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アングル:状況異なる2度の介入観測、市場に違和感 米の反応焦点

ロイター / 2024年5月9日 15時56分

5月2日早朝の円の急騰について、外為市場関係者の間で様々な憶測が広がっている。写真は円とドルの紙幣。2017年6月撮影(2024年 ロイター/Thomas White)

Shinji Kitamura

[東京 9日 ロイター] - 2日早朝の円の急騰について、外為市場関係者の間で様々な憶測が広がっている。米国市場最終盤のドル/円は値動きも少なく、160円台に乗せた4月29日のような急激な動きがなかったにも関わらず、巨額の円買い介入が行われた可能性があるためだ。

一見強引な介入とみられる動きを疑問視する声が上がる中、沈黙を続ける米当局はどう反応するのか。今後の介入の行方も左右しかねないとして、大きな関心が寄せられている。

<乏しい値動き、あえて選択か>

円が突然急伸したのは、米株式市場の取引が終了して間もない日本時間2日の午前5時10分頃だが、ドルは午前0時前から157円半ばでもみあう値動きの乏しい展開だった。29日にドル買いが勢いづいて160円台へ乗せた後、巨額の円買いが入った時とは明らかに異なる状況だった。

29日は植田和男日銀総裁が前週末(26日)の記者会見で、円安に明確な懸念を示さなかったことで、投機筋の円売りが勢いづいた経緯があった。「円売りが急増した直後に叩き落された格好で、市場心理の揺れを突く巧妙さを感じた」とある大手銀行の関係者は話す。一方、2日の円急伸については「何も起こっていなかった。なぜ強引にドルを押し下げる必要があったのか」と、同関係者は首をかしげる。

「財務省の出方を試そうとする市場の動きを牽制し、米利下げまで時間稼ぎをすることにあるのではないか」。バンク・オブ・アメリカの主席日本為替金利ストラテジスト、山田修輔氏は、この日の円急騰の背景をこう推察する。投機の円売りがかさむ中、2日の市場はドル安基調だったため「あえてその局面で介入してドル買い派をけん制しつつ、どのような環境でも動けることも印象付ける」狙いがあったとみている。

<G7から批判の危惧も>

4月に米国で行われた主要7カ国(G7)財務相・中銀総裁会議は、声明で「為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得る」とした2017年5月のコミットメントを「再確認する」と表記した。

ただ、仮に2日の変動が介入であったとしたら、その時点では投機的な動きがみられない中で行われたことになる。当局が警戒する「過度な変動」をどう定義づけるかといった問題はあるが「あまりこうした動きを繰り返していると、G7の一員として批判を受ける可能性がある」(ふくおかフィナンシャルグループのチーフストラテジスト、佐々木融氏)と危惧する声も上がっている。

<米財務長官「うわさだと思う」の含意>

2度の円急騰後、イエレン米財務長官は4日、記者団に「介入はまれであるべきで、協議が行われることが期待される」と述べ、4月25日にロイターとのインタビューで示した見解を重ねて表明した。今回は、日本の介入は「うわさだと思う」と付け加えた点が異なる。

水面下で行われる当局間の協議を主導する長官の発言は、詰め寄る記者団をかわそうとしただけにも見える。だが、その行間には「米国が大規模介入を容認したと受け止められないよう、承知していないと国内外に強調し、日本にも釘を刺す形を取る」(別の大手銀関係者))企図があったのではないか、との読みも市場にくすぶる。

日銀が日々公表する当座預金残高から短資会社が推計した今回の円買い介入予想額は、2日間合計でおよそ9兆円。事実であれば、過去最大だった前回の2022年に匹敵する円買いが、すでに投下されたことになる。

月末に公表される介入実績で事実関係に明らかになれば、イエレン氏は「うわさ」発言の修正を迫られることになる。米当局は日本の動きを許容するのか、突き放すのか。外貨準備上の制限以上に、今後の介入余地を左右しかねない可能性をはらむ。

ドルは介入騒ぎで前週に一時151円台まで下落した後、9日までに155円半ばに反発し、高金利のドル人気を改めて印象付ける値動きを見せている。大統領選を控えた米国の出方に、市場の注目が集まっている。

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