「ラストはテロップのみ」「3行で補足」 最終話を文章で押し切った作品
マグミクス / 2024年4月20日 18時10分
■大事なラストシーンなのにテロップで終了?
物語において「最終話」は、その作品の評価を決める重要な部分であることは言うまでもありません。数ある作品のなかには唐突、強引に完結したりことで、物議を醸したマンガやアニメも存在します。
例えば「夢オチ」で積み上げてきた物語のすべてを回収するという方法は有名で、ご法度な終え方と思う人も少なくないでしょう。ほかにも、「この終わり方は強引なのでは」といった声があがる作品も数多くあります。今回は、「あらすじやテロップなどで押し切ったアニメやマンガの最終話」を振り返りましょう。
●TVアニメ『蒼天航路』
1994年から2005年まで「モーニング」にて連載された『蒼天航路』(作画:王欣太、原作:李學仁)は、全36巻で発行部数1800万部を超えるヒット作です。 2009年にはTVアニメ化もされ、全26話が日本テレビ系で放送されました。
同作は「三国志」で欠かせない存在である、魏国を作った「曹操」の活躍を描いています。問題となる最終話「心の闇」では、曹操と袁紹が互いの命運を賭けて激突した「官渡の大戦」が描かれるのですが、最後にもかかわらず、戦いの場面が終盤まで続きます。
エンディングまで残り数分のところで、曹操は相手軍の指揮をとっていた文醜を斬首し、戦いに決着をつけました。そして、その後に因縁がある関羽と張飛が交戦する場面になったかと思いきや、すぐに「関羽を得た曹操は 官渡に戦場を移し 袁紹の大軍に挑む」と黒背景にテロップが流れ始めます。さらに、曹操による動向の説明がテロップで続き、最後に「破格の英雄 曹操は 蒼天を――駆け抜けていく」と締めくくって、エンディングを迎えるのでした。
視聴者からは「最終話の消化不良感は否めない」「面白かっただけに残念なラストで悔やまれる」と、今も語り継がれる作品になっています。
■文字が多すぎて、もはやマンガじゃない?
●マンガ『海皇紀』
『海皇紀 超合本』1巻(講談社)
マンガでも結末を絵で描き切るのではなく、文章の説明で補って終えたものもあります。1998年から2010年まで「月刊少年マガジン」にて連載された『海皇紀』(作:川原正敏)の最終話も、後半部分では挿絵と長文の説明によって構成されていました。
同作は、陸に領土を持たず、海に覇を唱える海の一族である男「ファン・ガンマ・ビゼン」を主人公とした海洋ファンタジー巨編で、海と大地を巡るファンの戦いを描いた物語です。大国や内紛、魔導士などの戦いを12年にも及んで描かれた大作で、その最終話は90ページ越えの大ボリュームでした。
結末が描かれた後、主要キャラの後日談が語られ、挿絵と説明だけで事実が明かされていきます。後半部分はほぼこの構成になっており、初めて見た時はマンガというよりも絵本に近いものを感じました。息子よりも長生きしたファンの母親マリシーユ・ビゼンの最期は、比較的長いページを割いて描かれています。
この大胆な描き方に関しては賛否が分かれ、なかには「ファンが死後『海皇』と諡号(しごう)されて本の名前を『海皇紀』とするという流れは良いんだけど、すべて文字による説明で明らかになったので、唐突感は拭えなかった」「海皇紀の最終話は文字だらけで、もはやマンガじゃない」といった声もあがっています。
しかし、それでも「大河ドラマのようなマンガ」「一生で一冊しか読めなかったら『海皇紀』を選ぶ」など、名作として評価する読者が多いのも事実です。
●マンガ『悪徒-ACT-』
マンガの最終話で「強引に文章の説明を入れた」作品といえば、2008年に「週刊少年チャンピオン」で連載された『悪徒-ACT-』(作画:横島一、原作:猪原賽)は見逃せません。
同作は主人公の港陽虎が親友・益龍の形見「ACT-タイガー」に変身できるスカジャンを着こみ、親友の死の理由を探るため、屑を社会的に抹殺する機関「更生省」に闘いを挑むという物語です。
最終話の1話前のラストでは強敵が登場したかと思いきや、最終話ではすでに、ある程度戦いが進んだ後からの話が描かれます。その唐突な展開を補足するため、ページ左に3行にも及ぶあらすじが書かれていました。
読者からの人気を得ることができなかったために打ち切りが決定し、苦肉の策として「あらすじ3行」という方法を取り入れたのだと言われています。そして、ラストで戦いの決着がつかないままに『悪徒-ACT-』は完結しました。
この荒業はネット上で話題になったこともあって有名なラストで、「度肝を抜かれた」「読み抜けがあったかと思って、すぐに前話を読み直した」「リアルタイムで読んでたけど、事前に最終話と告げられてなかったから、唐突に終わりと知った時にかなりショックだった」といった声が出ていまます。
その後に発売された完全版のコミックスでは、あらすじで省略した部分が本編で描かれると思いきや、さらなる長文で、より細かく補足されており、絵による描写の追加を期待していたファンはショックを受けたようです。
(LUIS FIELD)
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