「それ聞く?」外国人が戸惑う日本メディアの取材 日本とアメリカのメディアは意外と違う
東洋経済オンライン / 2024年3月29日 11時30分
ところが、今目の前にいる日本の記者から聞かれているのはCEOの年齢です。え?それを聞いて何を書くんだろう。もしかして「CEO、年齢に不安」とか?それとも友達になりたいの?いや、今日初対面だよね?などなど、軽いパニックになってしまいます。
日本のメディアは、客観性を重んじ、事実をそのまま読者に提供し「さて、みなさんはこの事実の積み上げから、このニュースの意味をどう解釈しますか」という問いを読者にぶつけています。ある意味、読み手に高い情報読解能力を求めていることになります。そのためには、事実を正確かつ客観的に描き出す必要があり、ファクト確認を丁寧にするのだと思います。
もう1つ、アメリカメディアは相手から期待するコメントを引き出すためにわざと不愉快な質問をぶつけてくることもあります。「ここで反論しないとあなたに取って不利な取材になっちゃいますよ」のような態度で、取材が軽いバトルの場となることが当たり前です。逆に納得のいく反論ができれば、いいものはいいとその場で記者も率直に反応してくれます。
したがって取材される側の企業のほうは、「メディアトレーニング」といっていかにこうした挑戦的な質問をかわし、自社のアピールしたい内容に引き込むかの訓練を日頃から積んでいます。
日本のプレスは「紳士的かつ無表情」
ところが、ここでも日本のメディアはまったく違った挙動をします。それは日本のプレスが「とても紳士的で、かつ無表情である」ということです。
例えば、「どうです!この新製品は!」と取材の場で見せた場合、アメリカであれば散々こき下ろされるか、逆にメチャクチャほめられるかのどちらかです。しかし、日本の記者の場合、まず絶対にけなさないのですが、同じようにほめもしません。
終始淡々とした態度のまま取材が終わってしまいます。するとその直後にCEOから「さっきの記者はものすごい無表情だったけど、なにか気に入らなかったのか?」と不安そうに聞かれることがあります。
これについても、日本で広報をしている友人に聞いたところ、日本のプレスは取材先に対し自分の個人的な態度を見せないのだそうです。つまりいいか悪いかは読み手である読者がファクトを理解したうえで決めることなので、取材の段階で記者自身がキャッキャ言って喜んだりしていては、バイアスがかかってしまう、という考えなんだそうです。
思い入れたっぷりで書かれるアメリカの記事、客観的に淡々と書かれる日本の記事。一見アメリカの記事のほうが言いたいことをクリアに打ち出しているのでよいように思うかもしれません。しかし一方的な情報に偏らないよう、読者が複数のニュースから情報を取捨選択する必要があるともいえます。
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