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「なんちゃってSUV」なぜ増加? 地上高低めの“SUV風“に需要アリ! 悪路走破性なしのSUVが支持されるワケ

くるまのニュース / 2024年3月6日 18時40分

昨今の都会派のSUVのなかには「なんちゃってSUV」と呼ばれるものもあります。SUV風の外観を備えたものの最低地上高が通常モデルと変わらないSUVのことをいいますが、そういったモデルが支持されています。

■「なんちゃってSUV」って何?

 今はSUVの人気が高く、新車として売られる小型/普通乗用車の30%以上を占めます。軽自動車を除くと、ミニバンを抜いて、コンパクトカーと並ぶ人気のカテゴリーとなりました。
 
 その一方で「なんちゃってSUV」という言葉も聞かれます。一体どういうものなのでしょうか。

 もともとSUVは、第二次世界大戦で活躍した「ジープ」など、悪路を走破できるクルマとして誕生しました。ジープは日本でも三菱がライセンス生産を行い、その過程で得た知見を使って、1982年に三菱「パジェロ」初代モデルが発売されました。

 パジェロは今では国内で販売していませんが、トヨタ「ランドクルーザー」やスズキ「ジムニー」は悪路向けのSUVとして設定されています。シャシ、足まわり、4WDシステムなどが乗用車とは大幅に異なり、滑りやすくデコボコの激しい悪路でも走破できます。

 こういった悪路向けとは逆に、「なんちゃってSUV」はSUV風の外観を持ったモデルのことを表現する言葉です。

 ただし今のSUVは、ランドクルーザーやジムニーなどを除くと、大半が乗用車と共通のプラットフォームや4WDシステムを使って開発されていて、2WDのSUVも多く、純粋な悪路向けは少数派になりました。

 その理由は、ランドクルーザーやジムニーでなければ走破できない悪路は、少なくとも日本の生活圏内にはほとんど存在しないから。

 加えて悪路向けのSUVは、ボディサイズの割に重たいことが多く、舗装路における走行性能、乗り心地、燃費なども悪化しやすいほか、開発や製造コストも高くなるため、近年のSUVは基本部分を乗用車と共通化するようになったのです。

 そのため、今では大半のSUVが「なんちゃってSUV」ともいえますが、一般的な線引きは、そこまで厳しくなく、乗用車系のプラットフォームや4WDシステムを使っても、最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)が200mm前後に達するトヨタ「RAV4」や日産「エクストレイル」、スバル「フォレスター/クロストレック」などは「なんちゃってSUV」は呼ばれません。

 一方、トヨタ「ヤリスクロス/クラウンクロスオーバー/クラウンスポーツ」、マツダ「CX-3」、ホンダ「フリードクロスター/フィットクロスター」など、最低地上高が170mm以下の車種は「なんちゃってSUV」と呼ばれることがあります。数値だけでなく、クルマのデザインや性格も都会的で、悪路をイメージさせにくいからです。

 それでも売れ行き好調な車種が多いのが事実です。

 例えばヤリスクロスは、2023年に1か月平均で約8400台を登録し、国内におけるSUVの新車販売1位になりました。クラウンクロスオーバーも約3200台が登録され、売れ筋価格帯が500万から600万円の高価格車としては堅調でしょう。

 つまりSUVの人気や売れ行きで大切なのは、迫力のあるフロントマスクや大径ホイールが生み出すカッコ良さというわけで、その上でSUVは、後席や荷室も広く、実用性も優れています。2ドアや3ドアのクーペと違って、カッコ良さのために実用性が犠牲になっていません。

 そしてSUVの本質的な人気もカッコ良さと実用性の両立にあり、「なんちゃってSUV」だから売れ行きが下がるとは限らず、優れた悪路走破力はSUVを売るための必須条件ではないのです。

■SUV風のモデルが最低地上高を高くしない理由は?

 悪路走破力を高めるための余裕のある最低地上高は、SUVのカッコ良さにも影響を与えます。
 
 例えばクロストレックは5ドアハッチバックのインプレッサをベースに開発されたSUVですが、最低地上高を200mmまで拡大したので、外観も存在感が強まってカッコ良くなりました。

 その一方でフリードクロスターは、最低地上高がほかのグレードと共通で、2WDは135mm、4WDは150mmです。外観のSUVらしさが控え目で「なんちゃってSUV」に含まれると言えます。

 最低地上高を少なくとも180mmくらいまでは高めないと、SUVらしさが希薄で「なんちゃってSUV」と呼ばれるわけです。

SUV風の「フリードクロスター」SUV風の「フリードクロスター」

 それならどうして、フリードクロスターなどは、最低地上高をもっと高くしないのでしょうか。せっかくSUV仕様を開発するのですから、最低地上高を高めて外観をカッコ良く仕上げ、悪路走破力も向上させれば良いでしょう。

 この点について、フリードの開発者は次のようにいいます。

「最低地上高を高める作業は簡単ではありません。デコボコを乗り越えやすいとユーザーが本格的な悪路に入り込む可能性もあり、それに対応するため、ボディや足まわりも強化しなければなりません。

 また最低地上高を高めると、横滑り防止装置や衝突被害軽減ブレーキなど、安全面を始めとするさまざまな装備のセッティングも変わります」。

 要はSUVにアレンジするのが困難なため、外装パーツを加えるだけで、最低地上高などを変えない「なんちゃってSUV」も多いのです。

 見方を変えればクロストレックが最低地上高を高められたのは、ベースの「インプレッサ」を含めて根本的に悪路走行へ対策が施されているからです。

 そこに安全装備などの入念な開発も行ったことで、最低地上高に200mmの余裕があるクロストレックを開発できました。

 そしてSUVは、多様性のあるカテゴリーです。既存の車種に外装パーツを加えただけの派生的なSUVから、ランドクルーザーのような本格的な悪路走破力を備えた車種まで何でもアリです。実は「なんちゃってSUV」が成り立つこと自体、SUVの立派な特徴といえるでしょう。

 この多様性により、SUVはいろいろな車種をベースにして、都合良く魅力的にアレンジできます。どんな料理でも美味しくする調味料、トッピングのようなものです。

 しかも今後は、電気自動車が増えます。床下に駆動用リチウムイオン電池を搭載するため、天井と床の高いSUVは、電気自動車とは特に親和性が高いです。

「なんちゃってSUV」も含めて、SUVは今後さらに発展して、クルマの世界を一層魅力的にしてくれるでしょう。

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