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希少な芸能「平家」の魅力伝えたい 菊央雄司が5月11日「奈須与一」を披露

産経ニュース / 2024年5月9日 12時15分

上方の伝統芸能、地歌箏曲。江戸時代の演奏家は平家琵琶で「平家物語」も語り聞かせたという。令和5年度の芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞した菊央雄司(きくおう・ゆうじ)は「平家」と呼ばれるこの芸の数少ない継承者だ。5月11日午後1時、国立文楽劇場(大阪市中央区)で開催される「新進と花形による舞踊・邦楽鑑賞会」に出演し、平家「奈須与一(なすのよいち)」を披露する。「できるだけ多くの方に『平家』という芸能を知っていただきたい」と意気込む。

「平家物語」の演奏というと、筑前琵琶や薩摩琵琶の弾き語りが思い浮かぶ。琵琶を体の前で立てるようにして演奏し、深みのある音色に劇的な語りで盛り上げる。「平家」は、伴奏に使う平家琵琶も語りも、演奏法や節回し、語り方など全く異なるという。

「まず、楽器を横にして演奏します。音色も非常に渋く、語りの合間に音が入るイメージです。『平家』は語りがメインであり、説得力のある語りが要求されます」とのこと。

「平家」の歴史は古い。「平家物語」が成立した鎌倉時代にさかのぼり、盲目の琵琶法師らが弾き語りをしていた。室町時代に名人が出たこともあり隆盛を迎え、江戸時代には地歌箏曲演奏家が「平家」も演奏。習い事として武士や茶人らがたしなんだそうだが、明治に入ると演奏者は減少し、近年は全国でも数えるほどになってしまった。

雄司が「平家」を始めたのは、20代の頃、地歌箏曲の師匠である菊原光治の内弟子時代だった。

師匠から「琵琶、やるか」と言われた雄司は、愛知県の今井勉検校のもとに約3年通い、「平家」の弾き語りを学んだ。

現在は雄司のほか、山田流箏曲家の田中奈央一、生田流箏曲家、日吉章吾の3人が「平家」の習得に取り組み、今井検校から継承した8曲のほか、他の章段の復元にも尽力している。

希少な芸能となった「平家」だが、その魅力を雄司は「普通ならクライマックスになるところを淡々と語る。その前後の、例えば登場人物がどう思ったのか、何を着ていたのかなど、心情やディテールをじっくり聞かせるのが特徴。それを平家琵琶の枯れた音色で語るところに芸の魅力があります」と話す。

今回の「奈須与一」は、平家物語でもよく知られたエピソードで、源氏の武将で弓の名手として名高い与一が、屋島の合戦の折、平家の軍船に掲げられた扇の的を見事、射落とす様子を描いた曲だ。

「今、残っている『平家』の曲はあまり知られていない話が多い中、これは有名なので親しみやすいと思います。その中に、『平家』らしい言葉の力を感じていただければ」(亀岡典子)

新進と花形による舞踊・邦楽鑑賞会

ほかの出演者と演目は次の通り。尺八「本曲 岩清水」井本蝶山▽舞踊「鉄輪」井上安寿子▽箏曲「手事」西川かをり▽舞踊「新曲浦島」若柳延祐、若柳竜公、山村若隼紀、花柳仁司郎、藤間宏衛門▽舞踊「晒三番叟」藤間寿秀。問い合わせは国立劇場チケットセンター(0570-07-9900)。

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