今から家買う人は知らないとマズい「耐震」の真実 過去の大地震の被害データを分析してわかること
東洋経済オンライン / 2024年4月23日 13時0分
ここで、注意すべきは、「大規模地震でも倒壊は免れるレベル」という言い回しだ。倒壊はしないが、住み続けることを保証していない。実際、被災地では「全壊」や「半壊」は数多く発生する。阪神淡路大震災では約25万戸が全・半壊で住めなくなっている。
こうなると、家を解体し、新たな家を建てる必要がある。コストで言うと、解体費用に150万円ほどかかり、新たな丈夫な家が2000万円以上はする。既存の家の住宅ローンが残った上の追加コストとしては重すぎる。
そこで、新耐震基準を1とした場合の耐震レベルを耐震等級において3段階で分けている。耐震等級2は1.25倍、3は1.5倍となる。国土交通省は熊本地震の際に木造の建築時期別被害状況を調査し、発表している。この結果は今後の家を建てる際の指針になる。
経年劣化によってリスク増大
まず、1981年5月以前、つまり旧耐震時期の住宅は倒壊・崩壊(圧死リスクが高い)が28.2%で、大破は17.5%となり、45.7%が危険な状態となった。新耐震以降に建てられているが、築16年以上の住宅は倒壊・崩壊は8.7%、大破は9.7%となり、築15年以下は倒壊・崩壊は2.2%、大破は3.8%となり、割合は減る。
これは経年劣化によるリスクの増大を示唆している。木造なので、シロアリ被害や腐食によって新築時よりも劣化してしまったのだ。また、新耐震でも圧死リスクはゼロにはならないだけでなく、経年劣化に対する対策が必要ということだ。シロアリ対策を防蟻(ぼうぎ)、木材の腐食防止を防腐と言うが、これをしていなければ不安がつのるだけで、意味がないのだ。
しかし、耐震等級3(建築基準法の1.5倍レベル)では、サンプル16棟しかないが、軽微・小破は2棟にとどまり、無被害14棟だった。圧死リスクがゼロになり、軽微・小破は住み続けられることを意味する。
つまり、木造で家を建てるときは耐震等級3以上のレベルで建てることが日本のような地震大国では必須要件であることがわかる。高齢者の持ち家率が80%を超える日本で、これを全国民が理解して建てるのは難しいかもしれない。それなら、建築基準法の耐震レベルを1.5倍にすべきと私は思う。建築コストがやや高くなることは事実だが、その後の復興予算や追加徴税がいまだにあることから、損得勘定でも十分な理があると考える。
家には最低限求められるものが2つあると私は考えている。それは命も守り、健康を増進することだ。
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