なぜバスには「ヘッドレスト」が無い? 身体を守る“安全装置”なのに…どうして!? 理由を「国土交通省」に聞いた!
くるまのニュース / 2024年4月13日 9時10分
交通事故に遭った際に、むち打ちなどを防ぐ「ヘッドレスト」。しかし乗用車では義務化されているにも関わらず、路線バスでは設置されないことも少なくありません。なぜなのでしょうか。
■バスには「ヘッドレスト」が無い!? その理由は
乗用車の座席には、後頭部が当たる場所に「ヘッドレスト」が設置されています。
この「レスト」と言う言葉に「rest(休憩)」をイメージする人もいるかもしれませんが、実際のところは「restraint(拘束)」という言葉が省略されたもの。
つまりヘッドレストとは「頭を拘束する装置」で、シートベルトと同じように交通事故に遭ったときに身体を保護し、衝撃で首が後ろに倒れてむち打ちを起こすのを防いで被害を小さくするのです。
そんなヘッドレストの主流となる形式は、シートに差し込んで位置を上下に動かすことができるタイプ。乗員の座高に合わせて適切な位置に固定することが可能です。
適切な位置に調整する際は、ヘッドレストの頂上部と頭の頂上部が同じ高さになるように調整するのが一般的で、眼鏡をかけている場合は、眼鏡の“つる”とヘッドレストの中心部が同じ高さになるように合わせると問題ありません。
座高やクルマの種類によっては調整しづらいかもしれませんが、安全のためにも可能な限り理想の位置に設置するのがポイントです。
また、適切なヘッドレストの位置で正しい運転姿勢をとれていれば、自然に頭とヘッドレストの隙間がなくなるため、頭とヘッドレストの間に隙間が無い方が、正しい運転姿勢をとることに成功しているとも言えます。
そんなヘッドレストですが、乗用車では基本的に外すことは認められておりません。
もしヘッドレストを外していると、道路運送車両の保安基準第22条4号の違反となり、罰則こそはないものの保安基準に適合していないクルマとみなされ、厳重注意されることがあります。
さらに、事故に遭った場合には保険が適用されない可能性もあるため、ヘッドレストは必ず設置するのが望ましいとされています。
■乗用車で重要な「ヘッドレスト」バスにはそもそも無い?
このようにヘッドレストは、交通事故に遭った際にむち打ちなどを防ぐ重要な保護装置で、基本的に外すことは認められていませんが、その一方で「路線バス」に乗ると運転席にヘッドレストの無いモデルを多く見かけます。
メーカーの独自判断で「ヘッドレスト」を装備しているバスもある(※画像はイメージ)
路線バスの運転席にヘッドレストが設置されていない理由について、国土交通省 車両基準・国際課の担当者は以下のように話します。
「路線バスは、もともとスピードがあまり出ないため、設置義務がありません。
また、路線バスやトラックなどの普通貨物にヘッドレスト設置が義務づけされない大きな理由として、後突などの交通事故の際に、大きい方のクルマが被害に遭う確率が全体の2割ほどであることが挙げられます。
これらの理由から、ヘッドレストを義務づけしても効果がそれほど大きくないため、設置しなくても良いことになっているのです」
つまり、路線バスや普通貨物については、座席の協定規則という国連基準(路線バスなどの運転席における基準やトラックなど普通貨物の座席の取り付け強度の基準)を採用しているため、ヘッドレスト設置義務が無いとのこと。
ただしヘッドレストの設置義務は無いものの、路線バスを製造しているメーカー側の独自判断からヘッドレストを付けているモデルも存在します。
ヘッドレストを設置しないことによる安全性への影響については、先述の国土交通省 車両基準・国際課の担当者は以下のように説明します。
「ヘッドレストがなくても安全性が下がることはございません。
バスやトラックなどはどちらかというと加害者側になることが多いため、加害しないように規制する基準は多くあります。
これを強制基準と言って、負担を強いるものなのですが、一方でヘッドレストに関しては、負担をしてまで得られる効果が小さいため、任意でよいということになっています」
このように、路線バスでは必ずしもヘッドレストを設置する義務はなく、安全性が下がるわけではないとのことです。
※ ※ ※
しかし、これはあくまでも路線バスや普通貨物に限った話です。
乗用車では2012年の法改正により、運転席のみならず助手席にも設置の義務が生じているため、基本的に外して走行することは許されていません。
どれだけ安全運転を心がけていても、後続車に追突されてしまうことはありますし、後突されると“むち打ち”になってしまう可能性もあるため、万が一の交通事故に備えて、乗用車に乗る際は正しい位置にヘッドレストを設置するように努めましょう。
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