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妻が怖い。このまま死んでいくのはむなしい…80代男性患者が涙ながらに訴えた【老親・家族 在宅での看取り方】

日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年5月1日 9時26分

【老親・家族 在宅での看取り方】#91

 在宅医療を始められる方の事情はさまざまです。家族に見守られながら過ごす方から1人暮らしの方。またその家の経済的な事情、ご家族と患者さんとの家庭内における関係性の違いによっても、その療養環境は微妙に変わってきます。

 その患者さんは生活保護を受けられている、奥さんと2人暮らしの80代男性。前立腺がんの末期で、この患者さんを紹介してくれたケアマネジャーさんによると、初めてご自宅に訪問した時は、ベッドから起き上がることもできず、糞尿も垂れ流している状況だったといいます。

 そして、紹介いただいた病院からの報告によれば、旦那さんの言動が強く、いつも奥さまと言い争っているような雰囲気だということでした。しかし実際に我々が伺うと、どうやら旦那さんは東北生まれの方で、その地方の方言のイントネーションにより、強く乱暴な語調に聞こえるだけだということが分かりました。

 そして今回在宅医療を決めた理由も、キーパーソンである奥さまが、ご老体で力も弱く、弱っていくご主人の姿を見ながら、病院ではおそらくしっかりとご主人の世話はできないだろうと判断されたからだろうと考えていたのですが、実際は全く違うものでした。

 奥さんは「何もできない」のではなく「何もしない」方。糞尿を処理できないからという理由でごはんや水分を旦那さんへあまり与えなかったり、旦那さんが失禁したり転倒したりすると、ものすごいけんまくで旦那さんを責める方だったと分かったのです。

 ある時、奥さんがその場を外した時に、旦那さんと私だけでお話しすることがありました。

「あいつ(妻)が怖い」「このままこんな気持ちで死んでいくのはむなしい」

 そんな言葉が次々と……。涙を流しながら、これまでのこと、これから先の不安を訴えられました。

 病院では分からないそれぞれの生活や人生も、実際にご自宅に伺うと、分かることがいっぱいあります。そしてその事情をくみ取り最善の道をさがすことも我々の使命だと実感したのでした。

 果たしてこの患者さんはご自宅にいることが最善なのか。そのことも含めて改めて我々は、この患者さんを紹介していただいたケアマネジャーさんと相談することとしたのでした。

 その時、ここまで他人の生活に入り込み、それぞれの人生を支えられる在宅医療は奥が深いと、語り合いました。

(下山祐人/あけぼの診療所院長)

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