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月35万円の年金生活で「夫婦水入らずの老後」を満喫していた矢先、71歳夫が病死…悲しみに追い打ちをかける〈衝撃の遺族年金額〉に遺された妻「この先、私の生活はどうなるの?」【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月9日 11時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

年金は高齢になったときに受け取るもの、というイメージが強いのではないでしょうか。実は、公的年金には「老齢年金」だけではなく、重度の障害を負った時に受け取る「障害年金」や一家の生計を支えていた人が亡くなった時に遺族が受け取る「遺族年金」があります。ただし、複数の年金を受給できる権利があったとしても、全額を受給できるわけではないという点には注意が必要です。今回は、71歳の夫に先立たれ、老齢年金と遺族年金の受給権がある妻Aさん(67歳)を例に、意外と知らない年金受給のルールについて南真理FPが解説します。

「え、年金が半分以下に!?」夫亡き後の年金額を知った妻Aさんの衝撃

妻Aさん(67歳)は、長年連れ添った最愛の夫Bさん(享年71歳)をがんで亡くしました。現役時代は共働きで忙しい毎日だった2人。子どもは既に独立して手を離れていますが、妻Aさんは少し前まで仕事をしていました。

病気が発覚したのは、ようやく妻Aさんが仕事を退職し、夫婦共通の趣味である旅行やゴルフを楽しみ始めた矢先だったこともあり、妻Aさんの喪失感は大きなものでした。

妻Aさんは、夫の葬儀告別式を無事に終え、少しほっとしたものの、まだ気持ちの整理がつかずにいました。そんな状態でも、妻Aさんにはやるべきことがありました。それは、夫の死亡に伴う役所関係や金融機関等の手続きです。

まず、年金事務所に今後の年金受給額と必要書類を確認するために出向きました。そこで妻Aさんは思いがけない年金受給額を担当者から告げられたのです。これまで月35万円ほどあった年金額が、夫亡き後は半分以下になるというのです。

一通り説明を聞いたものの、内容を理解できたとは言えず、言いようのない不安がこみ上げてきました。妻AさんにはFP事務所を開業している姪のMさんがいます。年金事務所で告げられた内容が理解しがたかったため、FPであるMさんにもう一度説明してもらえないかと相談しました。

「それは驚いたよね。実は、年金を受け取るときにはルールがあるんだよ」Mさんはそう言って、年金のルールを話しはじめました。

「亡くなった後も年金は家族がそのまま受け取れる」は誤解

日本の公的年金制度は、国民年金(基礎年金)と厚生年金の2階建てです。そのため老齢基礎年金と老齢厚生年金、障害基礎年金と障害厚生年金、遺族基礎年金と遺族厚生年金の組み合わせは、支給事由が同じであり、1つの年金とみなされ、両方を受給することができます。

一方、支給事由(老齢、障害、遺族)の異なる2つ以上の年金を受給できる要件を満たしたときには、どれか一つを選択する必要があります。これを「1人1年金の原則」と言います。

説明を聞いた妻Aさんは、「お父さん(夫Bさん)がもらっていた年金はどうなるの? お父さんと私の年金を両方もらえると思っていたから、十分生活していけると思っていたのに……」と、悲壮な声でMさんに訴えました。

「残念だけど、おばさんの場合、受け取れるのはおじさんの年金の一部だけだよ」と、Mさんは言います。

65歳以上には特別ルール!2つ以上の年金を受け取ることができるが…

前述のとおり「1人1年金」が原則ですが、特例的に65歳以降の人は、支給事由の異なる2つ以上の年金を受け取ることができる場合があります。

現役時代の働き方(会社員として働いたことがあるか、あるいはずっと専業主婦だったか)によって組み合わせは変わりますが、妻Aさんは、自分の「老齢基礎年金・老齢厚生年金」のほか、夫が亡くなったことによる「遺族厚生年金」を受け取る権利もありました。

ただし、遺族厚生年金は全額が支給されるわけではありません。自分が受け取る老齢厚生年金より遺族厚生年金の額が高い場合には、その差額しか受け取れないのです。もしも遺族厚生年金より自分の老齢厚生年金の年金額が高い場合は、遺族厚生年金は全額支給停止になります。また、夫の老齢基礎年金を妻が受け取る権利はありません。

では、夫Bさんの亡き後、妻Aさんの年金額が半分以下になってしまうのはなぜか、具体的な金額で見てみましょう。

夫の生存時に受け取っていた夫婦2人の年金額合計:年419.9万円(約35万円/月)

(内訳) ・夫Bさんの生前の年金額  老齢基礎年金:年78.5万円  老齢厚生年金:年158.8万円  合計:年237.3万円

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・妻Aさんの年金額  老齢基礎年金:年61.2万円  老齢厚生年金:年121.4万円  合計:年182.6万円

夫亡き後に妻Aさんが受け取る年金額合計:年​201.3万円(約16.7万円/月)

(内訳)

老齢基礎年金:年61.2万円 老齢厚生年金:年121.4万円 夫Bさんの遺族厚生年金(妻Aさんの老齢厚生年金と夫Bさんの遺族厚生年金の差額):年18.7万円※

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※遺族厚生年金は①夫の老齢厚生年金の4分の3、②夫の老齢厚生年金の2分の1と妻の老齢厚生年金の2分の1の合計、③妻の老齢厚生年金 のうち最も大きい金額から妻の老齢厚生年金を差し引く。今回のケースは②が有効となる。

計算式:(158.8万円÷2)+(121.4万円÷2)-121.4万円=18.7万円

夫Bさんが亡くなったことで、妻Aさん1人分の老齢基礎年金と老齢厚生年金に夫Bさんの遺族厚生年金(老齢厚生年金との差額分)がプラスされるのみとなります。結果的に、月18万円以上の年金が減ってしまうのです。

この事実に妻Aさんは、「お父さんの年金がほとんどもらえないなんて……」と、絶句しました。Mさんは、これから安心して暮らすために、財産や支出を見直すこと、今後必要なお金を試算すること、必要があれば働いて収入を得ることなど、やるべきことを伝え、肩を落とす妻Aさんを見送りました。

亡き夫が遺してくれた財産があるから。子ども達と共に生きていきます

1年後、一周忌法要のため、妻AさんとMさんは久しぶりに再会しました。

妻Aさんは「Mちゃん、あの時はいろいろ教えてくれてありがとう。あれから家計を見直してみたら、お父さんは私が困らないようにしっかりと財産を遺しておいてくれていたの。住む家もあるし、今はパートで月10万円の収入もあるのよ。子ども達や孫も近くにいてくれているし、楽しく生活しているわよ。」と、話してくれました。

妻Aさんの元気そうな様子を見て、Mさんはほっとしました。

公的年金は「1人1年金」が大原則です。ご自身に万一のことがあった時、遺された家族が受け取れる年金受給額を正しく把握し、生活に必要な保障が不足していれば備えておくことをおススメいたします。

執筆/南真理  ファイナンシャル・プランナー

監修/伊達有希子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)  

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