「相手によって態度を変える人」のみにくい心理 "豹変"を恥ずかしいとも思わない
東洋経済オンライン / 2024年3月24日 16時0分
「精神科を受診する患者の最も多い悩みは、職場の人間関係に関するもの」と精神科医の片田珠美氏は言います。本稿は、片田氏の新著『職場を腐らせる人たち』より一部抜粋・再構成のうえ、職場の困った人たちの心理に迫ります。
強い自己保身欲求と上昇志向
IT系企業に勤務する40代の男性課長は、自分の上司に対する態度と部下に対する態度が全然違う。部長や役員に対しては平身低頭で穏やかだが、部下に対しては横柄で、「なんでこんな簡単なことができないんだ」「君の頭は小学生レベルか」などと暴言を平気で吐く。
そのため、部下が何人もメンタルを病んで休職中であり、次々に辞めていく。しかし、部下が会社の上層部に訴えても、「あの温厚な課長がそんなことをするわけがない」と言われ、取り合ってもらえないという。
この課長のように部下には暴言を吐くくせに、上層部にはぺこぺこする上司はどこにでもいる。たとえば、アパレル会社のショッピングモール内にある店舗に赴任してきた40代の男性店長は、店員が少しでももたもたしていると、「どうしてそんなにとろいんだ」「君の仕事が遅いから、能率が落ちるんだよね」などと怒鳴る。
また、店長には、これはこうしなければならないと思い込んでいる手順があるようで、それと少しでもずれたことをする店員がいると、客の前でも大声で叱責する。なかには、閉店後1時間以上、仕事の手順や接客態度などについて延々と罵倒され、「ちゃんとわかってんのか」と胸ぐらをつかまれた店員さえいるらしい。そのせいか、この店長が赴任してから3カ月足らずで、2人の店員が退職した。
もう1人の20代の男性店員も、店長から些細なことで責め立てられる出来事があって、それ以降、頭痛や目の奥の痛みを感じるようになった。そのうえ、店長とシフトが一緒になる前日には決まって気分が落ち込んで意欲も低下し、眠れなくなったため、私の外来を受診した。
この店員は、仕事自体は好きで、他の従業員や上司との関係は良好なため、継続して勤務したいという気持ちが強かった。しかも、人員不足の職場で自分が休めば迷惑をかけるため、できる限り休みたくないという希望だったので、軽い睡眠導入剤を処方した。
その後、この店員は本部の人事部長に相談し、なるべく店長と一緒に働かずにすむようにシフトと出退勤時刻の調整をお願いした。できれば他店舗に異動したいという希望も伝えたのだが、それに対して部長からは「あの温厚な店長がそんなことをするなんて信じられない。接客態度が悪かったら注意するのは当たり前だ。今時の若者は辛抱が足りないって話もよく聞くしなあ」という答えが返ってきた。調整と異動についても、部長は「検討する」と言ったものの、実際には何の配慮もしてもらえないまま、店員は服薬しながら働き続けている。
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