「医療費120万円」がん患う母が嘆く"負担の重さ" かかる前に知っておきたい「がんとお金」の話
東洋経済オンライン / 2024年5月4日 9時30分
「がんイコール死ぬ病気」だったのは過去の話。今は有効な治療法が相次いで登場し、多くは「治る病気」「付き合っていく病気」へと変わってきている。
一方で、患者は入院や通院で日常生活が制限されたり、手術による後遺症や抗がん剤の副作用につらい思いをしたりするだけでなく、高額な医療費を支払い続けるという新たな問題に直面している。
がんにかかるとどれくらい費用が必要になるのか。がん治療の現状とかかる費用について取材した(知っておきたい「がん治療とお金」を、3日間にわたってお届けします。今回は1回目)。
命とお金を天秤にかける
「私が医師になった20年ほど前、医療にお金のことを持ち込むのは、命とお金を天秤にかけるようで、いやらしいとされていました。ところが今は、そうではないという認識になっています」
【図で解説】薬代や手術代、入院代だけじゃない!こんなところにもかかる「がんの治療費」
そう話すのは、医師で愛知県がんセンター薬物療法部医長の本多和典さんだ。
がん治療に伴うお金について考える必要が出てきた背景の1つに、この数十年での、がんの検査・治療が進歩し、がんとともに長生きする人が以前よりも増えたことがある。
国立がん研究センターの「がん統計」で治療効果の指標である「5年生存率」(診断から5年後に生存している患者の割合)を見ると、全部位のがんの平均で66.2%(2014~2015年に診断された患者の純生存率=事故や、ほかの病気などによる死亡はないと仮定して推計)だった。
男性の前立腺がんが95.1%、女性の乳がんが91.6%など、90%を超えているものもある。
「効果的だが高価な薬」を使い続ける
京都大学の本庶佑特別教授が2018年にノーベル賞を受賞したことで注目された「がん免疫療法薬(免疫チェックポイント阻害薬)」が広く使われるようになったのに加え、今後も、より効果が高い治療法が開発されると予想される。
患者の3人に2人が5年、そしてさらに長く生きることができる時代も近いのではないだろうか。
がん治療に限らず、新しい治療法は費用が高く、特に薬はその傾向が強い。そんな高価な薬を、場合によっては1年、2年あるいはそれ以上、使い続けることもある。
効く薬が使えるようになったことは患者や家族にとってうれしい話である一方、「ずっと治療費を払い続けなければならない」という現実に直面する。
例えば、がん免疫療法薬の1つ「オプジーボ」は、公定価格がひと月あたり約60万円。継続するなら年間700万円を超える。
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