業界の異端児2社が「組織の結婚式」を行ったワケ 従業員が握る「株式0.1%」が経営に与える影響
東洋経済オンライン / 2024年4月7日 11時20分
ビジネス書のヒットメーカーであり、出版業界の異端児である英治出版が2月末、ゲームアプリなどを手掛ける”面白法人”カヤックの子会社になった。
そのスキームはユニークだ(下図)。カヤックは英治出版の普通株式5800株(発行済株式の約99.9%)を取得する。残り1株は社名とパーパスの変更にのみ拒否権を持つ種類株式、いわゆる“黄金株”に転換し、英治出版の従業員が構成・運営する一般社団法人「英治出版をつなぐ会」が保有する。
これにより英治出版は、社名やパーパスの変更に対して拒否権を持つことができる。
今回の子会社化にあたって両社の間で行われたのが「組織の結婚式」だ。異業種かつ個性的な2社が、どのように未来を共にすることになったのか? キーパーソンであるカヤックの柳澤大輔CEOと英治出版の原田英治代表、そして仲を取り持ったZebras and Company(ゼブラアンドカンパニー)共同創業者の田淵良敬代表が、今日までの道のりと思いを語った。
5年ほど前から準備を始めた
英治出版といえば「ティール組織」や「イシューからはじめよ」など数々のビジネス書を世に送り出してきた。また「絶版にしない」「企画会議は全員参加」といった独自の経営方針を持ち、多くのコアなファンがいる出版社だ。
筆者も英治出版ファンであり、子会社化の一報を聞いたとき「あの英治さんも出版不況には勝てなかったか・・・・・・」と早とちりして悲しんだ(英治出版の業績は好調)。しかしコンサル業界から転身して創業した原田英治代表に話を聞くと、今回の事業承継は5年ほど前から準備していたという。
原田代表は「島根県海士町に親子で島留学をしていた時、人口減少やテクノロジーの変化が激しい時代に、経営者の自分が毎年歳を取るという事実に気づいた。自分が会社を抜けた後、どういう体制で経営するのがいいのか、事業承継のために何か早くしないと間に合わないのではないかと考えた」と語る。
そして「カヤックの柳澤さんには海士町に来てもらったり、応援する会社が同じだったりして1年に1回は顔を合わせる関係があったので、事業承継について相談するようになった」(原田代表)。
資本構成をどうするか
英治出版の株主は、原田代表の知人など個人が多い。事業承継にあたっては、次期代表となる高野達成編集長が経営しやすいように資本構成を見直す必要があった。
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