広がる波紋、仏「ウクライナ派兵を排除せず」の思惑 ロシアによる侵攻から2年、マクロン大統領が言及
東洋経済オンライン / 2024年3月7日 9時30分
フランス国防誌編集長のジェローム・ペリストランディ将軍は、派兵された場合の軍の役割について「最初に問題になるのはウクライナ軍の抵抗能力、弾薬、防衛システムを強化することだ。そしておそらくその後は、他の種類の行動が行われるだろう」と述べ、「大統領が話しているのは、ロシア軍強化を阻止するための諜報活動やデジタル戦のことかもしれない」と指摘している。つまり、ロシアと直接戦争しないという原則を守りながらも、戦場に人を送り込む可能性について言及したとの見方だ。
フランス外務省は「欧州は脅威にさらされている。ロシアの極めて攻撃的な不安定化政策に直面して、ある種の宣言をし、ロシアに明確なメッセージを送るのがわれわれの責務だ」とマクロン氏の発言を擁護した。
マクロン氏は、長年、プーチン氏との特別なチャンネル構築を模索してきた。フランスのビアリッツで開催された2019年8月の主要7カ国首脳会議(G7)直前、マクロン氏はプーチン氏を大統領保養地のブレガンソンに招き、会談して各国首脳を驚かせた。
2年前のロシアのウクライナ侵攻直前、モスクワを訪問したマクロン氏は、プーチン氏と5時間に及ぶ仏露首相会談を行ったが、侵攻阻止にはつながらなかった。その後は一貫して仲介役を買って出て、2022年6月には「戦闘がやむ日にはわれわれが外交ルートを通じて活路を築くことができるよう、ロシアに屈辱を与えてはならない」と呼びかけ、ウクライナを怒らせたこともある。
踏み込んだ発言の意図
マクロン氏が踏み込んだ発言をしたのは、戦争を終結できない場合、ロシアの帝国主義的ビジョンからすれば、数年後にはフランスをも攻撃するという脅威を感じているからだと専門家らは分析している。これは平和主義者のバイデン氏や左派のショルツ氏とは一線を画す認識だ。
国際関係戦略研究所(IRIS)のジャンピエール・モルニー副所長は、マクロン氏の発言について、ロシアと対峙する核保有国フランスの抑止戦略の一環だと指摘する。「『次のステップとしてフランス軍が現地に赴けば、“ロシア軍には勝ち目がない” 』というメッセージをマクロン氏は送ろうとした」(モルニー氏)。今までより踏み込んだ発言をすることによってプーチン氏を交渉のテーブルに着かせる狙いがあるという。
マクロン氏の政治的求心力は落ちている。昨年、支給開始年齢を段階的に引き上げる年金改革法や移民の受け入れを厳格化する移民法など、賛否が激しく対立する法律を強引に成立させたボルヌ前首相の退陣の背後にマクロン氏の圧力があったことは誰もが知っている。そして今年は農業政策で農家から激しい反発にあった。
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