打倒テスラのベンチャーが挑む、エヌビディアの先 車載AI半導体の開発競争が活況、トヨタも参戦
東洋経済オンライン / 2024年5月7日 7時40分
「エヌビディアのチップでは遅すぎる」
【画像】チューリングは独自半導体を開発中、2028年に量産開始を目指している
完全自動運転EVの開発を進めるベンチャー・チューリングは「We Overtake Tesla(テスラを追い越す)」というミッションを掲げる。同社で半導体開発を担当する柏谷元史氏は、冒頭の不満を漏らす。
ソニーやトヨタなどで半導体開発に携わってきた柏谷氏は、2023年に社員40人ほどのチューリングに入社すると、12月から独自半導体の開発に着手した。
「自動運転を突き詰めようと思ったときに、適した半導体がなかった。ないなら自分たちで作るしかない」(柏谷氏)。完全自動運転を実現するためには、汎用品のエヌビディアでは役に立たないという。
ルールありきの限界
チューリングは2021年に設立。CEOの山本一成氏はプロ棋士を破った将棋AI「ポナンザ」の開発者として知られる。4月には、ベンチャーキャピタルのANRIなどから30億円の資金調達を発表。これまでの累計調達額は45億円に上る。
柏谷氏はチューリング入社前まで、トヨタグループで次世代車の開発を担うウーブン・バイ・トヨタで自動運転車の開発を行っていた。ただ当時から「完全自動運転を実現するためには、“ルールベース”では限界があると思っていた」と話す。
基本的に自動運転は、カメラやセンサーなどで周囲の状況を認識し、事前に定められたルールに基づいて動作を行っていく。だがこの方法では、ごくまれに出現する複雑な道路状況に対応することができない。
目の前に障害物が現れたり、路面状況の悪化など、さまざまなことが運転中には起こりうる。予測不可能なすべてのパターンを事前にルールで定めることは不可能だ。
チューリングは自動運転の課題を、生成AIの活用によってクリアしようとしている。カメラで捉えた周囲の状況を生成AIモデルに入力し、その結果を運転に反映させることができれば、すべてのパターンをルールで定める必要はなくなると考えている。
だが、そこで立ちはだかるのが「計算能力」の壁だ。
エヌビディアを凌駕する性能を追求
ChatGPTのような生成AIをスマートフォンやパソコンで使う際には、計算処理はインターネット経由で高性能なサーバーに任せる。通信時の遅延や、サーバーを動かすための電力がかかることもある程度は許容範囲だ。
一方、瞬時の判断がものをいう自動運転で遅延は許されない。AIを動かすための計算処理はサーバーではなくクルマ側で行う必要がある。となると、おのずと使用できる電力も限られてしまう。超高速かつ低消費電力の半導体が求められるのだ。
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