お金ではなく「サービスを配る」がなぜいいのか お金持ちにもサービス給付で格差がうまる理由
東洋経済オンライン / 2024年5月1日 18時0分
「親ガチャに外れたから大学進学をあきらめる」「貧しくて病院に行けない」「家族の介護のために仕事を辞める」……。現代社会にはお金や運、自己責任で人生が決まる要素が色濃くあります。たとえ今は幸せだとしても、誰もが一時の出来事や不運で、奈落の底に突き落とされるリスクはあります。
そのような社会で安心して暮らし、明るい未来を描くことができるでしょうか。だからと言って、困っている人にお金を配ることは本当の救いになっているのでしょうか。
財政学者・井手英策氏の著書『ベーシックサービス:「貯蓄ゼロでも不安ゼロ」の社会』から一部を抜粋・再編集し、教育や医療、介護、障害者福祉を無料で誰もが受けられるようにする「ベーシックサービス」について考えます。
満たしあいの世界を作る
実は、みんなに配るというとき、それは「お金」で配るのか、「サービス」で配るのかで大きな違いが生まれます。
【画像】貧しい人も、お金持ちも、「みなが負担者になり、みなが受益者になる」ことでも所得格差は小さくできる?
お金とサービスには決定的な差があります。それは、お金はサービスと違って、すべての人たちが欲しがってしまう、ということです。
みんなが欲しいのに、子どものいる世帯だけに配る。そうすれば、子育ての終わった中高年、年金が足りずに四苦八苦している高齢者、子どものいないカップル、いろんな層が反発するのは避けられませんよね。
そうなんです。子ども手当に対するバラマキ批判は、それがバラマキかどうかということ以上に、お金の性格上、「もらえる人=受益者」と「もらえない人=負担者」の間に分断が生まれることにこそ、本質的な問題があるのです。
この対立をなくすためには、《だれもが受益者》になるしかありません。やりかたは二つ。一つは全員にお金を配ること。もう一つは、サービスを全員に配ることです。
前者は、いわゆるベーシックインカムですね。この場合、まさしく全員にお金を出すことになりますから、相当な費用がかかります。
一方、後者のベーシックサービスであれば、必要な人しかサービスを使いませんから、コストを大幅に減らすことができます。
幼稚園がタダになったからといって、幼稚園に入りなおす大人はいません。健康な人はわざわざ仕事を休んで病院に行こうとはしません。
この強みをいかして、高齢者には介護、子育て世代には大学といったように、それぞれが必要とするサービスを全体にバランスよく配っていけば、低いコストで全体を受益者にしていくことができます。
サービスとお金の違い
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