1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

必ずしも「上昇志向」をもつ必要はない…自分にふさわしい生き方がわかる「人間の欲求8類型」を解説する

プレジデントオンライン / 2024年4月29日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Jacob Wackerhausen

充実した人生を送るにはどうすればいいのか。北海道大学大学院の橋本努教授は「人間の欲求は8つの類型に整理できる。これを知れば、自分にふさわしい生き方がわかる」という――。(第1回)

※本稿は、橋本努『「人生の地図」のつくり方』(筑摩書房)の一部を再編集したものです。

■なぜ「正反対の人」に惹かれてしまうのか

人間というのは不思議な存在で、自分とは正反対の人に惹かれてしまうようである。

例えば音楽が趣味で、ショパンを敬愛している2人がいたとしよう。1人は思考型の男性で、もう1人は感情型の女性である。2人は相思相愛の仲であるが、男性はこの女性が、マズルカとワルツの区別もつかないのに、どうしてショパンが好きなのか分からないと思っている。反対に、この女性は、音楽そのものを享受することが大切であって、この男性のように、分類や解説をすることは本質的なことではないと思っている。

2人は、まったくタイプが異なるのだけれども、しかし互いに惹かれあっているようだ(*1)。あなたは、どのようなタイプの人間だろうか。岡田斗司夫著『人生の法則 「欲求の4タイプ」で分かるあなたと他人』(朝日新聞出版)は、人間の欲求のタイプを、「注目型」「司令型」「理想型」「法則型」の四つに分けて考察している。

「注目型」は、注目されたいタイプである。「司令型」は、指導力を発揮したいタイプである。「理想型」は、理想を追求するタイプである。そして「法則型」は、ルールを重視するタイプである。一見するとこれらのタイプは、脈絡のない分類に見えるかもしれない。けれども、岡田が独自に作成した「判定テスト」に答えていくと、自分がどのタイプの欲求をもった人間なのかが判明する仕組みになっている(*2)。とても興味深い分析である。

(*1)河合隼雄(2009)『ユング心理学入門 〈心理療法〉コレクションI』岩波現代文庫、32-33頁
(*2)判定テストの改訂版は、以下のサイトを参照。
http://blog.freeex.jp/archives/51332751.html?ref=popular_article&id=3993657-22234011

■32個の質問で4つのタイプに分類される

岡田の判定テストを、大まかに紹介してみよう。最初に、20の問いに答えることが求められる。どれも面白い問いであるが、これらの問いに対する回答によって、「他者志向」か「自己志向」かが明らかになる。

例えば、「新しいクラスや職場になったら、自分から入ろうとするグループは?」という問いに対して、次の二つの選択肢が示される。「A:多人数で楽しそうなグループ B:気の合いそうな人がいるグループ」。ここでAを選んだら他者志向型の人間で、Bを選んだら自己志向型の人間である。

この20の問いから「他者志向」に当てはまった人は、さらに12の問いに答えるように導かれる。例えば、「どっちかというと?」という問いに対し、二つの選択肢が示される。例えば、「C:目立ちたがり D:仕切り屋」である。これらの問いに対して、Cを多く選んだ人は「注目型」、Dを多く選んだ人は「司令型」にそれぞれ分類される。

他方、最初の20の問いから「自己志向」に当てはまった人は、さらに12の問いに答えるように導かれる。例えば、「どっちかというと?」という問いに対し、「E:話すより聞くほうが好き F:聞くのも好きだけど、熱く語るのも好き」という二つの選択肢が示される。あるいは、「自分のことを好きか?」という問いに、「E:そんなことは考えない F:時々、すごくイヤになる」という二つの選択肢が示される。

これらの選択肢にすべて答えたとき、Eを多く選んだ人は「法則型」、Fを多く選んだ人は「理想型」にそれぞれ分類される。さて、あなたはどの立場に分類されるだろうか。実際に試してみたい人は、この本を実際に読んでみてほしい。

AIテクノロジーのイメージ
写真=iStock.com/Sasiistock
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Sasiistock

■目立ちたがりの「注目型」と秩序を重んじる「司令型」

以上の判定テストから導かれる四つのタイプの人生は、それぞれ次のような特徴をもっている。

「注目型」は、他人から注目されたい、認められたい、頼られたいと思うタイプで、目立ちたがり屋の甘えん坊である。ムードメーカーであり、世話好きであり、人を楽しませるタイプである。注目されたいので、できない仕事でも引き受けてしまう。結果として失敗することもあるけれども、基本的にお調子者なので、誰かに慰めてもらうと、再び元気を取り戻す。

「司令型」は、他人に負けたくないから、がんばるタイプである。社会的地位の序列に敏感で、上下関係のなかで礼儀正しさを重視し、指導力を発揮するタイプである。有能で冷たいという印象を与えるかもしれないが、部下に対する指導の仕方は的確で、組織全体を成功に導く力を発揮する。

■仕組みが気になる「法則型」とプロセスを重視する「理想型」

「法則型」は、物事や社会の仕組みを、自分なりに理解することに関心をもっており、なぜそのようになっているのかを分析しようとする。一歩引いたところから物事を眺めるというニヒリスト(虚無主義者)的な側面もあるが、自主的に行動するタイプでもある。他方で、自分は何をしたいのかが明確ではない。

そして「理想型」は、自分が追い求める理想が明確で、誰にも指示されず、自分で考えたとおりに行動するのが好きなタイプである。お金や権力に惑わされず、反骨精神をもって、自分らしい生き方をする。理想のために手段を選ばないという生き方ではなく、理想に到達するまでのプロセスを重視しているとされる。

以上の四つのタイプは、二つの軸を用いて作成した4象限のなかに位置づけることができる(図表1参照)。

【図表1】岡田斗司夫の「欲求の4タイプ」
岡田斗司夫の「欲求の4タイプ」(出所=岡田斗司夫『人生の法則』)

一つの軸は、外向的で他者志向的なタイプか、内向的で自己志向的なタイプかを区別するものである。もう一つの軸は、人生の目的が具体的な人か、抽象的な人かを区別するものである。

ここで、人生の具体的な目的とは、数値化した目標の実現を図るような場合の目的のことを指す。これに対して人生の抽象的な目的とは、「真理や愛やパワー(権力)のために」といった、目標を数値化することが難しい目的のことである。

■4タイプにはそれぞれの相性がある

これらの二つの軸を組み合わせると、四つのタイプに区別することができる。この四つのタイプの人生について岡田は、いくつかの興味深い考察をしている(*3)

一つは、互いに理解しあえないタイプについてである。岡田によれば、司令型と理想型は、互いに相いれず、注目型と法則型もまた、互いに相いれない人生観をもっているという。図では、対角線上に位置する関係である。さらに岡田によれば、これら四つのタイプには、あこがれの循環関係があるという。注目型は司令型にあこがれ、司令型は法則型にあこがれ、法則型は理想型にあこがれ、理想型は注目型にあこがれるという。

反対に、司令型は注目型を軽視し、注目型は理想型を軽視し、理想型は法則型を軽視し、法則型は司令型を軽視するという循環もある。このような「あこがれ」と「軽視」の循環があるなかで、それぞれのタイプは、調子のいいときは、あこがれのタイプを実践する。

例えば注目型の人は、司令型の人生を実践する。反対に、疲れているときは、自分が軽視しているタイプを実践する。例えば、注目型の人は、理想型の人生を実践する。このような関係があると岡田はいう。

(*3)岡田前掲書、105-112頁

■「他者志向」「自己志向」はさらに分類できる

以上の考察は、私たちの人生について興味深い洞察を与えてくれるだろう。とくに他者との付き合い方について、有益なことを教えてくれる。

例えば、注目型は、司令型にあこがれるのだが、司令型は反対に、注目型を軽蔑している。これはつまり、自分にあこがれる人は、自分が軽蔑するタイプの人だということである。他者との付き合い方に注意したい。その一方で、疑問も湧いてくる。例えば、自分はどちらかと言えば他者志向の人間であるとして、注目されることにも司令することにも、あまり関心がないという人もいるのではないか。

例えば、注目されている人を追いかけたいとか、指導力のある人に従いたいという人もいるのではないか。あるいは、どちらかと言えば自己志向型であるとして、法則にも理想にもあまり興味がないという人もいるのではないか。自主的に行動するタイプではないという人もいるのではないか。

そのような疑問に答えるために、岡田斗司夫の理論を改変して、「欲求の8類型」を理論化してみたい。まず、岡田の理論と同じように「他者志向」と「自己志向」に分けてみる。正確には、この二つの類型は、「親密な他者とのかかわりを大切にする志向」と「あまり親密ではない他者とのかかわり(広い社会)のなかで、自分と社会のかかわりを大切にする志向」の違いだと考えられる。

他者を大切にするといっても、どういうタイプの他者を大切にするかについて、異なる志向をもっているといえる。

■「上下関係」や「目標」の有無でタイプが変わる

他者志向のタイプは、さらに四つのタイプに分けることができる。自己志向のタイプも、さらに四つのタイプに分けることができる。すると合計で、八つのタイプに分けることができる(図表2および図表3を参照)。

【図表2】人生の類型(1):他者志向の四つのタイプ
筆者作成
人生の類型(1):他者志向の四つのタイプ - 筆者作成
【図表3】人生の類型(2):自己志向の四つのタイプ
筆者作成
人生の類型(2):自己志向の四つのタイプ - 筆者作成

他者志向タイプの人は、必ずしも上下関係のある人間関係を望んではいない。対等な人間関係のなかで生活したいと思っている人もいる。また、対等な人間関係にもいくつかのパタンがある。ここでは、「明確な目標」がある場合とない場合とに分けてみよう。

例えば、ゲームやスポーツなどで、自分と能力の近い人たちと競い合う場合、そこには「勝利」という明確な目標がある。あるいは、環境保護運動やボランティア活動をしたり、趣味の写真サークルで活動するような場合、私たちは明確な目的を追求するなかで、張り合いをもって協力し合う。このような活動に生きがいを感じる人たちを、ここでは「張り合い型」と名づけてみよう。

■自己志向は四つ、他者志向は六つのタイプに分けられる

張り合い型には、NPOなどの市民活動を理想とするタイプや、スポーツやゲームなどの競技を重視するタイプなどがある。これに対して、宴会で楽しく過ごすなど、とくに追求する目標があるわけではないけれども、他者と対等な関係で時間を過ごすことが好きだという人もいる。ここでは「共生型」と名づけてみたい。

このように他者志向タイプには、「注目型」と「司令型」だけでなく、対等な人間関係のなかで人生の理想を求める「張り合い型」と「共生型」がある。ここで「注目型」は、「注目されたいタイプ」と「ある対象に注目したいタイプ(アイドルやスター選手を応援したいタイプ)」に分けられる。

橋本努『「人生の地図」のつくり方』(筑摩書房)
橋本努『「人生の地図」のつくり方』(筑摩書房)

また「司令型」は、「司令したいタイプ」と「司令されたいタイプ(忠誠タイプ)」に分けられる。これらの区別を踏まえると、他者志向型は六つのタイプに分けられる。これに対して自己志向タイプの人は、次の二つの軸をもちいて四つのタイプに分けることができる。

一つの軸は、いまの自分に満足して現況にとどまる(上昇しない)か、それとも、いまの自分に不満を抱いて自分を超えようとする(上昇する)かを分けるものである。もう一つの軸は、自分の人生の目標(やりたいこと)が明確に定まっているか、それとも定まっていないかを分けるものである。この二つの軸から、「新奇型」「理想型」「欲求型」「義務型」の4タイプに分けることができる。

■挑戦を好む「新奇型」と、ルールを重視する「義務型」

「新奇型」は、自分の理想がまだ定まっていないけれども、新しいことに挑戦して、自分を変えたいと思っている。このタイプは、「前衛型」あるいは「逸脱型」と呼ぶこともできる。

山に登るビジネスマンのグループ
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

これに対して「理想型」は、自分の理想を実現するために、明確な目標を定めて実践している。「欲求型」は、理想の追求にあまり関心がなかったり、挫折したりしがちで、自分のいまの欲求を満たすことに関心がある。

「義務型」は、とくに自分が何をしたいのか定まっていないけれども、社会のなかで求められるルールや規範を守り、礼儀正しく生きることに関心をもっている。実証的な社会調査を重視する一方で、社会はどうあるべきか、自分はどういう立場をとるか、といったことにはあまり関心がないタイプである。

■人間は必ずしも目標や上昇志向を持っているわけではない

以上は、岡田の理論を改変した「欲求の8類型(正確には10類型)」である。それぞれのタイプの特徴は、一人の人間のなかに混在しているにちがいない。複数のタイプをバランスよく追求する人もいれば、ある特定のタイプを追求する人もいるだろう。

読者のみなさんが、どんなタイプをどれだけ重視すべきかを考える際に、この類型論が少しでもヒントになれば幸いである。私たちは必ずしも、明確な目標を追求して生きているわけではないし、上昇志向をもっているわけでもない。自分がどんなタイプの人間なのかを理解し、そのタイプにふさわしい生き方をしてみてはどうだろう。自分のタイプが分かれば、「いったい自分の人生は何のためにあるのか」ということも見えてくるだろう。

【まとめ】
・岡田斗司夫は、私たちの欲求のタイプを、注目型、司令型、理想型、法則型の四つに分けて、興味深い人間観察をした。
・ここでは、このモデルをさらに分類して、注目型(したい/されたい)、司令型(したい/されたい)、張り合い型、共生型、新奇型、理想型、欲求型、および義務型の八つ(正確には10類型)に分けて分析した。

----------

橋本 努(はしもと・つとむ)
北海道大学大学院経済学研究科教授
1967年、東京都に生まれる。横浜国立大学経済学部卒業。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。博士(学術)。シノドス国際社会動向研究所所長。社会経済学、社会哲学。主な著書に、『自由原理 来るべき福祉国家の理念』(岩波書店)、『解読 ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』』『経済倫理=あなたは、なに主義?』(ともに、講談社選書メチエ)、『自由の論法 ポパー・ミーゼス・ハイエク』(創文社)、『帝国の条件 自由を育む秩序の原理』(弘文堂)、『自由に生きるとはどういうことか 戦後日本社会論』『学問の技法』(ともに、ちくま新書)、『消費ミニマリズムの倫理と脱資本主義の精神』(筑摩選書)、『「人生の地図」のつくり方』(筑摩書房)など多数。

----------

(北海道大学大学院経済学研究科教授 橋本 努)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください