東北大、生物の自然な動きを模倣できるロボット用運動生成AIを開発
マイナビニュース / 2024年5月8日 17時25分
東北大学は5月7日、ロボット用の新しい運動生成手法として、深層学習と強化学習を組み合わせた「深層強化学習」と、ヒトの動作を真似て覚えられる「模倣学習」の両者の利点を併せ持つと同時に、両者の欠点を補い合った、動物に似た仕組みを持つ「AI-CPG」(CPG:中枢パターン生成器)を開発することに成功したと発表した。
同成果は、東北大大学院 工学研究科の林部充宏教授、同・グアンダ・リ大学院生らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、IEEEが刊行するロボット工学と自動化技術に関する学術誌「IEEE Robotics and Automation Letters」に掲載された。
強化学習は、行動結果を評価することで試行錯誤的に学習を行うことができ、未知の環境にも適応できることが利点である一方で、特にシステムの自由度が高い場合には、広大な入力空間の探索に膨大な計算コストを要することが欠点となっている。そして深層強化学習は、その強化学習と深層学習を組み合わせた手法だ。
一方の模倣学習は、ロボットに学習させる際に、ヒトが同じ運動タスクを行った際の運動計測データを模倣させる手法のことで、運動タスクや環境が変化しない場合に、その有効性が知られている。しかし、学習する際の探索範囲は基本的には狭いため、未知の環境への適応性が低いことが欠点だという。
そこで研究チームは今回、ロボットのための新たな運動生成手法として、上述の2つの学習方法の両方の利点を活かすことに加え、その欠点を補い合うこともできる手法を開発することにしたという。
今回の手法では、CPGの構造が採用された。CPGとは、ヒトを含めた多くの動物が持つ、感覚入力や上位中枢からの神経指令なしに周期的な運動パターンを生成する神経回路網のことである。ヒトにおいては、上位中枢と運動ニューロンの中間である脊髄に内在するとされ、歩行などの無意識にリズムを生み出す動作において活用されていると考えられている(歩行の場合、手を大きく振ったり大股で歩いたりと、意識して各関節を動かすこともできるが、普段は特に意識していない)。
またCPGは、感覚情報に基づく反射系ネットワークと協働していることが知られている。中枢神経系の中でも上位寄りのCPGはどういう運動パターンを生成したいのかという、より運動意図に近い役割を持つことから、この部分のニューラルネットワークの学習には模倣学習が適応された。
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