遅れを取った子どもの「心の成長」をどう育むのか?【「不登校」「ひきこもり」を考える】
日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年5月9日 9時26分
【「不登校」「ひきこもり」を考える】#10
ここまで、不登校やひきこもり、ひいては精神疾患の原因には「感情不全」が潜在し、特に病理が根深いほど、その解決には親の傾聴・共感を通じてお子さんの心を健全化させることが重要であるというお話しをしてきました。
子どもが自らの心を健全に使えるようになるのには、ちょっと親が話を聞いたぐらいで一朝一夕に解決とはいきません。もちろん親の存在は重要ですが、親だけが変わればいいという単純なものでもありません。そこを核としつつも、周囲からの協力も得ながら丁寧に遅れをとった心の成長の階段を昇るプロセスが必要です。
楽しいことや成功体験を通じ、深い喜びや達成感を何度も感じて適正な感度まで高めるだけではなく、痛みを伴う苦い経験も現実逃避だけでなく等身大に感じ、受け止め、逃げずに向き合いながら踏ん張る術を覚え、どう立ち直るかということも学ばなければなりません。そして親はもちろん、子どもと密接な関係を持つ周囲の大人たちは、そのことに気を払い、子どもの心が育まれていくメカニズムも理解する必要があります。
現実には何歳になっても、たとえ体だけは立派に成長しても、心の成長は未成熟なまま停滞していて、それにも関わらずまるで順風満帆に育っているかのように親の目には映っていた取り繕いが、ある段階でつまずき、ひきこもりや不登校に陥り、中には心身の病気すら発症する……そんなケースが少なくないことを理解していただきたいのです。
特に、いわゆる“いい子”を偽装して親を喜ばせ、安心させてくれる、ある意味で親よりも“大人”で器用かつ繊細な子は、痛みを伴う苦い経験を回避するため、心の受け身のとり方を学ばないまま人生の難易度レベルが上がっていくために、順調そうに歩みを進めている最中のどこかのステージで精神的滑落ともいうべき“大怪我”を負うというリスクが高まってしまいます。
「心の受け身のとり方」とも言うべき適切な心の使い方とは、一言で言えば、プラスもマイナスもどちらの感情も真正面からありのままに等身大で感じられる力とも言えます。(つづく)
▽最上悠(もがみ・ゆう)精神科医、医学博士。うつ、不安、依存症などに多くの臨床経験を持つ。英国NHS家族療法の日本初の公認指導者資格取得者で、PTSDから高血圧にまで実証される「感情日記」提唱者として知られる。著書に「8050親の『傾聴』が子供を救う」(マキノ出版)「日記を書くと血圧が下がる 体と心が健康になる『感情日記』のつけ方」(CCCメディアハウス)などがある。
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