TBSアナ「大谷翔平の打率読めず」一体何が問題か 知性が問われる職業は、カバーすべき分野も多い
東洋経済オンライン / 2024年4月11日 20時0分
昨今、テレビでは大谷選手の話題でもちきりだ。結婚や、愛犬のデコピン、元通訳・水原一平さんの騒動など、話題に事欠かない。まさに「一挙手一投足」まで報じられているわけだが、とはいえ一番取り上げられるのは、試合での活躍だろう。
アナウンサーは、情報を伝える職業だ。とくに「大谷選手の打率」は、もはやスポーツニュースを超えた話題となっている。そういう意味では、いくらバラエティ番組を担当することが多かったとしても、「時事」としての知識を持っていてほしいと視聴者が思うのは、致し方ないことではある。
興味の細分化に応えるために
大谷選手の活躍が目立つ反面、野球そのものが報じられる場面は少なくなってきた。地上波テレビからプロ野球中継が姿を消しつつあるなか、ファン以外の「野球との接点」は、著しい勢いで減っている。
それに加えて、人々の趣味趣向や興味関心は、多様化と細分化を繰り返している。30年ほど前であれば、人気野球選手に向けられていた憧れの目は、YouTuberといったネットの有名人へと移り変わった。すでに、お茶の間で1台のテレビを囲みながら食事する時代ではない。
興味の細分化は、すなわち情報を伝える側が、より守備範囲を広くしなければならないことを意味する。となれば、アナウンサーが「事前に学んでおくべき情報」もまた、野球全盛期とは大きく変わっているはずだ。
そのような前提に立つと、野球に詳しくない筆者としては、「そんなにアナウンサーを責めなくてもいいのでは」と感じてしまう。「割・分・厘」といった歩合は基本的な知識であることは確かだが、「猫ミームとは」といった最新情報を追いかけているうちに、記憶の片隅へと追いやられてしまっていてもおかしくない。
もちろん、ミスそのものを擁護するわけではないが、その責任をひとりに担わせるのは、筆者としてはあまりに酷だと感じるのだ。テレビ番組は、だれか1人で作られるものではない。アナウンサーやコメンテーター、ディレクターに放送作家……。ありとあらゆる人材が適材適所について、それぞれの得意分野をカバーして、ひとつのコンテンツが完成される。
今回の「打率読めない」が問題だとすれば、見つめ直すべきは、アナウンサーの職能ではなく、番組制作のチームワークではないか。そこにポカンと空いた「知識の穴」を、いかに埋めるか。テレビ番組は、まさに全員野球で成り立っているのだ。
城戸 譲:ネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャー
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