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なぜ「オッペンハイマー」はノーラン監督の集大成なのか 過去作からその理由を読み解く

ねとらぼ / 2024年4月14日 19時0分

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映画「オッペンハイマー」は絶賛上映中/(C) Universal Pictures. All Rights Reserved.

 「原爆の父」と呼ばれた理論物理学者ロバート・オッペンハイマーの生涯を描いた映画「オッペンハイマー」が現在公開中。重要なトピックのひとつが、クリストファー・ノーラン監督作品であることだ。

 その作家性がはっきりと刻印されており、これまでSFおよびフィクションを多く手がけてきたノーラン監督が、史実を描いた映画で「集大成」と呼べる作品を打ち出したことにも感慨深さがある。

 その理由を、ノーラン監督の過去4作品との共通点をあげつつ記していこう。なお、本記事では史実に基づく作中の人間関係に触れている他、記事の終盤では警告の後、「オッペンハイマー」本編ラストのネタバレに触れているのでご注意いただきたい。

●「メメント」との共通点:「時系列の操作」と「モノクロ」パートを挟む構造

 ノーラン監督の長編第2作にして出世作の「メメント」の最大の特徴は、時系列を「逆行して」描くこと。この構造により「10分間しか記憶を保てない主人公の記憶障害」の擬似体験ができた。さらに、過去から現在へと近づいていく「通常の時間の流れ」のパートが間に挟まれており、それは「モノクロ」映像で示されていた。

 そのように、映画の構造または物語に「時間」がからむことが、ノーラン監督の作家性のひとつ。今回の「オッペンハイマー」では時系列が前後するうえ、映画冒頭で「1.核分裂」とテロップが表示されるオッペンハイマーの視点のカラーのパートと、「2.核融合」と表示される原子力委員会の委員長ルイス・ストローズの視点のモノクロのパートに分かれていることも大きな特徴だ。

 オッペンハイマーは核分裂をエネルギーの起因とする原爆を生み出し、さらにストローズは核融合を起因とする水爆を推進したからこそ、それぞれ「1.核分裂」、「2.核融合」のテロップがつけられているのだろう。

 モノクロが用いられたのは、ノーラン監督がまさに「メメント」でのその手法を気に入っていたからだそうだ。映画の大部分でオッペンハイマーの「主観」を描きつつも、彼を恨み対立する立場となるストローズの視点を「客観」として示すためにも、このモノクロは確かな意義があったと思う。

●「プレステージ」との共通点:「2者の対立」と「罪」を描く

 前述したオッペンハイマーとストローズの対立で連想させるのは、「プレステージ」の主人公2人の関係性だ。

 人気マジシャンが脱出トリックの失敗で妻を亡くしてしまい、その原因がライバルにあると考えて復讐を誓う……というのは、水爆の推進に反対しただけでなく、自身を侮辱し(そう思いこみ)、結果として自身の立場を危うくさせたオッペンハイマーへ、個人的な恨みを募らせていた(と分析される)ストローズと重なっている。

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