原始ブラックホール探索を目指すナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡 NASA
財経新聞 / 2024年5月9日 12時1分
NASAは、宇宙の質量の約95%を占めると言われているダークエネルギーやダークマターの謎を解明するとともに、太陽系外惑星の姿を捉えることを目的として、2020年代半ばを目標にナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡の開発に取り組んでいる。
宇宙はビッグバンにより誕生したが、それ以来、宇宙空間は光速を超える速度で膨張している。この猛烈な宇宙空間の膨張を起こす張本人がダークエネルギーで、宇宙誕生後しばらくして無数に誕生した銀河の運動を支配しているのがダークマターだ。だがそれらが具体的に何なのかは不明で、これらの謎の解明に迫るのが、ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡だ。
実はダークマターの候補として、宇宙誕生直後に起こったインフレーションの際に誕生した、無数の原始ブラックホールが有力視されている。ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡により、具体的にどのようにして原始ブラックホールの存在を突き止めるのかを示す研究論文は、カリフォルニア大学の科学者らによって公開されている。
ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡は、ハッブル宇宙望遠鏡と同じ主鏡口径2.4mの大型光学望遠鏡と、ハッブル近赤外線カメラの約200倍の視野を持つ広視野観測装置を有し、一度に広範囲での観測が可能だ。
これにより、遠方からやってくる天体の光を時系列的に観測。原始ブラックホールや太陽系外惑星がその光に影響を与える瞬間を捉えることで、宇宙空間に存在している非常に微小な重力場の揺らぎがどこにどのくらい分布しているのかが分かる。この揺らぎの張本人が原始ブラックホールなのか、太陽系外惑星なのかは、重力場の揺らぎの持続時間を統計的に分析することで識別できると言う。
原始ブラックホールは、現在観測により存在が確かめられている恒星ブラックホールや、銀河の中心にある超大質量ブラックホールと比較してけた違いに質量が小さく、地球程度の質量のものも存在していると考えられている。
地上の望遠鏡でもそれらしき存在は確かめられているのだが、ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡は、地上望遠鏡とは比較にならない数の原始ブラックホール候補の検出が期待されている。
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