末期肺がん80代男性「幸せな思い出をつくれた。いつ死んでもいい」【老親・家族 在宅での看取り方】
日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年5月8日 9時26分
【老親・家族 在宅での看取り方】#92
「病院の無機質な天井を見て死にたくない」
この発言を機に奥さまがネットで在宅医療の存在を調べ、家族総出で病院と討論しあった末に退院。自宅に戻られた肺がん末期の80代後半の男性患者さんがいらっしゃいました。
このように、在宅医療の存在をネットを介して知り、自宅での療養に切り替えたという患者さんは最近増えてきています。
冒頭の患者さんの場合、がんの状態は厳しく、いつ亡くなってもおかしくない状況であり、退院をしぶる病院からは予後をはっきり伝えられていました。それでも医療訴訟を起こしかねないほど強気なご家族に対して、病院の医師も「退院しても責任は取れない」「退院後何かあってうちに運ばれても困る」など強気にお話しされていたといいます。
ちなみにこの時の退院カンファレンス(会議)には、患者さんのご家族総出で出席し、担当ケアマネジャーや我々診療所の担当者らも同席し真剣な話し合いが行われました。
結果、病院の反対を押し切って退院することになったのですが、退院後は奥さまとご自宅で2人で過ごすうちに、患者さんはみるみる元気になられたのです。
入院中は自力でトイレに行けなかったのに、自宅では伝い歩きですが行けるように。家族だんらんの場である居間のリクライニングチェアに座り、好きな野球を観戦し、これまでの入院生活とは違いイキイキと過ごされるようになりました。
ですがこれは在宅医療を開始した患者さんでは決して珍しいお話ではなく、当初の予後よりも長く過ごされるケースもよくある話です。
本人は「家族の生活の音が聞こえるだけで気持ちが明るくなる。生活に変化があると刺激になって元気になる」とよくおっしゃっていました。
さらにゆっくりと自分の人生を振り返る時間も持つことができたのでしょう。
「正直ここまで元気になれると思っていなかったし幸せな思い出をつくることができたからいつ死んでもよい。もう思い残すことはない」
そうおっしゃるようにもなっていました。
自宅での療養生活を送るある日のこと。それまで数日続いた雨が上がり、久々に晴れた日でした。
「天気もいいし、お散歩にでも行ったらどうだい?」
患者さんから提案された奥さまは、家庭菜園をするご近所に野菜をいただきにお出かけになったといいます。
ですが奥さまの帰宅後、お気に入りのリクライニングチェアで息を引き取っていた旦那さんを発見したのでした。
「私が出かけなければ」と涙を流されひどく悔いている奥さまに対して、ケアマネジャーさんは自分を責めないよう慰め、自宅でも過ごしたこれまでの2人の日々は、かけがえのないものだったとお伝えしたそうです。
病院と在宅医療の優劣をつけるわけではありませんが、最期の時は心安らぐ自宅でといった選択肢もあるのだということを、この患者さんと家族に出会い、いま病と闘っている人たちに広く伝えたいという思いを新たにしたのでした。
(下山祐人/あけぼの診療所院長)
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