「日米蜜月」アピールと裏腹に進む「外交の新潮流」 内政に翻弄される岸田首相の「次なる外交課題」
東洋経済オンライン / 2024年4月16日 8時30分
「日米の防衛・安保協力はかつてないほど強固だ」「日米同盟は前例のない高みに達した」など、今回も日米首脳会談は大成功の物語が大々的に発信されている。
自衛隊と米軍の指揮・統制の枠組み上、日本は米英豪で作る「AUKUS」の正式メンバーではないが、首脳会談や共同声明では先端能力の面での協力、自衛隊と米比海軍の共同訓練の実施など盛りだくさんの内容が打ち出された。自衛隊と米軍の一体化に加えてフィリピンを加えた連携と、中国に向き合う軍事的体制がさらに強化された。
日米安保体制を重視する立場からは、中国の軍事的脅威を前に自衛隊と米軍の一体化、緊密化を評価する声が出るが、軍事優先に懸念を持つ立場からは、日本の主体性があいまいになるとともに中国との緊張を高めるだけだなどという批判が出ている。
「日米同盟一本やり」の見かけの裏側
今回の首脳会談に限らず、中国の台頭や北朝鮮の核・ミサイル開発など安全保障環境の悪化を前に、日本外交が日米同盟強化一本やりに走っているように見える。
しかし、話はそう単純ではない。
アメリカの衰退や大統領交代に伴う対外政策の激変を経験した今、日本の安保政策は同盟強化か否かという基準だけでは議論できなくなっている。
それを象徴するのが英国、イタリアと共同開発中の次期戦闘機の第三国輸出の解禁だ。決定したのは首相訪米を直前に控えた3月下旬だった。
自衛隊の歴代戦闘機は米ロッキード社などアメリカ製を採用してきた。柱の一つであるF2戦闘機が2035年ころから退役を始めるため、後継機が必要となる。
日本政府はアメリカ企業などと交渉を始めたが、主要部分の情報開示を渋るアメリカ側との交渉が行き詰まったためアメリカ企業との共同開発をあきらめ、2022年末にイギリス、イタリアとの共同開発を決定した。アメリカが関与しない主力戦闘機の採用は初めてである。
そしてその戦闘機を第三国に輸出するというのも大きな政策転換であるが、そこには単に戦闘機の生産コストの削減や国内の防衛産業の振興などという経済的理由だけではない意図が込められている。
対中国の安全保障としての戦闘機輸出
輸出できる第三国は日本との間で、輸出した武器を侵略に使わないことなどを定めた「防衛装備品・技術移転協定」を結んでいる国で、現在15カ国ある。欧米の主要国のほか、シンガポール、インドネシア、フィリピン、ベトナムなどASEANの6カ国やインドや豪州と日本の安全保障に大きく関係する国が含まれている。
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