル」など将来的な観点で質問してみましょう。
若手社員の根源的な欲求にアプローチする
ここで引き出したいのは、若手社員の過去・現在・未来にわたるナラティブです。
どういう人生にしたいのか、社会人としてありたい姿はどんなものなのか。ここがわからなければ離職を希望する部下を引き留める以前に「なぜ離職するのか」さえ理解できません。
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