「コロナ対策にも有用」牛乳を飲むなら6種類のうちどれを選べばいいか
プレジデントオンライン / 2021年4月16日 9時15分
■17年間の追跡調査で判明、牛乳と脳の良い関係
およそ6000年前から人類が親しんできた牛乳だが、「人の体に悪影響を及ぼす」と有害説がたびたび取り沙汰されてきた。例えば「牛乳を飲みすぎると骨粗しょう症になる」「アトピーや花粉症が増えたのは牛乳のせい」「超高温殺菌牛乳は体に悪い」などである。
牛乳は体に良いのか、悪いのか。
結論からいえば、日本人にとって牛乳が体に悪いという根拠はない。
“日本人にとって”と記したのは、実は海外では牛乳に関して膨大な論文があり、乳製品の過度の摂取はがんを発症するという見方が強い(国内では「牛乳摂取とがん発症リスク」との関係に対して「データ不十分」の扱い)。また毎日何杯も飲めば、脂質の取りすぎにもなってしまうため、私も“大量に”はお勧めしない。
しかし、少なくとも「一日一杯の牛乳」であれば、子供から大人まで「脳と体」の健康を維持するため飲んだほうがいいといえるだろう。
■コロナ禍の今、牛乳を積極的に飲んだほうがいいワケ
『体を悪くする やってはいけない食べ方』(青春出版社)の著者で、管理栄養士の望月理恵子さんはこう話す。
「よく知られるカルシウムだけでなく、必須アミノ酸をバランスよく含むタンパク質、皮膚や粘膜を健康に保ち、病気に対する抵抗力を強めるビタミンA、ビタミンB群なども含みます」
さらに、コロナ禍の今、取るといい理由として、「牛乳には、タンパク質や、その消化によって生じるペプチドに、抗菌作用や抗炎症作用および抗アレルギー作用など様々な免疫調節作用があることが報告されています」という。
■「牛乳を毎日飲む」と「認知症の発症率が低下する」
そして多忙なビジネスマンにもうれしい話が。牛乳は、生活習慣病の予防にもなる。尿酸の排出を促し、尿酸値も下げる。その明らかな仕組みはまだわかっていないが、高尿酸血症などの生活習慣病予防になることが世界的に知られている。
「牛乳は体内への吸収が緩やかで、食後に血糖値を急激に上昇させない(低GI)食品です」と望月さん。
食事が炭水化物中心であったり、夜食が必要な人は一部分を牛乳に置き換えることで、必要な栄養素を補給しつつ、糖尿病をはじめとした生活習慣病になりにくい体になるだろう。
脳の健康を維持する役割もある。「牛乳を毎日飲む」と、「認知症の発症率が低下する」という国内の報告が多数あるのだ。
代表的なものは、福岡県久山町に住む認知症でない住民(60歳以上)を対象に、1988年から17年間追跡した久山町研究。牛乳・乳製品の摂取量で住民を4つのグループに分けて比較したところ、アルツハイマー型認知症の発症率は「牛乳や乳製品の摂取量が増加するほど低下する」という結果になった。
だが、これは「飲めば飲むほど認知症の予防効果が高まる」と示されたわけではない。冒頭に記したように多量に飲むのではなく、他の乳製品と組み合わせながらこまめに取ったほうが健康にプラスになるだろう。
■市販されている「牛乳」は大きく6種類もある
さて一口に牛乳といっても、市販されているものは大きく6種類に分けられる。商品パッケージに記載される「種類別名称」で確認できることを知っておきたい。再び望月さんの話。
「種類別名称の項に『牛乳』と記載される商品は、生の乳(生乳)を加熱殺菌しただけのもので、成分無調整。一方で生乳から水分、乳脂肪分などを除去して成分濃度を調整したものが『成分調整牛乳』。成分調整牛乳のうち、乳脂肪分を除去したものはその除去割合により、『低脂肪牛乳』『無脂肪牛乳』と表示されます」
加工乳と乳飲料を除いた、牛乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳は“生の乳100%”。その中でも、種類別名称に「牛乳」と表記されたものは、成分無調整タイプで、牛乳本来の甘みとコクが最も感じられるはず。
■殺菌温度で栄養素は変わらないけれど
また、パッケージの「乳脂肪分」や「無脂乳固形分」の数値を見れば“濃さ”の見当がつく。
「乳脂肪分の項に3.8%と記載されていたり、3.8牛乳という名称の牛乳は、牛乳100グラム中に3.8グラムの乳脂肪分が含まれるという意味です」(望月さん)
無脂乳固形分とは、牛乳から水分と乳脂肪分を除いたタンパク質や糖質、ビタミン、ミネラルなどの成分を指す。「栄養だけでなく、風味にも影響を与える成分」と覚えておこう。
■温めても栄養素の減少や吸収の悪化はない
ミルク料理研究家で管理栄養士の奥泉明子さんは「味は年間を通して変化します」と話す。実は、冬のほうが牛乳に多くの乳脂肪分が含まれるのだ。
「夏場は牛も水分を取りますから薄くなり、冬は濃くなります。牛は本来、寒い地域に生息する動物なので、冬は元気なんですよ。今の季節はおいしい牛乳といえますね」
「殺菌温度」も風味に影響を与える。
「牛乳の後味、どろっとしているのが残るのが嫌な人は、低温殺菌牛乳を選ぶといいでしょう。超高温殺菌牛乳と比べて、70~80度で殺菌した牛乳のほうがさっぱり飲めます。ただ高温加熱だからといって栄養価や吸収率は一切変わりません」(奥泉さん)
そう、ここを強調しておきたいのだが、牛乳は熱に弱いビタミンCが含まれていないため、温めても栄養素が減ったり吸収が悪くなるようなことはない。殺菌方法によっても栄養素に違いが出ることはないのだ。ただし、生卵がゆで卵に変わるように、加熱殺菌によって牛乳に含まれるタンパク質が変性するため、殺菌方法によって風味が変わりやすい。
■一回に飲む量を100mlに抑えるとゴロゴロしづらい
外出自粛が続き、骨が弱くなっている可能性があるため「カルシウムを日々しっかり補給してほしい」と、奥泉さんは呼びかける。
乳製品の中でヨーグルトは、腸内環境を整える「乳酸菌」が含まれるのがメリット。一方で牛乳の良さというと「飲みやすさ」が挙げられる。それに伴い、多くのカルシウムを摂取しやすいのだ。ヨーグルトは1カップ100グラム程度で、およそ120ミリグラムのカルシウムを含むが、牛乳の場合、コップ1杯(約200ミリリットル)で、約230ミリグラムが取れる。
「ただカルシウムは飲んだ分だけ一気に吸収できるわけでないので、毎日の継続と、一日の中でも分散させて乳製品を摂取するほうがいいでしょう。特に牛乳を飲むとおなかが張ったり、下痢をしてしまう人は、乳製品に含まれる乳糖分解酵素が十分に働かないといわれますが、一回に飲む量を100ミリリットルに抑えると、おなかがゴロゴロしにくいことがわかっています」(同)
味の好みや胃腸の調子で好きな牛乳を選び、温めても冷たいままでもOK。“一日一杯”を習慣にしよう。
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ジャーナリスト
1978年生まれ。「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『週刊文春 老けない最強食』(文藝春秋)、『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(光文社新書)など。
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(ジャーナリスト 笹井 恵里子)
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