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「大正漢方胃腸薬」「タケダ漢方胃腸薬A」は問題ないが…熟練の薬剤師が高血圧の人に服用を勧めない胃腸薬

プレジデントオンライン / 2024年4月28日 7時15分

■市販薬の便利さとリスク

サプリメント摂取による健康被害が問題になっているが、市販薬もまた自ら購入できる便利さと、副作用を起こすリスクが隣り合わせだ。今号ではビジネスパーソンの利用頻度が高い、風邪薬と胃腸薬の飲み方を紹介したい。

「のどの痛みや腫れ、咳、鼻炎、そして発熱といった、いわゆる風邪症状の8割近くはウイルスが原因によるもの。これは抗生物質では治りません」と、東丸貴信医師(平成横浜病院総合健診センター長)は解説する。

「基本的には自らの免疫力で治すものなのですが、私は我慢しないで早めに薬を服用したほうがいいと考えます。鼻炎にしてものどの痛みにしても、ベースには炎症があるので、放っておけば広がる恐れがあるからです」

風邪の初期であれば葛根湯などの漢方薬、または総合感冒薬を勧める。

「ただしイブプロフェン(解熱鎮痛成分)が主成分の総合感冒薬は、急性心筋梗塞などのリスクがあり、咳や痰を止める成分も血圧を上げる可能性がありますので、持病のある方は注意してください。穏やかな解熱作用で、比較的安全性の高いアセトアミノフェン(同)が含まれる総合感冒薬のほうがいいでしょう」(東丸医師)

アセトアミノフェンは高齢者や小児でも服用できるのがメリットだが、肝機能の数値が悪かったり、肥満気味な人は気をつけたい。市販薬に詳しい薬剤師の堀美智子氏(医薬情報研究所/エス・アイ・シー)はこう話す。

「アセトアミノフェンは長期の服用で肝機能障害が起きる恐れがあるので、アルコールを過量に飲む方は薬剤師に相談したほうがいいでしょう。低栄養状態の人、逆に太っている方も脂肪酸の処理によって多くなってくる酵素の影響で肝臓の機能が低下しやすいので、やはり気をつけてほしいですね」

■重大な副作用につながる恐れがある

一方で効果が高い解熱鎮痛剤といえばロキソプロフェン。こちらは腎機能に悪影響が出やすいのがデメリットだが、強い痛みに効き、炎症をしっかり抑える。次ページに解熱鎮痛剤の特徴をまとめたので参照してほしい。

東丸医師の提案のように、さまざまな風邪症状があるなら総合感冒薬をすぐに服用して1〜2日を目処に治すのも一案だ。けれどもつらい症状だけ、それを重点的に抑える薬の飲み方でもいい。

のどの痛みや発熱、頭痛、関節痛には前述した解熱鎮痛剤、鼻水なら抗アレルギー薬、咳には鎮咳去痰薬、といった具合だ。

50年以上の薬剤師経験をもつ西澤啓子氏(西沢薬局)は「基本的に市販薬の外箱に記載される効能に症状を改善する成分が含まれていると考えればいい」と説明する。

注意点としては「風邪薬」と「解熱鎮痛剤」の併用を避けること。特に総合感冒薬によく含まれるアセトアミノフェンが重複し、国の規定量である一日の摂取上限900ミリグラムをオーバーして重大な副作用につながる恐れがある。

■異なる効果で痛みを和らげる胃腸薬

風邪薬と並んで、種類が多いのが胃腸薬だ。数多くの製薬会社から、ざっと数百種類以上販売されている。「胃は食べものを消化する機能と、消化する強い酸から自分を守る機能の両方をもつ。そのバランスが大切」と、東京薬科大学客員教授の渡辺謹三氏。

「ストレスや食べすぎ、飲みすぎで防御する力が弱まれば潰瘍などにつながりますし、消化する機能が低下すれば食べ物が胃に長くとどまり、胃もたれや膨満感に。市販薬では両方の機能を補強するものが多いですが、どちらの働きに重点を置いているかを考えると選びやすいでしょう」

佐藤製薬が販売する商品を例に挙げる。胃荒れタイプに適すとされる「イノセアグリーン」は、胃粘膜の保護・修復を助ける成分が主。胃もたれや食べすぎ用の「ハイウルソ」は消化を促進する成分が多く含まれる。

「胃荒れを解消する粘膜保護タイプは食前や食間に、消化促進タイプは食後に服用の場合が多い」(渡辺氏)

胃腸薬には、急な胃の痛みを抑えるタイプもあるが、これは根本解決にならないため症状が出たときだけの頓服的な利用にとどめたい。

解熱鎮痛剤の成分と特徴、タイプ別の胃腸薬
筆者作成

前出の西澤氏は「胃腸薬の購入時に高血圧でないかを確認する」という。

「もたれ感がすっきりする制酸剤を含む胃腸薬を服用すると、塩分摂取になってしまうからです。制酸剤の炭酸水素ナトリウムが胃の中で分解されて塩分になり、多く含まれるものでは一日に食塩1.4グラム相当にも。制酸剤は人気の『太田胃散』や『キャベジンコーワα』など多くの胃腸薬に含まれます。血圧が気になる人は『大正漢方胃腸薬』や『タケダ漢方胃腸薬A(※)』など塩分フリーのものがいいでしょう」

※編集部註:『タケダ漢方胃腸薬A』は親会社が変わったことなどから2021年に販売が中止され、現在は『ストレージ タイプI』として販売されている。

■薬剤師などに相談して情報とセットで買う

市販薬を服用するうえで、“つらい症状は本当にそれが原因か”を疑う姿勢も必要だ。

「ある症状には複数の原因が考えられるのです。自分では胃が痛いと思っていても、狭心症の痛みは放散痛といって歯や背中、肩、胃に現れることがありますし、急性膵炎でも胃が痛くなります。咳が続くときも、風邪や肺の病気以外に逆流性食道炎の可能性があります。降圧剤の服用で副作用として咳が出ることもあるんですよ」(西澤氏)

病院を受診するべきか、市販薬で治るのかを判断するのが薬剤師の役割でもあり、「ぜひ薬局にいる私たちを利用してほしい」と西澤氏は言う。

堀氏も、「さまざまなリスクがある中で、市販薬を選ぶのはとても大変です。私は薬だけを買うのではなく、薬剤師や登録販売者に相談して“情報とセットで買う”ことを勧めています。市販薬といえども軽くて安全ということはなく、薬の飲みすぎ、長期の連用にくれぐれも注意を」と強調する。

「例えば風邪薬を服用し、のどはカラカラ、鼻がカピカピに乾いたら、それは薬の飲みすぎです。のどや鼻は少し潤っているくらいがいい。のどの渇きを感じたら、のど飴の出番。薬のやめどきを考えることも大切です」

ロキソプロフェンやアセトアミノフェンを含む風邪薬や解熱鎮痛剤を服用する際は、稀だが「スティーブンズ・ジョンソン症候群」という重大な副作用が起こる。

初期症状は多量の目やに、まぶたの腫れ、目の充血など、「目に異常が現れることが多い」(西澤氏)という。その段階で服薬をやめ、至急医療機関の受診を。実際に市販薬でこれが起き、失明や死に至った事例がある。

入院するような重大な副作用に陥ったときのため、薬を購入したレシートを保管しておきたい。医師に副作用と診断されれば医薬品副作用被害救済制度が利用できる。薬の外箱に購入レシートを貼っておき、いざというときに薬局にもっていけば必要な販売証明書を発行してくれる。薬を選ぶ目を培い、服用後の体の観察を忘れずに。

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笹井 恵里子(ささい・えりこ)
ジャーナリスト
1978年生まれ。「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(光文社新書)、プレジデントオンラインでの人気連載「こんな家に住んでいると人は死にます」に加筆した『潜入・ゴミ屋敷 孤立社会が生む新しい病』(中公新書ラクレ)など。新著に、『野良猫たちの命をつなぐ 獣医モコ先生の決意』(金の星社)と『老けない最強食』(文春新書)がある。ニッポン放送「ドクターズボイス 根拠ある健康医療情報に迫る」でパーソナリティを務める。 過去放送分は、番組HPより聴取可能。

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(ジャーナリスト 笹井 恵里子)

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