早大史上初女子マネジャー「南ちゃん」が4年生に 夢は専大松戸の弟と「明治神宮大会で藤田兄弟」
スポニチアネックス / 2024年5月9日 20時8分
「学生野球の父」の飛田穂洲、「ミスタープロ野球」の長嶋茂雄、昨年には阪神を日本一に導いた岡田彰布も、1925年(大14)に始まった東京六大学野球を彩った。今年で創設から100年目を迎えた日本最古の大学野球リーグを支える人々を紹介するインタビュー連載「東京六大学野球 次の100年へ」。第4回は早大史上初の女子マネジャーであり、リーグ戦では連盟ウェブサイトのスコアや速報を入力する「打ち込み担当」の藤田南マネジャー(4年)。「スピード」と「質」を両立するサイト運営でリーグ戦を影から支えている。(聞き手 アマチュア野球担当キャップ・柳内 遼平)
――東京六大学野球連盟のウェブサイトの充実度が凄い。スコア速報だけではなく、試合終了後には選手の打撃成績、投手成績もすぐに反映される。ここまでウェブサイトが充実している大学野球リーグはないのでは。何人で担当しているのか。
「今年は4人で作業しています。当番校の早大と、3年生は慶大が2人、明大の計4人。私は2年の時から担当していますね」
――どんな作業を。
「神宮球場の本部室で試合映像を見ながらスコア速報をパソコンで打ち込んでいきます。打撃成績や投手成績は試合後に公式記録を見て反映。あとは試合展開のコメントや写真を掲載する作業もありますね」
――リアルタイムでスコア入力は大変だ。
「初めて担当した2年生の時は大変でした。少しずつ他大学の先輩マネジャーに教えていただいて慣れていきました」
――苦労するところと、やりがいを感じるところは。
「早さを求められる上で、間違わないように正確に打つことが大変です。入力する両チームが競った試合をするとスコア、速報を打つのも楽しくなります」
――試合後はスコアブックに記された公式記録をデータとして入力。何分くらいかかる。
「最後のチェックまで含めて10分くらいで終わりますね」
――マネジャーたちは他の仕事でもリーグ戦を支えている。
「そうですね。試合後の選手、監督取材の手配やタイムキーパー、試合間のチームの入れ替えや両校のノックを円滑に進めるための指揮、あとは応援団のチケット準備などいろいろな仕事があります。私は“打ち込み”と場内アナウンスを担当しています」
――場内アナウンスの仕事はネット中継でも映ることがあるが、「打ち込み」はなかなかスポットライトがあたらない仕事。
「確かにあまり気づいてもらえない仕事ですね。“アレやっているんだ”と驚かれることもあります。神宮に来られない方にも東京六大学野球の情報をリアルタイムで届けたいなと思っています。1日分の打ち込みを終えると、サイトに表示される速報やスコアの量が結構、多くなるので、そレを見ると“頑張ってよかったな”って思えますね」
――神宮を使用する東京六大学野球では同日にヤクルトがナイターをする併用日があり、運営も慌ただしくなる。
「プロとの併用日は少しでも早く作業を終わらせるために、経験のある3、4年生が担当します。何もトラブルが起きず、全てを円滑に進めることができると達成感があります」
――「打ち込み」を担当するには東京六大学野球のリーグ戦だけか。
「実は大学野球の全国大会の全日本野球選手権、明治神宮大会でも六大学のマネジャーたちが担当している。全日本大学野球選手権では東京ドームと神宮の2箇所で打ち込みをしています。公式記録などを担当していただく東都大学野球連盟のマネジャーたちと協力して大会をつくりあげています」
――裏方としてリーグ戦を支えている一方、早大は3カードを終えて勝ち点3。20年秋以来の優勝も見えてきた。早大のマネジャーとしてチームの勢いは感じるか。
「いまの4年生はずっと、あと1勝で優勝とか、勝ち点の懸かる3戦目で勝ちきれないということが続いてきた。今季はここ一番で粘り強く戦えているなと感じています。これまでの悔しい思いをもう味わいたくないと皆の強い気持ちがプレーに出ていますね」
――早大史上初の女子マネジャーとして野球部に入部し、4年目を迎えた。いよいよラストイヤー。
「本当に同期のみんな、これまでの先輩方、OBの方々、監督、部長、後輩、連盟の方々に他大学の皆さんの支えがあり、ここまでやってこれた。その恩返しができる1年になったらいいと思います」
――早大でマネジャーを経験したことで成長できたことは。
「やっぱり常に相手の気持ちを考えて、その気持ちを大切にすることでしょうか。以前は自分の考えを伝えることはあまり得意ではなかったんですが、マネジャーの仕事を通して能力を伸ばすことができたと思います」
――リーグ戦を運営していく仕事は他の5校のマネジャーとの連携も必要。
「マネジャー同士のつながりは本当に強くて、チームは違うんですけど、お互いに“頑張ってほしい”と思っている。早大だけじゃなくて六大学すべてに仲間ができました」
――一番の思い出は。
「リーグ戦で最初にアナウンスをしたことも思い出ですし、でも、これから優勝することが一番の思い出になると思います」
――一緒に入部した同学年の選手たちもたくましくなった。
「あっという間だなって。最初は一緒に練習準備をしていた選手たちが、いまではチームを引っ張っている姿を見るとうれしい。最初にマネジャーとして入部できることが決まった時、吉納が“よかったね”って言ってくれたのが心に残っている。本人は何気なく言った一言だと思うけど、簡単にマネジャーになれたわけではないので、そういうことを理解して言ってくれたことが凄くうれしかった。はっきりと覚えています」
――将来の夢は。
「これから考えていこうと思います。いろいろな人をつなげる役割の仕事ができればいいなと。やっぱりマネジャーとして人と人の架け橋になる場面が多くあったので、これからもできたらいいなって思います」
――専大松戸には弟で2年生内野手の栄士がいる。昨秋は関東大会にも出場していた。
「2人で“お互い頑張ろうね”って話をしています。この春の千葉県大会は専大松戸が優勝しましたし、夏も頑張ってほしいですね。弟の頑張っている姿をずっと近くで見てきました。クールであまりしゃべらないんですけど、頼りになる弟です」
――明治神宮大会では高校、大学で共演することができる。
「早大の私と専大松戸の弟で一緒に明治神宮大会に出場できるのは今年がラストチャンス。去年もお互いあと少しだったので、今年は神宮球場で藤田兄弟が一緒に頑張りたいです」
――早大のマネジャーとしてどんな1年にしたい。
「最後に“よかったね”って皆で笑いたい。これまでの努力が形になり優勝できたら幸せです」
◇藤田 南(ふじた・みなみ)2002年(平14)10月12日生まれ、埼玉県出身の21歳。小学から中学までは水泳を続け、開智(埼玉)では野球部でマネジャーを務める。早大では人間科学部に所属。野球部には史上初の女子マネジャーとして入部。好きな言葉はライオンキングに登場するスワヒリ語「ハクナ・マタタ」(問題ない)。尊敬する人は両親。好きな選手は巨人・高橋礼。好物は馬刺し。あだ名は「ちゃんみな」。身長は1メートル64。
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