急いで売りたい場合は有効な手段といえるが…自宅マンションを〈仲介で売却〉せず、不動産会社に〈直接買い取ってもらう〉リスクとは【住宅のプロが助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月3日 15時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
自宅マンションの売却に関しては、事情はあれど、できるだけ「高く」「早く」売りたいもの。売却方法はおもに、不動産会社が仲介して売却、もしくは直接買い取る「下取り」の2通りありますが、「多くの不動産会社は、下取りに導きたいというのが本音」と、不動産コンサルタントの高橋正典氏は言います。日下部理絵氏、高橋正典氏、畑中学氏による著書『絶対に失敗しない! 中古マンションの見極め方』(ビジネス教育出版社)より、その理由を詳しく見ていきましょう。
「仲介で売却」と「下取り」の大きな違いとは?
不動産会社に売却の相談をすると、まず査定に来てくれる。設備機器の劣化具合や、フローリングやクロスの状況、陽当たりや眺望などを確認して、査定金額が出てくる。
マンションの場合は「取引事例比較法」という、周辺の類似物件との比較によって金額を決める査定方法で算出さる。この査定金額は一般の消費者(個人)に売却することを想定したもので「仲介で売却」することを前提にしている。しかし、あくまでも不動産売買における査定金額は「売りに出す金額」であり、「売れる金額」ではないことに注意が必要である。
査定金額は「2~3カ月あれば売れる」金額で設定
いざ市場に出してみた結果、その通りにすぐに購入者が現れる場合もあれば、なかなか売れずに数カ月かかる場合もある。査定金額は一般的に、2〜3カ月あれば売れそうな金額だ。その金額を仮に3,000万円としよう。この場合、売却する人が契約成立を急いでいなければ、もう少し高い金額で出すこともある。「チャレンジ価格」ともいうが、概ね200万円ほど高く売りに出して様子を見ることになる。
逆に、売却する人が急いでいる場合には当初の査定金額より少し低い金額で売りに出すこともある。急いでいる度合いにもよるが、200万円ほど安く出すことになる。おわかりの通り、当初の査定金額からプラス・マイナス200万円(プラス・マイナス7%程度)の間で売買が成立する可能性が高くなるわけだ。
ここで、もし売却する人が現金化をさらに急いでいる場合には、不動産会社による「下取り」(買取り)という選択がある。この場合は、先ほどの「仲介で売却」する場合のように、いくらで売れるのかが市場に出してみないとわからないのと比べて、買主が不動産会社であるため、提示された金額で購入してもらえるメリットがある。
売却側だけでなく、不動産会社にもメリットが多い「下取り」
しかし、問題なのは「下取り価格」がいくらになるか、である。不動産会社が「下取る」目的は、事業上のメリットがあるからだ。それは、下取った物件を転売することで得られる利益に他ならない。当然に「下取り」金額が安ければ安い方が良いということになる。一般的に、「下取り」の金額は市場価格の7割程度となる。高く買ってくれたとしても8割程度になる。先ほどの「仲介で売却」の査定金額が3,000万円だった場合には、2,100〜2,400万円ということになる。
ちなみに、「下取った」不動産会社はその物件を一旦会社の名義に変えて、リフォームを行い、利益を上乗せして市場に売りに出すことになる。こうして売りに出てきた物件が、「リフォーム済」物件として、新たな買主に売買されることになる。
売却する側から見れば、明らかに「仲介で売却」の方が手にする金額は圧倒的に多くなるので、「下取り」を選択する人はいないのではないか、と思われるだろう。
だが現実には、例えば自宅を売却して次の家を購入・あるいは新築している場合に、その買い替え先の引き渡しが近くなってきた場合などは、売却資金を次に充当する関係から、すぐに現金化できる方法を選択する人もいる。また、相続で取得した物件などで現金化を急ぐ人もいるだろう。そういう場合には、とても役立つ選択肢であるともいえる。
悪質な「下取り」狙いの不動産会社に要注意
ところが、現実的には売却する人は少しでも多く現金を手にしたいと思っているのに、不動産会社がきちんと販売戦略を立てて売却活動をしなかったために、結果的に時間もなくなって「下取り」等になってしまう事例が後を立たない。
さらに悪質なのは、不動産会社が最初から「下取り」に仕向けようと企んでいることもあるから注意が必要だ。売却を依頼した不動産会社が、ある「下取り」専門会社等を連れてくる場合、その「下取り」会社からも契約時に仲介手数料をもらうことになる。つまり、売却する人からの仲介手数料と、その下取った会社からの仲介手数料がダブルで手に入る。なおかつ、その下取った会社がリフォームして再販売する際の販売活動も優先的に行えることから、そこでもまた仲介手数料を得るチャンスがある。
こうしたことから、多くの不動産会社は「下取り」に導きたいというのが本音だともいえる。もちろん「下取り」をしてもらう側のメリットもある。けれども、金銭的なデメリットも併せて考えて、不動産会社に振り回されないようにしたいものだ。
日下部 理絵 マンショントレンド評論家、住宅ジャーナリスト
高橋 正典 不動産コンサルタント
畑中 学 不動産コンサルタント、武蔵野不動産相談室株式会社代表取締役
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