マイナポイント「使われすぎ」、セブン銀行の悲鳴 制度の落とし穴にはまり数10億円もの損失発生
東洋経済オンライン / 2024年4月2日 7時30分
セブンカードが付与した「ナナコポイント」をめぐる損失は、この失効率をめぐる誤算にあった。
ナナコポイントにも有効期限が存在するため、セブンカードは事業への参加に先立って失効率を算出し、事務局に提出した。
第1弾では、当初の想定と、実際のポイントの使われ方との差異が小さく、損失はほとんど認識されなかった。
問題は、ポイント付与額が3倍に増えた第2弾だ。マイナポイント事業経由で付与したナナコポイントが想定以上に利用されていった結果、有効期限を迎えて失効するポイントが減り、セブンカードの収益を下押しする事態が表面化したのだ。
マイナポイント事業では前述の通り、失効率が想定通りであれば、利用されたポイントには補助金が交付されるため、事業者は損も得もしない。ところが、事務局提出時の想定よりもポイントが多く利用されると、失効に伴う収益が減る一方、補助金は提出時の失効率に基づいてしか交付されない設計になっていた。
セブンカードが算出した失効率は、普段の買い物で貯まったポイントを「散発的」に使う一般の利用者を想定していた。一方、マイナポイント事業で流入した利用者は、数千円から1万円超のポイントを「一気に」消費していった。
すると失効率の想定と実績に大幅な乖離が生じ、セブンカードの持ち出しが増えていった。関係者によれば、セブンカードは追加の補助金交付を事務局にかけあったものの、認められなかったという。
他の事業者でも損失発生か
こうした損失は、ほかの事業者でも発生しているのだろうか。
東洋経済がマイナポイント事業に参加した各社に問い合わせたところ、ある事業者は「足元では想定よりもポイントが利用されている。ただ、有効期限はまだ到来しておらず、最終的な着地を見守りたい」と答えた。ポイントの有効期限がこれから到来する事業者は、同様の損失に見舞われる可能性がある。
一方、「影響はない」と回答した事業者も複数あった。有効期限を設定していないポイントには「失効」という概念が存在せず、損失が発生する余地がなかったようだ。
また、あるクレジットカード会社は「(失効率を事前に算出するのではなく)ポイントの有効期限が到来した後、利用実績を踏まえた失効率を算出し、補助金を申請する予定」と話した。
実は、事業者の公募要項にはポイントの利用状況が「精緻に計測可能な場合」、例外的に補助金額の事後精算を容認する、との記載がある。事後精算であれば、失効率が想定と異なる事態は生じない。
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