「親ロ心理」はあっても欧州を向くブルガリアの本音 ソ連共産圏の優等生からイノベーションハブに
東洋経済オンライン / 2024年3月30日 9時0分
2023年6月に主要2会派が連立政権として、デンコフ首相、ガブリエル副首相というツートップの内閣が始動した。2人は9カ月経てば交替し、相互のポストを9カ月務めるリシャッフル計画だ。
欧州委員を務め、「EUの星」だったマリア・ガブリエル氏は、第1党(保守)の要請を受けブリュッセルから祖国の内閣中枢に移った。EU時代に、日本の重要性を深く認識したという。
「アメリカと中国の動向や欧州の景気も背景にあるが、私たちは日本が持つ大きな価値に気づいた。ブルガリアは対日関係を戦略的パートナーシップに格上げしたい。首相として訪日したい」と、2024年初に私に熱く語った。
デンコフ首相(次期副首相)は研究者時代に茨城県のつくばで1年過ごし、「娘は日本の学校に通ったんです」。教育相の経験があり、日本の学校教育に関心を寄せる。
2人とも政党の党首ではない。政党はそれぞれの思惑のうえに、連携して多数派を形成し内閣を組んだ。あまり例のない「ツートップ交替による内閣リシャッフル」が実現するか、もう一度総選挙で民意を問うか。予想されたことだが、この1カ月 、改革の方針や閣僚人事について 、内閣を支える政党間の折衝が続いている。
ここでブルガリアと日本との関係を振り返ってみよう。 1970年に開催された大阪万博のブルガリア館が、後の「明治ブルガリアヨーグルト」開発の契機になった。社会主義体制下で長く最高指導者だったジフコフ書記長は日本の発展に目を見張り、「日本に学べ」と各界に指示した。
日本に関する本が広く読まれ、日本語や空手、柔道、生け花を学ぶ人は今でも多い。1990年代に始まった民主化の時代には、政治やビジネス、学術、文化、スポーツ、観光交流がさらに活発になった。ソフィア大学に日本学科が設置され、地方を含めいくつかの大学・中高校でも日本語を教えている。
「日本には憧れと純粋な敬意を持つ」
高名なテレビジャーナリストに「なぜ日本に?」とたずねた。「ブルガリア人は日本に、そうなりたくてなれなかった自分の姿を投影している。東洋と西洋の狭間で揺れ動いた近代史の200年間、ブルガリアはうまくいかず、成功した日本に憧れと純粋な敬意を持つ」という。
こちらが襟を正す答えだったが、一方で彼は「ここ10数年日本の姿が見えない」と心配もする。
かつて5大商社を含む10商社がソフィアに支店を構え、三菱重工業や東芝、大成建設といった日本の大企業も拠点を置いていた。水力・風力発電所や、ODA(政府開発援助)ではソフィア地下鉄建設、環境設備、港湾開発、文化・教育など多数実施している。
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