「投資信託は怖いけど債券なら安全」と考えている人は誤解をしているかも?
ファイナンシャルフィールド / 2024年4月20日 2時20分
2024年から新NISAが始まり注目を集めている投資信託。 しかし、以前店頭などで勧められるままに投資信託を購入して損失を出してしまった経験がある方の中には、投資信託を敬遠し、より「安心」だと思える債券で運用する方もいます。 では、投資信託よりも債券のほうが本当に安心なのでしょうか? 実はそこには、いくつかの誤解も潜んでいます。ご自身に当てはまることはないか、購入する前に本記事を読んでチェックしてみてください。
なぜ債券のほうが安心と思われるのか
投資信託と比べて債券のほうが安心、と思われるのはなぜでしょうか。筆者の経験上見聞きした(誤解が含まれた)理由をいくつか挙げてみます。
理由その1:日々価格を気にしなくていいから。
投資信託の価格は日々変動する上、携帯アプリや証券会社のホームページを見ればすぐに分かります。そのため、人によっては価格変動に毎日一喜一憂したり、価格が下がり続けると不安で眠れなくなったりすることもあります。
一方、債券は満期まで持っていれば元本が100%で戻ってきます。日々の価格変動を気にしなくていいし、運用中はできれば放置しておくほうがいい、という方にとっては最適という考え方です。
理由その2:何に投資するか分かりやすいから。
投資信託のメリットの1つに、自分1人では難しい「分散投資」があります。つまり、投資対象を複数に分散することでリスクコントロールできる点です。
しかし一方で、投資信託の中には投資対象が先進国・新興国を含む全世界の株式に及ぶものもあり、自分がいったい何に投資しているのかが分かりにくい、ともいえます。
一方、債券は国や地方公共団体、会社などが資金調達のために発行する有価証券の1つです。購入する際は国債であれば日本政府、社債であれば「〇〇会社第〇回社債」など、自分がどこの何に投資したのかがひと目で分かりやすい。だから債券のほうが好ましい、という考え方です。
理由その3:満期が決まっているから。
投資信託には、定期預金や債券のように、いわゆる「満期」というものがなく、換金するためには原則としてその時の時価で売却する必要があります。その際購入時よりも価格が下がっていれば損失を被ります。
一方、債券は購入時に〇〇年〇月〇日というように満期が決まっています。どんなに先であっても、満期になれば投資した資金が元本割れすることなく満額で戻ってくるので安心、という考え方です。
それでは、次に上記3つの考え方について、それぞれ注意点を見てみましょう。
投資信託と同様、債券の価格も日々変動する
まず、「理由その1:日々価格を気にしなくていいから」を考えてみます。
日々価格変動が気になる方にとっては、確かに投資信託よりも(満期までの保有を前提とした)債券のほうが向いているかもしれません。しかし実際は、投資信託と同様、債券も需給バランスや金利動向、さらに外貨建ての債券の場合には為替などさまざまな要因によって日々価格が変動します。
もし万が一、「債券は価格が変動しないから安心」と誤解している方や、満期まで持つつもりが急きょ売却しなければならなくなりそうな方は要注意です。たとえば、債券購入後に結婚して住宅の頭金が必要になる方や、離婚して財産分与が必要になる方など、その債券を現金化しなくてはならない場合です。
そのような方は、毎日、とはいわないまでも、半年に1回でも債券の価格をチェックして、中途売却時に損失が発生しないかは調べておくべきでしょう。
また、債券の種類によっては、すぐには買い手がつかずに現金化まで時間がかかったり、想定した価格で売却できないリスク(いわゆる流動性リスク)があります。債券を購入後、「満期まで持つから大丈夫」と放置せず、できれば投資信託と同じ気持ちで価格を調べておくことをお勧めします。
債券だけでは分散投資にならない。
次に、「理由その2:何に投資するか分かりやすいから。」を見てみましょう。
何に投資するのか分かりやすい、だから債券に投資する、という考え方は、お勧めできません。特に、その債券が投資対象として適正か、ということよりも、その債券の発行体(例えば〇〇株式会社)になじみがあるから、という理由である場合は要注意です。
投資信託であれ、債券であれ、どんな運用でも最も大切なことの1つは、「償還日までに元本が確実に戻ってくるのか」という点(信用リスク)です。債券への投資は、投資信託と違い分散投資ではありません。倒産などで一気に資金が失われるリスクがあることは、必ず押さえておきましょう。
もう1つ付け加えると、債券だからといって「投資対象が分かりやすい」というわけではないことも知っておくべきです。
例えば、ある企業の債券を購入した場合、その資金は複数の異なる事業を行う会社に投資されている場合があります。たとえば、Aという会社の債券を購入しても、その資金はA社の投資先B社(AI事業)や、C社(半導体事業)、D社(オンライン小売事業)などに使われている場合もあります。
債券を購入する際には、必ず目論見書を確認して、その債券の資金使途もあわせて確認しておくとよいでしょう。
償還期限がない債券がある一方、償還期限がある投資信託もある
最後に、「理由その3:満期が決まっている」を見てみましょう。
債券は満期日(または償還日)が決まっているから資金計画も立てやすい、けれども投資信託は満期日がないから立てにくい、と思っている方は誤解です。実際は、債券にも満期日がない永久債または永久劣後債と呼ばれるものがあったり、満期日前に中途償還されるタイプのものがあります。
債券を購入する際、いつ元本が償還されるのかはとても大切な点ですのでそれを確認しない方はほとんどいないかもしれませんが、仕組債など中途償還される可能性があるものは、それがいつなのかについても、しっかり押さえておいてください。
一方で、投資信託にも償還日があるものがあります。投資信託には必ず信託期間が設定されており、購入前に必ず交付される目論見書から確認できます。通常、期限がないものは「無期限」または「原則として無期限」、一方で期限があるものは「〇〇年〇月〇日まで」と記載されています。
投資信託を購入する際は償還までの期限が短いものを購入すると値動きが大きく変動したり、思うように売却できないリスクがありますので、必ず償還期限の有無は確認しておきましょう。
投資信託、債券、どちらがいいかは人それぞれ
投資信託か債券か、どちらがふさわしいかは投資できる金額や期間、目的によってさまざまです。
くれぐれも、他の方の個人的な経験(例えば本記事冒頭の、投資信託で損を出したので、債券に切り替えた)に基づいて判断せず、ご自身の状況に当てはめた上で注意深く比較検討し、購入することをお勧めします。
執筆者:酒井 乙
CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。
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