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なぜソフトバンクやKDDIのネットワークは強いのか 「2.5GHz帯のTD-LTE」最強説

ASCII.jp / 2024年4月24日 17時0分

Jonas Leupe |  Unsplash

 昨年春から続くNTTドコモのネットワーク品質問題。当初、昨年夏頃には解消すると言われていたが、結局、先送りになった。2023年12月末までに対象とする2000カ所のうち、90%以上の場所で対策が実施されたというが、いまだにNTTドコモのネットワーク品質を悲観する声が後を絶たない。

 NTTドコモやNTTの幹部は「コロナ禍が落ち着き、トラフィックが増えたのが原因」としているが、コロナ禍が落ち着いたのはKDDIやソフトバンクも同じであり、NTTドコモだけがコロナ禍が明けたことで、トラフィックが増えて、ネットワーク品質が落ちたという理由にはならない。

 昨年以降、様々な関係者に「逆になぜ、ソフトバンクやKDDIのネットワークは強いのか」という質問をしまくっているなかで「2.5GHz帯のTD-LTEが最強なのではないか」と指摘する人が複数、いた。

KDDIとソフトバンクが提供している周波数帯

 2.5GHzのTD-LTEとは、KDDIのなかではUQコミュニケーションズ、ソフトバンクではワイヤレスシティプランニングという会社が提供している周波数帯だ。

 UQコミュニケーションズではWiMAXを提供。ワイヤレスプランニングでは、もともとウィルコムで次世代PHSを提供しようとしていた。それぞれ独自の規格であったが、世界的な潮流に合わせようとTD-LTEというデータ通信に特化した規格に準拠した技術に切り替えていた。TD-LTEは中国を中心に世界的に導入が進み、iPhoneも対応したことで、一気にメジャー化した感がある。

 この2.5GHz帯という周波数帯でデータ通信に特化した規格を持っているからこそ、ソフトバンクとKDDIはネットワーク品質が維持できているのではないかという見立てだ。

 実際、アメリカのキャリアを見ても、Verizon、AT&T、T-Mobileという3社があるなか、調査会社「Opensignal」のデータを見るとT-Mobileの評価が圧倒的に高いのだ。

 T-Mobileは2.5GHz帯でTD-LTEの周波数帯を持っていたスプリントを吸収したという経緯がある。2.5GHz帯でTD-LTEに大きな帯域を持っていたことで、データがサクサク流れ、「快適」という評価を得ているのだ。

 日本のソフトバンクとKDDI、T-Mobileの共通点は、この「TD-LTE」なのだ。

総務省資料からも仮説を証明するデータが

 そんな仮説を証明するデータが総務省から出ている。

 「令和5年度 携帯電話及び全国BWAに係る電波の利用状況調査の調査結果の概要について」という資料には、各キャリアのデータトラフィックや、どの通信規格にデータが流れているかといった数値が出ている。

 グループ別で見ると、1ヵ月間の全契約の総トラフィックは935.109PBでソフトバンクがナンバーワンだ。これは他社に先駆けてiPhoneを導入し、iPhoneユーザーが多いからだろう。

 さらに興味深いのが「高度化BWA+5G」のトラフィックだ。高度化BWAというのは、2.5GHz帯のTD-LTEを指すのだが、このトラフィックが277.622PBとなっているのだ。つまり、3割近くがBWAというか、2.5GHz帯のTD-LTEに流れているということになっている。

 KDDI全体でも499.004PBなのに対して、UQも137.666PBのトラフィックを処理している。

総務省資料より

 ちなみに、5G開始以前の令和元年の調査では、ソフトバンク全体が400PB強なのに対して、WCPには200PB弱、流れていると言うデータが出ている。つまり、全体の半分のトライフィックが2.5GHz帯のTD-LTEに流れていることになる。

 こうしたデータを見ると、やはり、ソフトバンクとKDDIは全国にBWAのネットワークを持ち、データ通信に特化した帯域があるというのが、安定したネットワーク品質につながっているように思える。

5Gでの巻き返しはドコモに課された“宿題”

 一方、NTTドコモには2.5GHz帯のTD-LTEは存在しない。

 ただ、3.5GHz帯ではTD-LTEの運用をしているのだが、ライバル会社の関係者は「当然のことながら、2.5GHz帯に比べると電波はあまり飛ばない。NTTドコモの設置状況を見ると、あまり活用できていない印象がある」と語る。

 総務省が発表しているNTTドコモにおけるトラフィック状況を見ると、つながりやすいが帯域は狭い2GHz以下の周波数帯に集中している状況だ。頼みの綱の5Gにもそれなりにトラフィックは流れているが、4Gに比べるとまだまだ少ない。

 5Gはそもそも衛星の地上局と電波が干渉するということで、これまで基地局から高出力で電波を飛ばすというのが難しかった。しかしここ最近、地上局が別の場所に移転したことで、各社とも5Gの電波の出力をあげることができ、基地局から遠くに飛ばし、エリアを広げられるようになったのだ。

 NTTドコモもおそらく、この恩恵を受けられるはずだ。5Gにうまいこと、トラフィックを逃がせるようになれば、いまのネットワーク品質を上げられるはずだろう。

 2.5GHz帯のTD-LTEを持っていないというハンデを5Gでどのように巻き返すか。NTTドコモに課された宿題といえそうだ。

 

筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。

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