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“若造”の指示なのに「バブル世代」がホイホイ聞いて必死に働く必殺フレーズ…正直メンドい「年上部下」の取説

プレジデントオンライン / 2024年5月9日 17時15分

■バブル世代(54歳~59歳付近)【原則】持ち上げてプライドを守る

恥ずかしいくらいよいしょしよう

バブル世代(1965〜70年生まれ)の人たちと仕事をするときに重要なのは、「プライドを傷つけない」ことです。

バブル世代が社会に出た頃は、その名のとおりバブル景気真っ只中。誰が何をしてもうまくいきました。思いつきの企画であっても「検討が足りない」などと突き返されることはありません。「いいじゃん、いってみよう!」とすんなり通してもらえました。

どんなイベントにも人が押し寄せ、浮かれたようにお金を使っていきました。そうして得られたあぶく銭を、また消費や浪費に惜しげもなく使っていたのです。いくらでもお金が儲かるので、人々は睡眠時間を削って働きつづけました。「24時間戦えますか」が本気の合言葉だったのです。

実際のところ、景気に後押しされた“成功”が少なくありませんでした。しかし、当時若手だったバブル世代は、「自分には才能がある」と勘違いしてしまいました。やがてバブルがはじけ飛び、日本は失われた30年と呼ばれる暗黒時代に突入します。

失われた時代に自ら失敗を経験したり、リストラで会社を追われる団塊世代の先輩世代を目の当たりにしたりして、自身の驕りや慢心に気づき考えを改めた人も多いでしょう。しかし、一度手にした成功体験はなかなか手放せません。心の奥底では、自分の仕事ぶりに「プライド」を持っている人が少なくないのです。

■バブル世代の部下を味方につける方法

そうしたバブル世代が今、次々と役職定年を迎え職場の一般社員になっています。定年退職後、再雇用や再就職した人もいるでしょう。いずれにせよ、バブル世代が「指示する側」から「指示される側」になっています。

しかし、人間は立場が変わったからといって、すぐさま意識まで変えられるものではありません。日本を引っ張ってきた自負のあるバブル世代は、「なんで俺がこんな若造に指示されなきゃいけないんだ」という意識がどこかにあります。

対応を間違えると、バブル世代は「本能的に」指示を聞かなくなってしまいます。場合によっては、愚痴を言いふらして不満分子を集結したり、平気でチームの足を引っ張ったりしかねません。年上部下を持ったら、先手を打ち“味方につけておく”ことが肝心です。

先日、ある企業で部長に抜擢された20代のビジネスパーソンが「職場の人間関係についてアドバイスしてほしい」と、私のところに相談にやって来ました。聞けば自分が出世で追い抜いた50代の課長とそりが合わず、何かにつけて突っかかってくる。理由はわからないが、困っているというのです。

私が「辞令が出たとき、その方とはどういうコミュニケーションを取ったのですか」と聞くと、「特に何もやっていません」とのことでした。私はさもありなんと思いました。

その課長が本当に性悪で「こいつを引きずり降ろしてやろう」と悪意で突っかかっている可能性は低いです。自分の不甲斐なさと、年下に仕えなければならなくなった情けなさと、居心地の悪さから本能的にそうした態度を取っているのです。

私は会社に戻ったらすぐに課長と話し合いの場を設け、次のように言ったらよいとアドバイスしました。「このたび私は、○○さんのおかげで部長になれました。内心『○○さんを差し置いて自分など』と思っていたのですが、数週間やってみてよくわかりました。やはり私にはこの大役は不相応です。しかし、今さら辞退するわけにもいきません。そこでご相談なのですが、ぜひとも○○さんのお力をお貸しいただけないでしょうか」

ポイントは「自分を下げること」です。「私には不相応」「荷が重い」という旨を伝えつつ、「お力をお貸しいただきたい」と今後の仕事をお願いする。すると課長は溜飲を下げ、プライドを保つことができます。「わかればいいんだ。若いから昇格に浮かれて挨拶が遅れたことには、目をつぶってやろう。よしわかった! 力を貸してやる。困ったことがあったらいつでも相談に来ればいいよ」

知識と経験に富む老獪なベテランが、参謀として将来有望な若手上司を支えるという構図は格好がつきます。実際、そういった経験や知識が役に立つ場合も多いでしょう。参謀のポジションに気を良くして「あいつは俺が育てた」「やはり俺が見込んだだけのことはある」と、気分良く実力を発揮してくれるはずです。

■年上部下のやる気を引き出す方法

定期的に相談を持ちかけていると、良好な関係が構築でき、仕事も任せやすくなります。もちろん、相談したからといってすべてのアドバイスに従う必要はありません。しかし、聞くだけ聞いて実践しないでいると、「俺のアドバイスはどうなった」と疑問に思われるかもしれません。対策は3つあります。

① アドバイスを取り入れたかどうか結果を確認できない件で相談する。
② どんなアドバイスがあっても取り入れられる程度のことを相談する。
③ 相手の長所や得意分野でアドバイスを生かしたい内容を相談する。

①の例をあげましょう。

「今度の水曜は定例の部長会議があります。例のプロジェクトについてわが部からも提案したいのですが、ご意見をいただけないでしょうか」

課長の意見に対しては「なるほど、その発想はありませんでした。大変参考になりました」と勉強になった旨を伝えましょう。課長は会議に出ないので、参考程度に聞いておけば問題ありません。忘れてはいけないのは、会議の後の報告です。

「○○さんのおかげで、つつがなく終わりました。いただいたご意見は社長にも大変好評で、そのままとはいかないかもしれませんが、今後に反映されそうです」「勉強になった」「課長のおかげでうまくいった」というように、年上部下の力が必要なのだという意思を伝えましょう。バブル世代の部下は、とにかく持ち上げることが大切です。

課長も自分が経営の中枢に参画している意識を持つことができれば、モチベーション向上にもつながります。

■先輩の能力を引き出すキラーフレーズ

そもそも、長く仕事に関わっている人には、学ぶべきところがあるはずです。たとえば、経験値。年を重ねていれば、場数を踏んでいるでしょうし、人脈だってあるはずです。冬の時代にもリストラされず、生き残ってきたその力は本物です。そういった部分は、素直にリスペクトしましょう。年上年下にかかわらず、部下の長所を引き出すのは上司の役目です。

「豊富な知識や経験からくる知恵を、若手に授けてやってくれませんか」
「長年この業界で立ち回ってこられた秘訣を教えてください」
「若輩の自分が、年齢の近い部下にあれこれ指示しても説得力がないんです。数々の修羅場を潜り抜けてきた先輩が、生きた教材になってください」

年上部下の「経験値」を若い部下たちに継承していくことは、組織としても重要です。年上部下としても、自分が必要とされている喜びが感じられますし、小さな一言でも感謝の言葉を言われれば大きな励みになるはずです。

また、自分が「生きた教材」としての価値を求められているのだという意識は、いい意味での緊張感にもつながるでしょう。

【図表】バブル世代に響くフレーズのつくり方

■年上部下を傷つけず指導する技術とは

こうしたコミュニケーションの積み重ねで確固たる信頼関係が構築してからであれば、直してもらいたいところを指摘することもできるようになるでしょう。

ただし、ストレートに「○○しないでください」はいけません。あくまでも相手を立て、プライドをくすぐりながらにしましょう。

たとえば、年上上司がいつもヨレヨレのスーツを着ていることがあります。

ですが、バブル世代が若かりし頃にはDCブランドブームなるものがあって「新人類」と呼ばれたヤンエグ(ヤング・エグゼクティブの略)たちは、肩幅の広い高価なソフトスーツに身を包み、おしゃれを競っていました。

しかし、年齢を重ねるにつれファッションへの興味が薄れ、服装がたるんでしまっている。そんなときには本人の格好のことはおくびにも出さず、若手に指導したいという体で、こんなふうに言ってみましょう。

「○○さん、ちょっとご相談があるのですが。在宅勤務が増えたからか、最近若手の服装がカジュアルに寄りすぎていると、感じませんか? やっぱり仕事をするときは、身だしなみはビシッとしたほうがいいと思うんです。ここは一つ先輩が、大人の見だしなみを見せてやってくれませんか」

こんなふうに言われたら、鏡を見ないわけにはいきません。そこに映っているのは、とてもお手本にはなれない自分。「そうか、俺は見られているんだな」と意識することが、服装のみならず言動にもポジティブな効果をもたらします。

この方法は、年上部下が職場のパソコンでゲームをしていたり、たばこ休憩に行ったきりなかなか戻ってこなかったりするときにも使えます。バブル世代の使い方は「立てて腐さず持ち上げる」が基本です。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年5月17日号)の一部を再編集したものです。

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池本 克之(いけもと・かつゆき)
組織学習経営コンサルタント
株式会社パジャ・ポス代表取締役、NPO法人Are You Happy? Japan 代表理事。1965年神戸市生まれ。日本大学卒業後、金融会社を経て、ソニー生命保険に入社。わずか2年で「全国トップ20」の成績をあげる。その後、マーケティング会社、通販会社の経営を経て、ドクターシーラボ、ネットプライスなどの社長を務める。年商3億円の企業をわずか4年で120億円にするなど、さまざまな企業の上場、成長に貢献し「成長請負人」と呼ばれる。現在は数社の社外取締役を務めつつ、コンサルタントとして一部上場企業からベンチャー企業まで200社以上を指導。

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(組織学習経営コンサルタント 池本 克之 構成=渡辺一朗 撮影=宇佐美雅浩 イラストレーション=竹松勇二)

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