稀少遺伝性自己炎症性疾患:OTULIN関連自己炎症症候群の新たな病態を解明
Digital PR Platform / 2024年4月24日 14時0分
既報の疾患に新たな視点を追加し、未診断患者の診断や炎症・細胞死研究の進展に期待
ポイント
・OTULIN関連自己炎症症候群の新たな遺伝・発症様式を解明。
・遺伝子全エクソン解析によりOTULINに未報告のバリアントがあることを確認。
・変異タンパクが正常タンパクの機能を阻害することで発症する事を解明。
概要
[画像1]https://digitalpr.jp/table_img/1706/87217/87217_web_1.png
[画像2]https://digitalpr.jp/simg/1706/87217/500_144_20240423162331662761f369733.jpg
患者皮膚で認められた著明な炎症細胞浸潤・細胞死とORAS発症機序の概要図。患者皮膚では真皮に炎症細胞浸潤を認め(左図)、細胞死が増加している(中図)。患者では機能がほぼ正常なOTULINと機能が低下したOTULINが存在し、機能が低下したOTULINがもう一方のOTULINの機能を阻害することで発症する。
【背景】
ユビキチンによるタンパク修飾はタンパク分解や生体内のシグナル活性化など様々な生体機能に重要な役割を担っています。直鎖状ユビキチン鎖はLinear-ubiquitin assembly complex(LUBAC)によって生成され、免疫細胞の活性化・炎症・細胞死の調節において重要なNF-κBシグナルの活性化に関与します。OTULINは直鎖状ユビキチン鎖を脱ユビキチン化することでシグナル活性化の調節を行い、その機能低下により全身性炎症と好中球性皮膚炎を特徴とするOTULIN関連自己炎症症候群を常染色体潜性遺伝形式で発症します。
研究グループは新生児期から全身性炎症と好中球性皮膚炎を呈した患者に対して、遺伝子全エクソン解析を行い、OTULIN遺伝子に稀少バリアントがあることを確認しました。これまでのORAS患者の解析報告では、疾患関連性が疑われるバリアントは二つの遺伝子座にそれぞれ存在することが通例でしたが、今回の解析結果では一つのみであったことから、本研究を開始しました。
【研究手法・研究成果】
まず、患者細胞及び患者由来細胞(EBウイルスB細胞株*6、iPS細胞*7)を使用し、細胞における直鎖状ユビキチン鎖の蓄積及び細胞死の評価を行いました。解析の結果、患者細胞では既報のORASの特徴である直鎖状ユビキチン鎖の蓄積と細胞死の増加を確認しました(図1)。次に、患者では二つの稀少バリアントが各遺伝子座に確認されており、それぞれの評価を各種データベースでの検討やタンパク立体構造、OTULIN欠損HeLa細胞株*8に正常・既報及び我々の患者で確認されたOTULINを強制発現させて評価を行ったところ、疾患関連性が疑われるバリアントが一つのみであることが強く示唆されました(図2)。
そこで、患者iPS細胞をCRISPR/Cas9システム*9を用いて遺伝子改変を行った後で、直鎖状ユビキチン鎖の蓄積と細胞死の評価を行ったところ、一つのバリアントのみで直鎖状ユビキチン鎖の蓄積と細胞死増加を認め、ORASを発症するということが示唆されました(図3)。
最後に、OTULIN欠損HeLa細胞株に正常OTULINタンパクと研究グループの患者で確認された異常OTULINの発現量を変化させて評価したところ、疾患関連性が示唆されたバリアントでは異常OTULINの発現量が増加するごとに直鎖状ユビキチン鎖の増加と細胞死の増加を認めました(図4)。これは異常OTULINが正常なOTULIN機能を阻害することを示し、疾患発症に寄与するということを表します。
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