「もしトラ」シナリオがはらむ安全保障の死角 知日・知米派韓国人からみえる日米韓協力関係の隙間
東洋経済オンライン / 2024年3月23日 8時0分
これも、それ自体も悪いわけではありませんが、あまりにもトップダウン的で、かつ即興的な交渉術と組み合わさるととても危ういものになりそうです。
2019年の米朝首脳会談からすでに4年が経っています。この間、北朝鮮は核やミサイル能力を相当高めました。北朝鮮が持つ交渉カードはさらに増えたとみていいでしょう。
韓国の洪容杓・元統一相は、北朝鮮はもはや核を自国防衛のために保有するだけではなく、核保有国、すなわち強国になり国際社会における地位向上によって政治的・経済的利益を取得しようとしている、と主張するまでになりました。
これに対し、アメリカのCIA長官や国防長官を務めたロバート・ゲーツ氏は、1994~2000年の期間、アメリカは北朝鮮の核問題を解決するチャンスがあったが、その後は失敗の連続だったのでこんな同じことを繰り返すのはばかげている、と主張しています。
さらに、違うアプローチとして「北朝鮮が自衛のために必要なある程度の核保有を認め、それ以上の核能力は検証可能な廃棄、そして開発中止を求めるべきだ」と、ゲーツ氏は促しています。
しかし、東北アジアにいるわれわれにとっては、北の核保有を一部でも認めると、隣国でも核保有論が強まり、核開発ドミノのリスクが高まるという事態にまで発展する危険性が高まります。
「もしトラ」が現実のものとなり、金正恩氏との交渉が再開したとすれば、最悪のシナリオは北朝鮮を核保有国として認定すること、そして朝鮮戦争の終戦宣言を行って在韓米軍の削減・撤退へと続くこと、アメリカにまで攻撃可能な北朝鮮のICBM(大陸間弾道ミサイル)だけが禁止されるといったカードが切られ、安易な決着が図られることが懸念されます。
脆い日米韓の三角関係
一方、日米韓の3カ国はこの2年間ほどで関係が強化されました。バイデン氏、岸田文雄氏、尹錫悦氏らが握手している写真が世界のメディアを飾ることもありました。しかし、3人とも自国での支持率はけっして高くありません。
さらに、2024年4月には韓国で総選挙が行われます。日本でも9月に自民党総裁選、11月にはアメリカ大統領選挙が控えています。
韓国では現在、この総選挙、ひいては3年後の大統領選をにらみ、政界再編が進行中です。日本の岸田政権も、「内閣支持率と与党の支持率の和が50%を切ると、首相は退陣する」という自民党の故・青木幹雄議員による「青木の法則」に近づいています。
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