「日経平均4万円台を回復」はそう簡単にはいかない…日本株相場を取り巻く懸念材料とは?
MONEYPLUS / 2024年5月3日 11時30分
「日経平均4万円台を回復」はそう簡単にはいかない…日本株相場を取り巻く懸念材料とは?
イスラエルによるイランへの報復攻撃のニュースで日本株相場が急落した4月19日から、間もなく2週間が経ちます。同日に日経平均は一時1300円余り下げ、3万7000円の大台を割り込む場面もありました。その後、株式相場は落ち着きを取り戻し、日経平均は3万8000円台まで値を戻しています。
しかし、この先も順調に戻りを辿り、4万円台を回復できるかというと、そう簡単にはいかないだろうというのが筆者の見方です。というのも、ここにきて日本株相場を取り巻く懸念材料が目立ってきたからです。
いまの米国株は非合理的な価格形成になっている
まず海外の環境ですが、先日、市場を揺さぶった中東情勢は足元では小康状態にありますがいつまた緊張が高まるかはわかりません。ただ、それよりも懸念されるのは米国株市場の動向です。
米国株は4月に入ってから大きく値を下げましたが、その理由は第一にFRB(連邦準備制度理事会)による利下げ期待の後退による長期金利の上昇です。ここで気になるのがナスダック総合指数のほうがダウ平均よりパフォーマンスがよいということです。前述の通り、米国株が調整した理由が金利上昇なら、金利上昇に弱いはずのハイテク成長株を多く含むナスダックのパフォーマンスがよいというのは理解に苦しみます。端的にいって、いまの米国株は理屈に合わない、非合理的な価格形成になっていると思われます。
ナスダックのパフォーマンスをけん引しているのはテスラ(TSLA)やアルファベット(GOOGL)などハイテク大手の株価急騰ですが、これらは決算発表が材料となった短期的反応であると考えられます。そうであるなら、それらが落ち着けば、また長期金利上昇が重荷となって株価は弱含むでしょう。
案の定、4月30日には米国株式市場がまた大きく下落しました。ダウ平均は前日比570ドル安と急落、今年最大の下げ幅を記録しました。1〜3月期の米雇用コスト指数が前期比1.2%上昇と市場予想(1.0%)を上回り、長期金利が上昇したことが背景です。10年債利回りは前日の4.61%から4.68%に上昇し、政策金利に敏感な2年債利回りは一時5.04%に上昇、2023年11月中旬以来の高水準を付けました。ナスダック指数は前日比325ポイント安と大幅に下落。前日に急伸したテスラの下げが目立ちました。
結局、米国のインフレ懸念が払しょくされ長期金利が明確にピークアウトするまで米国株の調整は終了しないと思われます。それはむろん、日本株にとっても足を引っ張り続ける悪材料です。
日本ではデフレに逆戻りするリスクも
国内にも懸念材料があります。相次ぐ値上げによる消費者の「値上げ疲れ」、それが買い控えや節約志向につながっているという点です。4月30日に帝国データバンクが公表した「食品主要195社」価格改定動向調査によると、主な食品メーカー195社における家庭用を中心とした5月の飲食料品値上げは417品目で前年同月の837品目に比べて420品目・50.2%減と、5カ月連続で前年同月を下回りました。値上げの動きは完全にピークアウトした感があります。
帝国データバンクによると、物価上昇に対し実質賃金の伸びが追い付かないことを背景に、店頭では安値攻勢が目立つプライベートブランド(PB)製品で購買量が伸長するなど節約志向は根強いといいます。同調査は、量販店やコンビニなどでは一部製品を値下げする動きもあるなか、前年に比べてナショナルブランド(NB)品を中心に大幅な価格の引き上げが難しい局面を迎えていると分析しています。
これが企業業績にも反映されてきて、すでに決算発表が一巡した2月決算の小売業では売上高の伸び率が前期の半分に、営業利益の増益率が前期実績の15%から5%と3分の1に減少する見通しです。ただ、伸び率は落ちても利益率はまだ維持できるのが救いです。これまでは原材料高を販売価格に転嫁することで高い利益を確保できましたが、今後はそれができないとするとだんだん利幅がとれなくなってくる恐れがあります。
また、こういう動きが広がれば、せっかく定着しつつあるデフレ脱却が危ういものになってしまいます。日本株が2023年度、記録的な上昇を演じた要因のひとつが、デフレ脱却でした。長年、日本経済の元凶であったデフレが終焉したというのが大きな材料でした。それが、またデフレに逆戻りするリスクが出てきたとなれば、日本株の上値が重くなるのも当然でしょう。
さらに気がかりなのは日銀の利上げです。市場では7月とか10月とかいわれているようですが、あくまで物価と賃上げの好循環があってこそ。そのココロは実質賃金がプラスになって消費がしっかりしてディマンドプルのインフレになるということです。
そうではなく、数字のうえでCPIが2%超えたなど、いっても意味がありません。消費者の買い控えや企業が値上げをためらうような環境なのかを判断材料にするべきです。それを見ないで金融正常化の路線ありき、で走ると、景気腰折れにつながりかねません。それが国内の大きな懸念です。こうしてみると日本株はまさに「内憂外患」の状況で、当分上値が重いと思われます。
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(広木 隆)
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