機能性食品は「根拠の質が低い」とわかるのが長所 健康食品業界38年の識者が指摘「制度の功罪」
東洋経済オンライン / 2024年4月24日 7時50分
エビデンスの質向上についてはもっと時間をかけて議論されるだろう。
*GMP:原材料の受け入れから製造、出荷まですべての過程において、製品が「安全」に作られ、「一定の品質」が保たれるようにするための適正製造規範。サプリメント形状の加工食品については、厚生労働省がGMPガイドライン等を示して自主的取組を推進している。今後、機能性の観点も含めたGMPの検討が期待される(消費者庁、機能性表示食品の届出等に関するガイドラインより)
透明性の高さがメリット
――エビデンスを自社でつくることの見直しも必要でしょうか。
それは必要ないと考えている。アメリカやオーストラリア、ニュージーランドでもエビデンスは事業者が作っている。
エビデンスの質が低いとわかることが、日本の機能性表示食品制度のよいところだ。透明性が高いから質が低いとわかる。アメリカではエビデンスは公表されていないので、質はわからない。この点で、今でも機能性表示食品制度は世界最先端だと思っているし、胸を張れる。社会が監視してモニタリングする制度といえる。
――透明性は高くても、それを理解できる消費者は少ない。
その通りだ。一般消費者はエビデンスを見てもわからない。そのためアカデミアや消費者団体が時々チェックしている。ここから先は業界団体でどこまで自浄作用を発揮できるかが重要になる。国の周知も足りていない。消費者庁には出先機関がなく、限界があるのだろう。
サプリは切り分けて考える必要性も
――カプセル・錠剤型のサプリは機能性表示食品の中でも特に問題視されているのでしょうか。
サプリは過剰摂取しやすい。成分を抽出したり濃縮したりするので、医薬品との相互作用も心配される。小林製薬の件で亡くなった方には既往症があったようだから、もしかすると相互作用が関連しているかもわからない。食品だから安全なわけではなく、安全な食べ方があるだけ。例えばご飯も食べすぎたら肥満になる。
――サプリは「必ず毎日飲まなくては」と思う人がいる。
そこが怖いところ。習慣化しなきゃと思って、知らないうちに過剰摂取になる場合がある。日本にはサプリの法律がない。アメリカのダイエタリーサプリメント制度には法律があるし、EUにはフードサプリメント指令、ASEAN諸国にもヘルスサプリメントという制度がある。一般食品と区別して、サプリはサプリで厳しく規制するのが一般的だ。
今回の機会にサプリの法律についても議論されると思うし、これはあったほうがいいと思う。しっかりサプリの定義をして、GMPを義務化するなど、一般食品より厳しい品質管理を要求することはできると思う。
田口 遥:東洋経済 記者
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