南アEverlectric、車両から充電インフラまで包括した“EV導入ソリューション”提供
Techable / 2024年5月5日 8時0分
現在アフリカでは、大気汚染地域として有名なアジアを上回る勢いで、大気や水質などの環境汚染問題が深刻になっている。経済発展に伴う交通量の増加は、慢性的な交通渋滞を引き起こし、自動車排出ガスによる大気汚染や温室効果ガスの排出を増加させている。これは特に、工業化が進む都市部で顕著だ。
また、既存の発電所の老朽化や燃料価格の上昇、干ばつによるダムの渇水などにより、アフリカの電力供給は深刻な危機に瀕している。長時間にわたる計画停電も日常化し、経済活動や国民生活に多大な影響を及ぼしているのが現状だ。
こうした背景から石炭火力への過度な依存から脱却し、持続可能エネルギーへ転換することが喫緊の課題となっている。電気自動車(EV)への移行は、問題解決の鍵となるだろう。
世界におけるEV市場への需要と関心が急速に高まっている中で注目を集めているのが、Everlectricだ。包括的なソリューションを提供し、電気自動車の普及に取り組んでいる南アフリカ発のスタートアップ企業である。
独自ビジネスモデル「EV as a Service」で導入障壁を軽減Everlectricの創業者Ndia Magadagela氏は、南アフリカの公認会計士であり実業家だ。
彼女は、アフリカを揺るがす気候変動問題への高い関心から、Deloitte時代の同僚であるPaul Plummer氏とWesley van der Walt氏と共に、二酸化炭素排出量の削減を目指す物流業界をターゲットとして、B2Bの電気自動車市場に参入した(参考1、参考2)。
電気自動車(EV)が環境へもたらす影響は多大だが、高額な導入コストや充電インフラの不足などの障壁が、普及を阻んでいる。そこでEverlectricは、クライアントが配送サービスに集中できるようになることを目指して、EVと充電インフラを一括でリースする独自ビジネスモデル「Electric Vehicles as a Service」(EVaaS)を構築し、EV導入の障壁を大幅に軽減した。
EVaaSの特徴を詳しく見てみよう。
・初期投資不要:EV導入に初期費用は不要
・充電設備不要:充電インフラへの投資は不要、全運用エリアに充電ポイントを配備
・燃料費用不要:パッケージに必要な全電力(燃料費用)を含み、急速充電器ネットワークで充電が可能
・最新EV提供: Everlectricは世界のトップEVメーカーと提携、最新テクノロジーを提供
クライアントはEV車両費から、充電インフラと電気料金、メンテナンス費用や保険まで含むパッケージの月額費用を支払うだけだ。これにより、初期投資も技術リスクもなくEVの導入が可能になり、燃料価格変動によるコスト増などの懸念もなくなる。
EV普及がもたらす持続可能な社会大気汚染は人々の健康だけでなく、生活や農作物の生産にも甚大な影響を与える。UNICEFは2019年6月の報告書で、大気汚染による早期死亡に起因する経済的損失が2,150億米ドルに達すると推定している。
同報告書では、アフリカで大気汚染を死因とする人の数が、1990年の16万4,000人から2017年の25万8,000人と、30年近くで57%増加していることも指摘。今後、アフリカの人口11億人は2050年までに倍増するとみられ、人口と消費の増加や産業の成長が、この大気汚染レベルをさらに高める可能性がある。
そこでEverlectricは、持続可能な社会を実現するための具体的な取り組みとして、計画停電への耐性もある再生可能エネルギーを活用している。オーストラリア発の小売業大手Woolworthsと提携し、デンマークに本社を構える物流会社DSVの広範な太陽光発電インフラを利用して、EVパネルバンを大規模展開した。この商用EV車は1回の充電で最大300kmの走行が可能で、Woolworthsの炭素排出量を年間40万kg以上削減する可能性がある。
環境に配慮したクリーンな配送を通して、Woolworthsは2040年までに自社のネットゼロ排出、DSVは2050年までに事業全体のネットゼロ排出の達成を目指している。
EV・充電インフラの技術革新とサービスの向上へEverlectricは、独自のビジネスモデルに基づいてEVを普及させること、そしてEVを通して環境への負荷を減らし、エネルギー危機を解消し、持続可能な社会を実現することを目指しているという。
2023年時点で、Everlectricがサービスを提供しているのはWoolworthsといった一部の企業に限られている。Accountancy SAによるとEverlectricの市場占有率はわずか2%未満であり、市場拡大はまだまだ可能だろう。Independent Onlineの取材で、同社は今後5年間で現在の百台から数千台に増やすことを目指すと語っている。
Ndia Magadagela氏は、WoolworthsやDSVとの提携により、3年にわたって実施されたEVの試験運用で、EVが商業的にも、技術的にも、経済的にも実行可能であることを証明できたという(参考)。もはやEVは、環境意識の高い層のためにあるものではない。
Everlectricは今後、幅広い業種や業態の企業や、個人にも、魅力的なサービスを提供するほか、クライアントの需要に合わせたEVを提供していく方針だ。また、自動車排出ガス削減が求められるタクシー業界にも、EV普及の可能性を見出しているようだ。
Everlectricの運用エリアは、まだ南アフリカ国内にとどまっている。しかし、その画期的なビジネスモデルと環境問題解決への寄与は、世界にも十分受け入れられるものだろう。EVや充電インフラの技術革新とサービスの向上が功を奏し、アフリカ大陸ひいては世界に、その影響力を及ぼす日が待ち遠しい。
参考・引用元:Everlectric
(文・gracen)
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