1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

「医師の定員増」に韓国の医師が強く反発するワケ 「医師不足解消」か「選挙目当て」か、政府に大反発

東洋経済オンライン / 2024年3月29日 8時30分

① でいうと、実は首都ソウルの人口1000人あたりの医師は3.9人でOECD平均を上回っている。しかし、これが例えば忠清北道になると1000人あたりの医師は1.9人。地域間で大きな格差が露呈する。

② は、「皮・眼・整」のハングル表記をとって「ピ・アン・ソン/피안성」という呼び方があると今回知ったのだが、要するに、その3つの科の医師になれば高収入が得られるので人気が高いというわけだ。眼科はともかく、皮膚科と整形外科が儲かるのは、外見を大事にする現代の韓国ならではといえる。

こうした現状で手をこまねいていては地方の医療が破綻する公算が大なので、尹政権としては医師の数を増やすことが必要だと主張する。それは、定員拡大の2000人分を地域別に振り分ける計画にも表れている。

ソウルにある医学部は、定員増加なし。ソウルに近い京畿道と仁川市は合計361人。残る1639人(全体の80%強)はそれ以外の地方大学が対象となる。つまり、地方の医学生を増やすことが地方での勤務医増加につながることを期待しているというわけだ。

世論調査を見ると、概ね7割くらいの人が現時点では政府の方針を支持している。医師の不足は数字で示されており、地方在住者はソウルや釜山などとの医療格差を実感することが珍しくないのであろう。

それに対して、医学部の定員拡大に強硬に反対して職場を放棄した医師や教授たちへの共感が広がらないのは、「医師が増える→競争が激しくなる→収入が減る」という展開を避けたいだけだろうと、冷ややかに見られているためだ。

実際、各種の統計で、医師の収入水準が韓国では最も高いという結果が出ている。例えば、OECDの調査で韓国の開業医の収入は労働者の平均の6.8倍で、これは加盟国で最大の格差。病院の勤務医でも平均の4.4倍とのこと。開業医がとりわけ高収入なのは、やはり「ピ・アン・ソン」が多いためであろう。

「問題は医療行政」と医師側は反論

これに対して、医師の側は「そのような利己的な話ではない」と声高に反論する。地方医療機関や緊急性の高い科で医師が不足しているのは、現行の国民健康保険での診療では小児科医などの報酬が少ないという制度面の問題があるため、皮膚科や整形外科などに医師が偏ってしまうのだと主張。見直すべきは医学部の定員ではなく、医療行政だとして、尹政権を糾弾している。

また、急に2000人も医学部生が増えても、教える側の教授らがすぐに増えるわけではないので、指導の質が落ちるとも話す。確かに、定員を拡大した結果として腕の悪い医師が増えてしまうようでは困る。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください