社説:日米首脳会談 軍事の一体化は危うい
京都新聞 / 2024年4月12日 16時5分
訪米中の岸田文雄首相は、バイデン米大統領と会談した。
両首脳は、自衛隊と在日米軍の指揮・統制枠組みの見直しなどで合意した。中国や北朝鮮の軍事強化や威圧に対し、「日米同盟の抑止力、対処力の一層の強化」のためという。
部隊運用レベルの連携まで踏み込み「日米一体化」を進めることになる。なし崩しに米国の戦争に巻き込まれる懸念が拭えない。
共同声明は、有事に備えた自衛隊と米軍の指揮統制を巡り、「切れ目なく効率的に協力するため相互運用性を向上させる」とした。
陸海空自衛隊の一元的な統合作戦司令部が2024年度末に新設されるのに伴い、在日米軍司令部も統合部隊を設けて連携する。
岸田政権は22年に改定した国家安全保障戦略で、反撃能力(敵基地攻撃能力)保有へ転換した。米国に委ねてきた打撃力の一部を日本が担うことになる。共同会見でバイデン氏が「日米同盟が始まって以来、最も重要な刷新」と評したように、軍事作戦・行動を一体化する狙いは明らかだろう。
だが、統合が進むと日本独自の指揮権を確保できるか疑問だ。
岸田氏は反撃能力の行使要件を巡る国会答弁で、日本に攻撃がなくても密接な関係の米軍が攻撃される「存立危機事態」も含むと説明。「わが国の主体的な判断で運用する」としたが、米国に情報を頼り、「切れ目ない運用」を深めながら可能なのか。
岸田氏は、日米同盟を「グローバルなパートナー」として世界課題に共に対処すると強調した。
米英豪の安保枠組み「AUKUS(オーカス)」と先端技術協力を検討し、ミサイルなど防衛装備品の日米共同開発・生産を促進する定期協議の新設でも一致した。
先月、英伊と共同開発する次期戦闘機の第三国輸出の解禁を決定したのに続き、米国側の同盟・同志国と防衛協力を広げ、対中国包囲網を強める動きといえよう。
戦後、憲法9条に基づく「専守防衛」を国是とし、世界で非軍事の国際協力で培った日本の信頼を損なわないか。
「防衛費倍増」「反撃能力保有」と同様、岸田氏はバイデン氏への約束を国民に押し付けるのでは困る。国会で熟議が不可欠だ。
米国は一方で、中国との衝突回避へ閣僚級対話を重ねている。日本は米国頼みに偏重せず、独自の努力で地域の緊張緩和と安定的な日中関係に向けた対話を広げられるかが問われよう。
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