【スバル レヴォーグレイバック 新型試乗】「アウトバック」以来、30年にわたる挑戦の成果…諸星陽一
レスポンス / 2024年3月28日 21時0分
佐渡島でのナンバーレス車試乗以来乗っていなかった『レヴォーグ レイバック』のナンバー付き仕様で、高速道路を含めた一般道で試乗した。
佐渡で試乗した際に感じたマルチパーパスな乗り味は、あらためて乗り直しても劣ることなく感じられた。現在、世界的にヒットしている車型はSUVと呼ばれる車高の高い5ドアモデルである。レイバックはステーションワゴンの『レヴォーグ』の車高を70mmほど上げ、全幅は25mm、全長は15mmアップされている。車高のアップは最低地上高の向上などに貢献、全幅はトレッドが広がったことでレヴォーグよりもホイールベース/トレッド比が小さくなり安定性向上方向になったと言える。
エンジンは1.8リットルターボで177馬力、300Nmのスペック。必要十分なトルクを獲得している。佐渡で乗った際には、坂道発進でも十分な発進トルクを感じた。これが平坦な路面だとちょっと出足がスッと行きすぎてしまう感じがある。レイバックにはエンジンの出力特性を変化させるSIドライブという機構があり、比較的ゆっくりとしたトルクカーブを描くIモードでも、こうした出足の“良すぎ”を感じることもあった。もっとも、アクセル開度に対するトルクの発生の仕方がちょっと急かなと思う一方、これは慣れで解決できるレベルだな、とも思える領域だ。
発進後の加速も十分。ターボモデルではあるが、もちろんターボラグなどというものは現代のクルマには存在していない。IモードよりもSモードのほうが加速感は強くなるが、ワインディングで一人乗りなどというシチュエーションでなければとくにSモードを使う必要もないと感じる。Iモードでも走りには大きな不満はないのである。
◆アウトバック以来30年にわたる挑戦の成果
高速道路をアイサイトのACCを使って走る際のコントロールもいい。以前のアイサイトは先行車が進路を譲って前方が開けると、急激に加速して設定速度に合わせようとしたが、現行のレヴォーグからはそうしたこともなくなり、このレイバックでも同様のフィールが受け継がれている。今回は片道150km程度の高速道路の道のりをレイバックで走ったが、ACCの素性のよさは高速移動を疲れ知らずにしてくれる。
車高がアップされサスペンションストロークが長くなっているが、高速道路でもとくに不安感が強調されるようなことはない。サスペンションがしっかり動いてくれるぶんだけ路面が荒れていても挙動の収まりがいい。今回の試乗では東北自動車道を使ったので、最高速度が120km/hまで引き上げられている区間も走行した。100km/hと120km/hではクルマに掛かってくる抵抗がずいぶんと違う。80km/hと100km/hの比ではない。そうした速度のなかで路面が荒れていたり、横風に当たったとしても挙動が急激に乱れたりはしない。いわゆる懐の深い走りが可能となっているのだ。
スバルは1994年に北米で『レガシィ』ベースの『アウトバック』を発売している。アウトバックはレガシィツーリングワゴンの車高を上げたモデルで、いわばレイバックの大先輩。すでに30年近く前にこの手法に取り組み、それを続けてきたのでさまざまな知見がある。SUV人気にあやかってSUVを作ってみたものの、やっぱり重心が高すぎちゃったからクロスオーバーSUVも作りました的なものではなく、もともとチャレンジしてきた分野での新しい車種なので、そうした作り方が上手なのだと感じる。
◆瀕死状態のステーションワゴンながら
今、世界ではステーションワゴンが瀕死状態だという。ドイツでは(一部)速度無制限のアウトバーンがあるので、まだステーションワゴンに価値を見いだしているが、最高速度が130km/hのイタリアやフランスなどではSUVでも十分に対応できるとして、荷物を積めるクルマに対してそれほど高い高速走行性能を求めない傾向になってきているという話を聞くことが多い。
SUVの性能が向上していることももちろんなのだが、ステーションワゴンのようにボンネットが低いクルマは対歩行者での衝突安全性が確保しづらいというのも大きな要因。SUVのようにボンネットが高ければ、歩行者と衝突した際に頭部とボンネットが近い位置にあるため衝撃が低くなる。一方でステーションワゴンやセダン、クーペなどはボンネットまでの距離が遠いので衝撃が大きい。
安全性を向上するためにレイバックはボンネット後方に歩行者用エアバッグを付けている。またほかの車種では衝突時にボンネットがポップアップし衝撃を弱める装置を取り付けている車種もある。こうした仕様によりコストがアップし販売価格も上がるといった要因も重なるなど、ステーションワゴンをとりまく環境は決して明るくない。
それだけにきちんとしたワゴンの性能も与えられているレイバックは貴重な存在と言える。リヤシートは6対4分割が基本だが、4対2対2の分割とすることも可能。荷物の形状によって上手に多くの荷物を積みながら、乗車定員を確保できるようにしているのもスバルならではのノウハウを感じる部分。
残念だったのがオーディオシステム。USBメモリーを差し込むと、USBに入っている楽曲が、アルバムやホルダーを無視して曲名のアルファベット順にソートされて表示されてしまう。なんでこのようなことが起きるのか? Webを検索したところどうもそういう仕様になってしまっているようだ。AppleCarPlayやAndroid Autoでスマホをつないだときには起きないが、USBだと起きる現象らしい。立派なナビオーディオが標準装備で、ユーザーはそれにも代金を支払って買うのだから、早めの対応を望みたい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。
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