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「血筋の価値」と近親結婚(上)王家の結婚について  その2

Japan In-depth / 2021年10月20日 15時33分

エジプトのファラオは、男性ならばもっぱらプトレマイオスを名乗り、女性はいくつかの名乗り方があるが、クレオパトラがもっとも一般的であったとされる。





余談ついでに、ファラオという称号も日本では一般に「王」とだけ訳されるが、当時の、つまり古代エジプト文明の世界観にあっては「現人神(あらひとがみ)」の方がふさわしいと考える学者もいる。なにかの「忖度」でもって、わが国ではこの訳語が浸透してこなかった、などということでなければよいのだが。





話を戻して、クレオパトラは実は黒人だった、と主張する人が最近とみに増えてきている。主として、米国でアフリカ系市民の人権問題と取り組んでいる人たちだが、つい最近も、クレオパトラが登場する映画の企画が公表され、アンジェリーナ・ジョリーが演じると発表された途端、各地で抗議デモまで組織された。白人女優が演じるのは歴史を歪曲する行為だと。





私自身は、アフリカ系米国人にもアフリカの黒人にも、なんの偏見も抱いていないし、むしろ彼らが受けている差別に対しては、同じ有色人種として憤りを共有していることを明記した上で話を進めるが、こうした「黒人至上主義」もまた、人種間の対立感情を煽る効果しかもたらさないのでは、と危惧している。





冒頭で「王家の純血」という表現を用いたが、古代エジプトの人々、わけても王族は、自分たちのことをアフリカ先住民(=黒人)とは区別していた。南方のヌビア人とは、長きにわたって同盟関係にあったが、壁画などを見てもエジプトの民とは異なる肌の色で描かれている。さらに言えば、現代のエジプト人でさえ、自分はアフリカ系黒人だと考える人はまずいない。





これもまた少々デリケートな議論になるのだが、彼らの肌はたしかに浅黒いし、黒人の定義にもよりけり、とまで言われたなら、さすがに反論は難しくなる。





だからと言って、白人女優がクレオパトラを演じるのはけしからん、というのは行き過ぎだろうとの考えを変えるつもりもない。もちろん彼女の埋葬場所が特定されてDNA鑑定まで行われ、その結果アフリカ系黒人だとの主張が正しいと証明されたなら、ただちに撤回して読者には謝罪するけれども。





もうひとつの問題と言うか、そもそもクレオパトラの美貌(伝承の通りだとして)と近親結婚には因果関係があるのか否かの問題を見てみよう。





こちらも結論から述べれば、いささか考えにくい話だ。





前述のように、こうした説は昔からあるが、一方では、近親結婚は弊害の方が大きい、とする考え方も、もっと昔からある。これについては遺伝学などが目覚ましい進歩を見せている昨今でも、データが少なすぎて断定的な評価は困難、ということであるようだ。





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