「ブラザー参戦」でもファンドを頼るローランドDG かつての親会社の非公開化でも登場のタイヨウ
東洋経済オンライン / 2024年3月29日 7時40分
特別委独自のLAとして西村あさひ法律事務所を雇ったのも3月22日のことだった。本来ならタイヨウによるTOB開始以前にやっているべきことだ。DGが開示したのはタイヨウがTOB期間延長を公表する前日の3月26日。つまり当初の買い付け期限の1日前だった。
さらに現時点では特別委独自のFAは雇っていない。また、かねてDG経営陣が主張している「ブラザー相手では『ディスシナジー』が発生する懸念がある」という主張を特別委も支持している。そのディスシナジーとは何なのかの具体的な説明もいまだにしていない。
そもそもDGがタイヨウ以外に買収候補者として声をかけた対象は2社あるのだが、そのいずれもがファンドであって事業会社ではない。
ファンドによる買収は基本、LBO(レバレッジドバイアウト)になる。LBOとは、買収するファンドが設立したペーパーカンパニーが、ファンドからの出資と借入金で買収資金を調達し、最終的には借入金を買収する会社に負担させる手法だ。
具体的には、ペーパーカンパニーは非公開化後、買った会社と合併し、借金を買った会社にツケ回す。つまり買われた会社は買収者が借りた多額の借金を背負わされる。事業会社による買収では、事業会社自身が資金調達をするので、基本、LBOにはしない。つまり買われた会社は借金を背負わされない。
タイヨウは今回の買収費用642億円のうち、出資は200億円だけ。残る442億円は借金だ。非公開化後にペーパーカンパニーが非公開化後のDGと合併するのかどうかの記載は公開買付届出書にはない。だが定石通り合併すれば、年商540億円のDGが、442億円もの借金を背負うことになる。
代償として残る借金の重み
DGは2022年12月期までは実質無借金だったが、タイ工場と本社の新築費用調達のため、2023年12月期末時点で28億円の有利子負債がある。そこへ442億円がのしかかるのだ。
それでもファンドに買われるほうが、会社の成長にとっても、一般株主にとっても利があるというのなら、その説明が要る。
タイヨウは2014年、DGの親会社だった電子楽器メーカーのローランドを非公開化したファンドでもある。
総額437億円の買収費用のうち、タイヨウによる出資は112億円で、残る325億円は借金で賄った。当然のようにペーパーカンパニーは非公開化後のローランドと合併し、借金をローランドにツケ回した。
そのローランドにツケ回された325億円の借金のうち、114億円はDGが肩代わりしたも同然だった。当時ローランドが保有していたDG株式の半分を、DGに114億円で自己株取得させたのだ。
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