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社説:ギャンブル依存症 日本も本腰を入れて対策を

京都新聞 / 2024年4月16日 16時0分

 ギャンブル依存症の怖さを浮き彫りにした衝撃的な事件だ。

 米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手の元通訳、水原一平容疑者が、ロサンゼルスの連邦地検から銀行詐欺容疑で訴追された。スポーツを対象とする違法賭博の借金返済のため、大谷選手の口座から胴元側に1600万ドル(約24億5千万円)以上を不正に送金したとされる。

 水原容疑者は出廷後、保釈された。ギャンブル依存症の治療を受けることが条件の一つとなった。問題の深刻さと対策の広がりを示すものだろう。日本でも人ごとではあるまい。

 裁判資料には、賭博の泥沼から抜け出せず、うそを重ねた経過が詳細に記されている。

 水原容疑者は違法賭博を始めた後、大谷選手の口座の連絡先を自身の電話番号に変更した。大谷選手と偽って銀行側の質問に答え、オンライン取引で本人や代理人らに気付かれぬよう払い込みを続けた。

 合法の賭博であれば実際に金銭を支払わないと賭けられないが、違法の場合は後払いが認められる。巨額の借金を生む「わな」にはまったといえる。

 胴元に対しては信用で賭け金の限度額を引き上げる手法を「これが最後」と懇願して多用した。今年1月までの2年余りで1日平均25回も賭け、1回当たり約200万円をつぎ込んだ。損失総額は約62億円に上るという。専門家は、依存症の典型的な行動と指摘する。

 担当検事は「大谷選手は事件の被害者だ」と強調し、大谷選手は地元メディアに「これで一区切りとしたい」と述べた。

 水原容疑者がのめり込んだオンライン賭博は手軽に賭けられ、スポーツ界ではファン獲得や各州の増収を目的に広がっている。一方で依存症の懸念が根強く、カリフォルニア州では、住民投票でオンラインのスポーツ賭博合法化が否決された。

 日本では3年前の国調査で成人の約2%、196万人がギャンブル依存症の疑いとされた。

 公営ギャンブル以外、刑法で賭博を禁じており、オンラインで海外にアクセスして賭けても違法だ。しかし、ネット上では推奨サイトが乱立している。

 2月には京都府警が、海外サイトのオンラインカジノを運営したとして男女7人を初摘発したが、氷山の一角だろう。

 政府は2018年、カジノを解禁する統合型リゾート(IR)整備法を制定し、大阪では30年開業へ計画が進む。ギャンブル依存症対策が大きな課題だが、規制の緩さが問題視されている。治療や相談の拠点開設も一部の地域に限られる。

 スター選手の公私を支え、注目を浴びた専属通訳だった。その信頼の悪用に至った事件を重く受け止めたい。オンライン賭博の規制強化に加えて、ほぼ民間頼みとなっている依存症対策に、国は本腰を入れるべきだ。

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