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「金利のある世界」が到来したら起こる生活の変化 日銀正常化によって、日本はどう変わっていくのか

東洋経済オンライン / 2024年4月23日 8時0分

しかも、こうした日銀の「資産」は、安易に市場で売却するわけにはいかない。株式市場などが大混乱に陥るからだ。そもそも、歴史的に見て中央銀行は政府の経済政策に対応して、補完的な立場を維持するのが当たり前だが、アベノミクスによって「黒子」から、一躍「主役」に躍り出てしまった一面がある。植田総裁も、ゆくゆくは金融政策の黒子に撤する中央銀行に戻りたい主旨のコメントをしている。

日銀が、普通の中央銀行に戻るためには、政府が財政健全化に本気で取り組むしかないのだが、政府の2024年度の予算案によれば、国債発行総額は「181兆4956億円」(財務省)の計画となっており、新規国債発行額は「34兆9490億円」となる。

日銀の単独の力だけでは、どうにも処理できない規模の借金に膨れ上がっているわけだが、現在の岸田政権の方針は今後も「財政規律最優先」とはほど遠い、大きな政府まっしぐらに突き進んでいる状況だ。

債務超過では税金が投入されて「公正さ」の維持が困難に?

どう考えても、日銀の先行きには暗雲が垂れ込めている状況だが、内閣府の試算では、今後の長期金利の上昇は、10年後の2033年度には「3.4%」まで上昇し、政府が発行してきた国債の利払い費だけでも「22.6兆円」に達するそうだ。2023年度の利払い費が「7.6兆円」であることを考えると、10年で利息の支払いが3倍に膨れ上がることになる(日経新聞「国債利払い費10年後に3倍の見通し 金利復活、財政縛る」2024年3月20日)。

前述したように、日銀は0.28%で逆ザヤ、2.75%で債務超過になるというのに、政府(内閣府)は国債の長期金利が3.4%になると予想している。言い換えれば、このシミュレーションがどちらも正しいとすれば、日銀は10年以内に債務超過に陥ることを意味する。

中央銀行が、債務超過になるとはどういうことなのか。当事者である日銀自身が2023年12月に「中央銀行の財務と金融政策運営」(日本銀行企画局)というレポートを発表している。その中で、「過去に中央銀行が債務超過となった事例」を紹介するなど、自らの未来に起こるかもしれない事態を紹介している。

ここでは、債務超過の原因を「自国通貨高によって保有する外貨準備の評価損が直接の原因のケース」と「金融危機や政府の財政難などが原因のケース」に分けて分類し、その影響の違いを示している。

もともと中央銀行が債務超過に陥った場合に、最初に心配されるのが「インフレ」だ。自国通貨高によって、保有外貨が目減りして債務超過に陥った場合はインフレの心配はほとんどない、と同レポートでは指摘している。西ドイツやチェコスロバキア、チリ、タイといった国が、かつて自国通貨高による債務超過に陥っているのだが、どの国も平均インフレ率は2.9%~6.1%の範囲内で、激しいインフレには見舞われていない。

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