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英国、ウクライナ支援と欧州防衛を先導へ 米大統領選にらみ対米連携と自主防衛の2本柱模索

産経ニュース / 2024年5月8日 18時39分

【ロンドン=黒瀬悦成】ロシアに侵略されたウクライナへの支援や、北大西洋条約機構(NATO)の枠組みに懐疑的なトランプ前米大統領が11月の大統領選で返り咲きを目指す中、英国がウクライナ支援と対露防衛の強化で欧州諸国を先導していく立場を明確に打ち出した。英国は米国との対露連携の維持を図る一方、欧州が米国抜きの「自主防衛」に直面する可能性に真剣に向き合うよう訴えを強めている。

「ウクライナにはロシアに反撃する権利がある」

キャメロン英外相は今月2日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)で同国のゼレンスキー大統領と会談した際にこう述べ、ウクライナが英国から供与された兵器を露国内への越境攻撃に使うことに関し「ウクライナが決めることだ」と容認する考えを示した。

英国は射程の長い空中発射型巡航ミサイル「ストームシャドー」や多数の無人機をウクライナに供与している。ウクライナはこれらの兵器を使ってウクライナ南部クリミアに展開する露黒海艦隊を攻撃し、戦果を挙げるなどしている。

ウクライナは4月27日、ロシアがウクライナ国内の発電所などエネルギー関連施設を標的に空爆を続けていることに対抗して、ロシア国内の製油所を無人機で攻撃し損害を与えた。

バイデン米政権は戦火の拡大を懸念してウクライナに越境攻撃の停止を要請。米政権は戦争をウクライナ国内で完結させたい思惑から、巨額の軍事支援の一方でウクライナ軍の作戦に一定の制約を課してきた。

これに対しスナク英政権は、ウクライナ東部や南部でのロシアの攻勢を食い止めるには、越境攻撃も含めて対露攻撃の選択肢に幅を持たせるべきだとする立場に踏み込んだといえる。

ウクライナでの戦況悪化は、同国支援に向けたバイデン政権の610億ドル(約9兆4000億円)規模の緊急予算案が、トランプ氏が影響力をもつ共和党の抵抗で成立が遅れ、米国の軍事支援が約半年間も停滞したためだ。

スナク首相は4月23日、ウクライナに毎年30億ポンド(約5800億円)規模の支援を必要な限り続けると述べたほか、国防費支出を2030年までに国内総生産(GDP)比2・5%に引き上げると表明した。

英国は米国との「特別な関係」を土台に安全保障分野で同国と緊密に協力しつつ、第二次世界大戦から東西冷戦、プーチン露政権の覇権主義的台頭に連なる歴史の中で欧州安保を主導する立場を自任してきた。

スナク氏は米国との連携を維持する一方で、「ウクライナの次は欧州がロシアの侵略の標的になる」との危機感から、米国の政権交代や政争でウクライナ支援に悪影響が出ることを見越し、英国自身の手でウクライナ支援と欧州防衛を牽引(けんいん)していく考えだ。

こうした英国の対露強硬姿勢は、かつてナチス・ドイツに対し当時のチェンバレン英首相が宥和(ゆうわ)政策をとったことでヒトラーを増長させ、第二次大戦の悲劇につながった歴史的教訓でもある。

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