なぜこんなことに?…10代から働き続けた66歳男性、年金機構から届いた「年金支給停止」の通知に仰天【FPの助言】<br />
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月28日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
長年働いて、65歳からやっと受け取れる「年金」。たくさん働いて稼いだら受取額も増えると考えていたのに、年金の一部が支給停止になるという通知が届いたら、あなたならどうしますか?「そんなことあるわけない」と思うかもしれませんが、年金には思わぬ落とし穴があるのです。詳しい内容をFPの小川洋平氏が解説します。
ある日手元に届いた「年金の支給停止」の通知に絶句
野田武さん(仮名・66歳)は、地元の総合建設業の作業員として、高校卒業後の18歳から勤務を続け、65歳を過ぎてからは年金を受給しながら働いています。
会社の定年退職の年齢は65歳ですが、深刻な人手不足のなか、野田さんのように長年のキャリアがあり、若手の育成にも携わることができる人材は、会社にとって非常に貴重な存在です。そのため、社長から直々に頼まれた野田さんは、定年後も会社に残ることにしたのでした。
仕事にやりがいを持って働いていた野田さんでしたが、老後のお金には不安がありました。そこで、頑張って働けば老後も楽になるだろうと思い、定年後もがんばって働くことにしたのでした。
そんな野田さんに、ある日、年金機構から「年金の支給停止」の通知が届きました。その通知に目を通し、思わず言葉を失う野田さん。そこには「年間で66万円分の年金が支給停止される」という内容が書かれていたのです。
「長年働いて、毎月厚生年金保険料を納めてきたのに、なぜ支給停止されなければならないのか」…納得のいかない野田さんは、年金事務所に連絡し、その理由を確かめることにしたのでした。
なぜ野田さんの年金は支給停止になったのか?
年金事務所にその理由を聞きに言った野田さんが担当者から聞かされたのは、公的年金を受け取りながら給与を受け取っていると、「在職老齢年金」という仕組みで公的年金がカットされるという説明でした。
私たちが受け取ることができる公的年金は「2階建て」の仕組みになっていて、全員が受給できる「基礎年金部分」に加えて、会社員、会社役員、公務員は「厚生年金部分」を上乗せで受け取ることができ、現行制度では、いずれも原則として65歳になったときに受け取ることができます。
在職老齢年金は、厚生年金部分の基本月額と、総報酬額(諸手当を合わせた年収の月の平均額)を合計して48万円を超えると、超えた分の半分がカットされる制度のことです。言葉のイメージとしては「上乗せでもらえる年金」のように思われがちですが、実際には、その反対に65歳以降も働いていると厚生年金がカットされてしまうという仕組みなのです。
野田さんは、定年退職になるはずの65歳でも現役のころと変わらない収入があり、月給は50万円を超えていました。厚生年金は年間で約110万円を受け取ることができたはずが、在職老齢年金の制度のため、下記のような計算式で、その年金額の多くを削減されてしまったのです。
計算式:月収約50万円+厚生年金部分の月額約9万円ー48万円)÷2=約5.5万円(支給停止額)この計算により、野田さんの年金は年間で約66万円が支給停止となってしまったのでした。
公的年金を受給できる65歳になっても現役世代と同様に給与収入がある場合、野田さんのように厚生年金が減額されてしまうケースがあるため注意が必要です。
年金の削減を免れるにはどうしたらいい?
公的年金の削減を免れるためには、給与収入(賞与、通勤手当等も含む)と厚生年金の金額を合計し、48万円以内に抑えること、また48万円を超えても可能な限り報酬を抑えることで減額を免れることができます。
中小企業の場合、給与の支払い方もある程度融通を利かせてくれることもあります。たとえば、給与で受け取る金額を減額し、代わりに退職金として払ってもらうのも一つの方法です。また、給与を下げ、代わりに企業型確定拠出年金やその他の企業年金制度などを活用することで、会社の経費でリタイア時に受け取れる資産をつくる方法もあります。
さらに、定年後は業務委託の形態を取り、社員としてでなく下請け業者として仕事を請け負うことでも、支給停止されずに受け取ることができます。
このように、給与の受け取り方を調整したり、一度退職して外注扱いになるなどの方法を取ることで、公的年金の受給額には影響を与えずに働いた稼ぎを手にすることができます。
もちろん状況によってこういった調整が難しい場合もありますが、大手企業でもフリーランスとしての働き方を推進している動きもあるため、会社と交渉してみるのもよいでしょう。
年金と収入のバランスを取って損をしないように工夫する
今回は在職老齢年金の仕組みにより、厚生年金が一部支給停止となってしまった事例を紹介しました。せっかく公的年金を受け取ることができる時期になったのに、年金が減らされてしまう仕組みは、定年延長や労働力の確保を課題とする現状において、時代に合わない制度ともいえます。
また、とくに収入が高い人は厚生年金部分の受給額も高くなるため、65歳以降に収入を得ている場合に在職老齢年金によって減額される金額も大きくなりがちです。原則として収入が高い人ほど高い年金保険料を支払う制度になっているのもあり、「長年高い保険料を納めてきたのに、なぜ受け取るときに減額されなければならないのか…」と、納得がいかないという人も多いことでしょう。
しかし、損をしないためには、制度の範囲内で年金と収入のバランスを取り、損をしないように工夫するしかありません。65歳以降も働く予定がある人は、まずはこの「在職老齢年金」という年金減額の仕組みがあることを知っておくことが大切です。
そして、現役世代と同等以上の収入を得る予定があるのか、公的年金が減額される可能性があるのかどうかを確認してみましょう。もし減額の可能性があれば、税制面なども加味しながら最適な給与の受け取り方や働き方を検討することをおすすめします。そうすれば、あとから後悔することなく、納得のいく年金の受け取りができるでしょう。
小川 洋平 FP相談ねっと
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